貸せ、本当のハッピーエンドはこうやる 作:四辻ヨキトキ
チャットが切れると同時に第2戦開始。
通信が終わる瞬間、帝兄がこっちをガン見していたのがとても怖かった。
「いっくぞー!」
「かぐやさん、後でネットの使い方勉強しような」
「いくよ」
戦場へ飛び出る。
こちらの戦術は先ほどと同様に上レーンに彩葉とかぐや、下レーンに俺が走る。
1戦目はボロ負けだったが、2戦目はマシになる。
かぐやのバグ技じみた未発見技、浮遊深海魚を利用した超上空移動による櫓の制圧。
プロゲーマー達すら知らなかった初見技が決まれば、かなりのアドバンテージが取れる。
これでも確実に勝てると言いきれないところがブラックオニキスの恐ろしいところだが。
だが、相手は恐らく上レーン、中レーン、下レーンに一人ずつメンバーを割り振る
その隙を刺せばこちらの勝ちだ。
「って、アレ? この動きは………」
2Dマップを見れば上レーンに雷、下レーンに帝と乃依が移動している。
トライデント戦術では、ない。
「おいおい、まさか………」
ナニカを察して頬から汗が伝う。
『黒オニが戦術変更! 帝・乃依の2大戦力を下レーンに投入です!』
『いろP兄による、知り合いレンジローへの圧迫面接開始だァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!』
愉快そうに忠犬オタ公と乙事照琴実況が響く。
笑い事じゃねぇ!
「うわうわうわ、マジで来た」
トラバイクに乗った帝が見える。
乃依の姿はない。恐らく姿を隠してこちらを窺っている。
トッププレイヤーの前衛と狙撃手を相手取らなくてはならない。
超逃げてぇ。
だが、やるしかない。
「南無三!」
盾を足から跳ね上げ、勢いをそのままに帝と打ち合う。
金棒と盾がぶつかり合い、衝撃で周囲の地形が軋みを上げる。
数度撃ち合い、そのまま距離を取る。
「やるね」
「あざっす」
隙を見て飛来する矢を弾きながら会釈する。
「流石に雷さん一人で上レーンは厳しいのでは? 早くフォロー行ってくださいよ」
「そうしたいのは山々なんだけど、大事な用事があってね」
「用事?」
「ああ、いろPの兄として――――――なっ!」
接近され、金棒による連撃、からの仕込み型の抜刀へと繋がれ、一太刀貰ってしまう。
やはり強い。
致命的な一撃は避けるが、それでも押されてしまう。
なにか、何か策を立てねば。
「平和的に、話し合いましょう! まずは妹さんの良いところから挙げていきませんか!?」
「挙げるまでもなく全部良いに決まってんだろ! お前が妹の友人にふさわしいか見極めさせてもらう!」
「クソっ、お兄さん! 日頃から妹さんにはお世話になってます!」
「お前にお兄さんと呼ばれる筋合いはねェ!」
怒涛の斬撃、雨のような矢が降りそそぐ。
すかさず防御、防御、防御。
防ぎきれずに被弾する、ライフが削れる。
『凄まじい攻撃の嵐、あんな帝は初めて見ますねー』
『というか、レンジローって人凄くないです? トップゲーマー2人の集中攻撃、耐えきってますよ』
実況に褒められるが、崩されるのは時間の問題だ。
仕方ない。
盾を傘代わりに矢を弾きながら、
「まだ隠してたかったけど、な!」
飛び退きながら、地面に、石畳に、竹に手を当てる。
接触した場所に不可視の紋章が刻まれ、そこに踏み込んだ帝を――――――爆発が襲う。
プロゲーマーが、即座に何が起こったのかを看破する。
「
「ご名答」
「雷と同じタイプ………!」
かぐやが強力な
『同じ戦場に地雷使いが2人もいるのは珍しいですねー』
『プロの方でも雷さんくらいしか使いませんからね。単純に使うのが難しいので』
その性能は、地雷を設置し相手の行動を制限する。
戦場全体に罠をはり、その知性と予測を持って、高火力の地雷を相手に当てる事で真価を発揮するテクニカルな職だ。
だが、
設置上限はあるが、俺は高火力の爆弾を使うのが楽しいのでよく使っている。
珍しい戦術の相手を見つけ、帝が獰猛に嗤う。
「面白れぇ、少し興味がわいてきたぜ!」
「お兄ちゃん面接は合格かな?」
「さあて、それはこれからのお前次第だな!」
漆黒の鬼が加速する。
射撃を繰り返しながら、敵を斬り伏せんと疾駆する。
鉄壁の亀が守護を固める。
地面を踏みしめ、紋章を展開し、周囲一帯を地雷原へと塗り替えていく。
「行くぜ鈍亀、地雷の貯蔵は十分か?」
「来いよ絶対王者、せいぜい足元に気を付けるんだな」
炸裂する爆弾。
嵐の如き矢。
無数の銃弾と斬撃。
第二戦目、下レーンにおいて、極大の戦跡が刻まれる―――――――!
