貸せ、本当のハッピーエンドはこうやる   作:四辻ヨキトキ

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KASSEN!①

 

 

 

 

 どうしてこうなった。

 

 俺は内心頭を抱えていた。

 

 現在はヤチヨカップ終了一時間前、KASSENのバトルフィールドにて亀の甲羅を模した盾を構えている。

 

『さあ! いよいよです! 王者ブラックオニキスとかぐや運命を掛けたKASSENが今始まろうとしています!』

 

 実況解説の乙事照琴とオタ公が場を盛り上げている。

 

 上がる会場のボルテージ、下がる俺と彩葉のテンション。

 

「かぐやっほ~!!」

「ドウシテ、ドウシテ…………」

「どうしてこうなった………?」

 

 何度振り返ってもわからない。

 

 かぐやの大一番。

 

 物語上のある種のピリオド。

 

 

 何故か、俺はブラックオニキス戦のかぐやメンバーに組み込まれていた。

 

 

「黒オニと戦うのに、メンバーが一人足りなくってェ」

「俺さ、買い込んだコーラとお菓子で、お前らのKASSENを視聴しようとしてたんだけど!?」

 

 大事な話があるとか言われて、指定の場所にのこのこログインしたらいきなりKASSEN会場である。

 

「芦花か真美呼べよ………」  

「呼ぶならレンジローがいいって彩葉が言ってた」

「ええ?」

 

 俺を呼び出した首謀者らしき狐スキン。

 彩葉がもにょもにょしながらこちらを見る。

 

「前に対戦したとき、反応速度が凄い良かったし………………ダメかな?」

「んァ~………!」 

 

 推しに頼まれてるゥ~!

 

 断りたくねぇ~!

 

 だが、この流れは良くない。本当に良くないぞ。

 

「黒オニご来臨~!」

 

 言ってる間にブラックオニキスが到着してしまった。

 かぐやに求婚する(ミカド)、女装男子の乃依(ノイ)、そしてなんか寡黙な(ライ)だ。

 

 かぐやたちが小競り合いしている間に考えねば。

 

 考えろ詠坂レンジロー。

 

 明らかにこれは現実を逸脱している。

 真美がブラックオニキスの帝を目撃、そして即気絶してからのヤッチョ参戦。ここまでが流れの筈だ。

 

「そうだ、ヤチヨ――――――ヤッチョさぁぁぁああああああああん!! ヘルゥゥウウウウウプ!!」

 

 うわ、とかぐやと帝達がドン引く。

 傍から見れば、急にヤチヨに助けを求めるヤバいヤツだが、背に腹は代えられない。

 

 ツクヨミの天女に助けを求める。

 

 青空から玉手箱が落ちてきて、そこからポンとヤチヨが現れる。

 

「呼んだー?」

「呼んだ呼んだ呼びました! 俺は急に所用が腹痛なんで代理で戦ってくださいオネガイシマス!」

「ちょ、レンジロー! 急に何言ってんの? ていうかヤチヨ!?」

「ヤメロー! HANASE!!」

 

 彩葉が目を丸くしながら、俺を取り押さえる。

 

 頼む放してくれ!

 細部は異なるが、ヤチヨさえ参戦させれば問題ねェんだ! たぶん。

 

「んー、でもヤッチョのコラボはヤチヨカップの景品だからなー」

「え!? そんなぁ」

 

 妙だ、ヤチヨの反応が芳しくない。

 原作じゃ言われる前から、自主的に登場するくらいには食いつきが良かったはずなのに。どこか吹っ切れたような、悪い意味ですっきりしたような表情でこちらを見ている。

 

 ていうかバトルスキン着てねぇ。

 

 マジで参戦しないのか?

 

「かぐや、いろP! 頑張って! ヤッチョも滅茶苦茶応援しちゃう♪」

「おおー!」

「頑張っちゃう~………!」

 

 何かがおかしい。

 

 流れが妙だ。

 

 だが、原因が分からない。

 

 

 

 俺は断り切れないままに、KASSENが始まるのだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「じゃ、レンジローはボトムレーンね」

「私とかぐやはトップを攻めるから」

「OK、手堅く行こう」

 

 つーわけで、開戦。

 

 盾をサーフボード代わりに移動を開始する。

 黒オニのトラバイクみたいなものだ。移動アイテムとしての最低限の機能が盾には組み込まれている。

 

 加速しつつ思案する。

 

 とりあえず牛鬼を倒したいところだが、相手はプロゲーマー集団。

 勝ち負けを楽しむ遊戯で、常に勝ち続けて飯を食っている連中に、真っ向勝負は勝てる気がしない。

 

