貸せ、本当のハッピーエンドはこうやる 作:四辻ヨキトキ
俺が持っている転生特典は全部で七つ。
それは例えば未知の
その特典の名を【
あらゆる万物を創造・制作する能力。
たとえ転生する自分自身に価値はなくとも、自身の創り出したモノには価値があるはずだと願われた力だ。
望むがままに世界を作り替える絶対権能。
言ってしまえば、なんでも作れる能力だ。
伝説の魔剣から核弾頭まで、あらゆるモノを生み出すことが可能。俺のスマホに取り付いている完全自立型AIのイデアも、この能力から生み出したものだと言えば、無法さが伝わるだろうか。
武力・生産において際限ないアドバンテージを保証し、使い方次第では世界経済と国家間の均衡を容易く破壊することも容易い。
だが、この転生特典の
「………アレを作るか」
時刻は深夜2時。
良い子であればとうの昔に眠っているであろう時間帯に、俺は台所でフライパンを握っていた。
フッ素加工済みの安い調理器具に、ヴゥンと転生特典パワーが宿る。
コンロに火を着け、フライパンにごま油を引いて加熱。
事前に用意したネギとキャベツの細切れをそのままぶち込んで炒める。
やや香ばしい匂いが立ち上った瞬間、溶き卵と白飯をぶち込み、醤油などの調味料で味付けつつ、じゃかじゃかとフライパンを揺らしながら炒め続ける。
そうしているうちに、料理が出来上がる。
まあ、いわゆるチャーハンである。
「ヘイ、お待ち」
用意した皿に3人分とりわけ、ちゃぶ台の前に正座している二人に料理を差し出す。
「ごめん、こんな夜中に」
「いーよ、小腹空いてたし。あっ漬物食う?」
「うん、貰う」
申し訳なさそうに謝る彩葉。
そして隣には、チャーハンを前にして涎を垂らす少女が一人。
「わぁー! これなにぃ? めっちゃ良い匂い」
「チャーハン、冷蔵庫の残り物で悪いけど」
「いただきまぁー!! もぐもぐもぐ! 美味しい!」
言うが早いかチャーハンを掻き込む少女を見る。
まだ幼さを感じるが、間違いなくかぐやである。
一晩でここまで成長し、ビビり散らかした彩葉が俺の部屋に突入してきた、というのが今の現状だ。
「いただきます………てうわ、ナニコレ美味しすぎ………」
「そりゃよかった」
「嘘でしょ? ひやご飯とネギとキャベツを炒めただけで、でなんでこんなにおいしいの………?」
「深夜の背徳飯ほどうまいものはないからな」
「絶対それだけじゃないよコレ………」
隠し味は転生特典となっております。
万物を生み出す【価値創出】の力によって、あらゆる製作技能に補正が掛かるため、最高峰のモノが出来上がるようになっているのだ。
ひやご飯としなびた野菜でも、想像を絶する美味さのチャーハンが生まれるという寸法である。
世界を破壊できる転生特典の超平和的活用方法。
それだけと言えばそれだけだが、毎日うまいものが食べられるので俺は気に入っている。
夢中で食べる彩葉たちを見ながら、俺も一口食べる。
うん、美味しい。
「じー………」
「………………いる? 食いかけだけど」
「ありがとう! えーっと」
「詠坂蓮二郎」
「ありがとレンジロー!」
一瞬で皿ごと持って行かれた。
とんだハングリーモンスターである。
そんな感じでチャーハンを平らげた後、彩葉様による尋問が始まるのだった。
「それで、ほんとに月から来たの?」
「ん~、あんまり覚えてないんだけど~、毎日つまんなくて~、楽しいことしたくて逃げた~いって思った気がする」
「まーなんもなさそうだもんな。月って」
見た感じ表面上は何もないしな。
住処が地下にあるのだろうか。あるいは地球からは見えない裏側だったりするのか。
仮想世界からの方が距離が近いなんて、言及されているあたり、物理的に存在しているのかも怪しい感じはするが。
「じゃあ何? あんたは月から来たかぐや姫ってこと?」
「かぐや姫って何?」
「そこからか………、いいよ教えてあげる」
彩葉先生から竹取物語の説明が入る。
竹から生まれたかぐや姫、なんか求婚されまくって、月へ強制送還。
めでたしめでたし。
「めでたくな~い! 月に帰って終りって、普通に超バットエンドだよ! かぐや姫絶対不幸じゃん! しかもいい感じの話風になってるのが余計許せないし!」
「しかたないでしょ。そういうお話なんだから」
「やだやだ! バッドエンドヤダ! ハッピーなのがいい!」
駄々をこねる少女に、彩葉が自分に言い聞かせるように言う。
「決まってることは変わらないの、どうしようもないことは受け入れて、覚悟するしかない」
「決めた! 自分でハッピーエンドにする! そんでハッピーエンドまで彩葉を連れてく! 一緒に!」
「おお~!」
思わず、ぱちぱちと手を叩く。
超かぐや姫の名シーンじゃん、すげー、生ハッピーエンド宣言だぜ。
「ついでにレンジローも!」
「あざーっす!」
感動している俺。
だが、彩葉はそうではないようだ。
「ハッピーエンド要らない。普通のエンドで結構です」
「ウソウソウソ、そんな訳ないでしょ~」
ギャーギャーといいあう二人。
「ねー、レンジローもそう思うでしょ?」
「そうだなー、俺もハッピーエンド派かなー」
「ほらァ」
勝ち誇るかぐや(仮)。
「ハッピーエンドに辿り着くまでに、登場人物が悩んだり苦しんでるのが好きなんだよなー。溺れる様な絶望から一筋の光を見出すくらいの展開が好みというか」
「それハッピーエンドの話してる???」
なんかドン引きされてしまった。
なんでだよ。
ハッピーでエンドしたらハッピーエンドだろ。
終わりよければすべてよしっていうし。
「フツーに楽しいだけでハッピーエンドでいいじゃん! レンジローひどいよ! それはもう鬼だよ!」
「待ってくれ! 困難を乗り越えて幸せを掴んでこそ、ハッピーエンドがより輝くってもんだろ!?」
「いいから寝るよ」
時間は三時を回っていた。
俺達は寝た。