「――――――で、ボコボコにされたってワケ」
「まあ、2対1は不利だよね」
「うん」
彩葉のフォローに頷く。
啖呵を切ったはいいが、普通にボコされて終わってしまった。
正面戦闘ならやっぱ普通の戦闘職が強いよね。
やや耐久に優れてはいるが地雷使いなんて、地雷掛けれなきゃただの一般人みたいなもんだし。見え見えの地雷に掛かるほどプロゲーマーは弱くないのだ。
矢に刺されまくってハリネズミみたいにされてしまった。
あと滅多切りにされた。
KASSENはゲームバランスがしっかりしているので、基本的に数的不利で勝てることはない。
だが、黒鬼にしっかり粘ったのが功を奏したか彩葉たちが櫓を占拠。そのまま天守閣へたどり着き勝利をもぎ取った。
「つーか、これ狙って帝に話しただろ、かぐや」
「………てへぺろ☆」
「このヤロー………」
なんだかんだこのギャルかぐや姫。
強かなのは知っているが、結構やらしい絡め手も使える悪わらべなんだよな。
うーん、解釈一致。
笑顔で許した。
「………わかってると思うけど、次は最後だし相手も本気だぜ」
「だね~、どうしよっかな~」
流石にもう一度、俺についてくるほど帝兄も甘くはないだろうし。
俺の職業もバレてしまった以上は、向こうもソレを織り込んで展開してくるだろう。
三戦目では地雷自体が、そもそも有効に機能することはないだろう。
彩葉もいまいち調子の乗りが悪いというのもある。
まあ数年ぶりの兄との邂逅だ。
相変わらず家族中の根が深いので、彼女なりにいろいろ思うところはあるんだろう、
「なあなあ、いろP」
「………なに、レンジロー?」
彼女の悩みを解決するような答えは伝えられない。
そこは彩葉が自分で納得できる、答えを見つけるしかないからだ。
なので、ゲームの真理の話をする。
「お前の兄ちゃんすげーゲーム上手いのな」
「………まあね」
「ゲームの上手い自慢の兄ちゃんってわけだ」
「なにさ、急に」
別にそんなことはないが、さも名案みたいに、にやっと笑う。
これはゲームだ。
最高に愉快に楽しまなければ損だ。
楽しめるように思い込まなければ、負けだ。
「つまり、マグレでも凄い兄貴に勝てばよぉ~! 俺達はその瞬間、もっとゲーム上手い奴になれるってわけだよなぁ~! 勝とうぜ!」
「………ふ、なにその理論」
嫌いじゃないけどね。
それだけ言って彩葉が微笑む。
ようやく面白くなってきた。
三人で顔を合わせてケラケラ笑う。
「おっしゃー! この勝負、勝つぞー!」
「イエス、ボス!」
「おー!」
三戦目、開始。
この際、原作通りとかはとりあえず置いといて。
俺達は全力で勝利をもぎ取りに行く。
***
『おーっと、乃依の鈍足連射だ。これは動けなーい!』
『猶予1フレームです。』
三戦目、開幕直後。
場所は下レーン。
「んぎぎぎぎぎぎ…………」
「はい、お疲れ☆」
「悪いが、動かす気はない」
矢がぶすぶすと身体を貫き、行動制限のデバフを掛けつづけられる。
結論を言おう。
いつも通りの竹林で、俺は乃依と雷に袋叩きにされていた。