 たとえ超人JKの彩葉がいたとしても苦しいところだ。

  

 なんなら相手の帝は彩葉の兄。

 超人体質の酒寄一族の系譜な点を踏まえると、ぶっちゃけ絶望的だ。

 

 素人集団のこちらが勝つつもりなら、プロゲーマーたちの思考をどこかで上回らなければならない。

 

「ん、来たか」

 

 竹林エリアに侵入した瞬間、風切り音を耳で捉える。

 

 足場にしていた盾を足で跳ね上げ、そのまま勢いで盾を掴み――――――矢を弾く。

 

「げに恐ろしき、狙撃能力ってやつか」

「………普通に当てるのは難しそうだなー」 

 

 生い茂る竹林畑から射手、乃依の声が響く。

 

 バチクソに可愛い筈の女装男子の姿は見えない。

 自分の姿が見えない程度に離れた位置から、さらに木々の隙間を縫うように射撃しているせいだ。

 

 事実上、矢が通る隙間さえあれば、乃依は一方的に攻撃ができる。

 

 バケモノかよ。

 

 流石は帝に匹敵すると噂の才能だ。

 

 だが、魔力で強化した反射神経があれば、反応は可能だ。

 無限機関(リソース)を解禁する、体内で魔力がうねり、一時的超人的な身体性能を現実にて獲得する。

 

「………特典込みで、勝負のテーブルくらいには上がれそうだな」

「思ったよりも強敵かもネ」

 

 この際、勝負自体は彩葉とかぐやに任せてしまおう。

 俺は目の前の敵を対処することだけ考えていればいい。

 

 神算鬼謀の狙撃手と、防御特化の盾使い。

 

 絶対の矛と究極の盾。

 

 自己紹介は十分だ。

 

 互いが互いを討ち取るべく、弓兵と俺は武器を抜き放った――――――!

 

「――――――で、五分後ぐらいに俺が負けたってワケ」

「その流れでいい勝負にならない事あるんだ………」

 

 自陣で俺は、彩葉たちと作戦会議しているのだった。

 

 一戦目はボロ負け。

 

 帝に彩葉とかぐやが敗北、俺も乃依に倒されてしまい両レーンを制圧されという目も当てられない結果だった。

 

 いや、実際途中までは俺も乃依相手に良い感じだったのだ。

 だが、途中で乃依を追いかけ回していたら、雷が仕掛けていた地雷原に誘い込まれ爆発、動きが止まったところを弓矢で滅多刺しである。

 

 その後もウルトで氷漬け、チャクラムで輪切りで残機ゼロ。

 

「あ、でもすげえ盛り上がってるぜ。最強いろPが美少女で帝様の妹とか設定盛り過ぎ。…………いやマジで盛り過ぎだろ」

「うっさいな………」

 

 ケラケラ笑っていると、かぐやに通信が飛ばされる。

 

 見れば帝たちが映っている。

 

『一戦目はどうもー。強すぎてごめんね。なんかハンデあげようか?』

 

 どうやらあまりにも不甲斐ないせいで、心配してくれたらしい。

 流石にあのレベルの蹂躙するだけの配信はまあまあ放送事故なので、当然の配慮と言えばそうなのかもしれない。

 

 だが、かぐや的には不要のようだ。

 

「いらなーい。次は勝つ!」

『ホントぉ? かぐやちゃん、後悔しても知らないよー?』

 

 しかし、原作と流れが変わってしまったのは残念だが、こうやって見たことない掛け合いが見れるのも悪くないな。

 

 まあ本筋には影響ないだろし、まあ案外役得なのかもしれない。

 

 いいぞもっとやれ。

 

 もっと掛け合いを見せろ。

 

 後方腕組み面で頷いとくか。

 

「今日はもう予定入れちゃってるもんネ。ここから圧勝してレンジローのコーラと菓子でみんなで打ち上げ!」

『……………へぇ、レンジロー君。彩葉と知り合いなんだ』

 

 流れ変わったな。

 

 おい馬鹿ヤメロ。

 

 俺の名前を出すんじゃねぇ。

 

 帝さんの空気が何か変わっておられるだろ。

 

「知り合いってかお隣さんだし?」

『ヘェ、もっと聞きたいな』

 

 誰かこの馬鹿(かぐや)を止めろ。

 帝はニコニコしているが、明らかに目が笑っていない。

 

 

 

 

 

 ………………もしかして、死んだかコレ?

 

 

 

 

 

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