其れは、『最高』の【例外】 作:『墓場に非らず』(はかばにあらず)
並んでいた事、なんだかうれしいです。
どうか、お元気で。
『オラァ砂漠に残ろうと思うだよ、ヴィジャボリオン』
そんな友の言を【塊竜王 ドラグランプ】と銘付けられた一体の地竜はさほどの驚きも無く理解した。
『──あの巨像達か、ギガレウム』
『んだぁ』
友の名はギガレウム。
【巨竜王 ドラグギガント】と銘付けられた途方もない巨体を誇る超巨大地竜であり──、──巨体で生きる為、自らが大量の食糧を必要とする事に心を痛める優しさを持つ竜である。
『……あん二人は何ん日も、飲まず食わずで殺さずに戦い続けていただ。オラやヴィジャボリオン、【暴竜王】さまや【金竜王】さま、若ぇ衆ら大勢を相手取って。……オラァその秘密が知りてぇだよ』
『ギガレウム……』
……そもそも彼ら二体は戦からの帰還の最中であった。
大陸の北の果て、〈厳冬山脈〉にて数多の地竜を従える【地竜王 マザードラグランド】。
その背に生える万病に効き寿命さえ延ばすと言う果実を狙った人間の蛮行は、何万という地竜、何体もの【竜王】による南進という形で報復された。
ブチ当たった人間の大国をあっさり滅ぼし、尚も止まぬ南進を──、──阻んだのは、一体の巨像と一人の人間だった。
金とも銀ともつかない光沢を纏う二人は途方もなく強かった。
地竜王第二子である【金竜王】をあっさり叩きのめし、第一子たる【暴竜王】の山をも吹き飛ばす暴威に小揺るぎもしない。
規格外の巨体であるギガレウムを浮かべては投げ飛ばし、ヴィジャボリオンの土塊の軍団を咆哮で消し飛ばす。
そしてそれ以下の【竜王】さえ含む有象無象──、──大国すら滅ぼす有象無象は地平の遥か遠くまで張られた音の壁を越えられず、近付く事もままならない。
……そんな戦いを一切の休憩なく何日も続けていた。
巨像と人間のどちらも。
──自分が山のように食い荒らさずに済む道があるのかもしれない。
ギガレウムはそんな切望を抱いてしまわざるを得なかった。
『……期待し過ぎるなよ。あの巨像が本体かもしれぬのだ。そもそも……』
『分かってるだ。もし上手く行がなくても、オラが山を下りれば他の地竜が何百も飢えずに済むだ。それに『かんりえーあい』どんが取りなしだど言っても、あん二人が野放しになっとるのはきっと【地竜王】さまも不安だでよ。オラァがあん二人ば見張るなら安心できるだよ』
『…………ギガレウム』
いつに無く多弁な友に、ヴィジャボリオンは口走る。
『…………あの二体に挑んで、死のうとはしてないか』
……心優しき友が、その優しさ故に死を──自殺を選ぼうとしているのではないかと。
ギガレウムは、【巨竜王】は強い。
その圧倒的質量は、強度に劣る者を金属に変えられる【金竜王】ですら致命傷となるまで金属に変えるには
労する事なく倒せるのはその巨体だろうと
──……神話級UBMは、自ら死を選ぶにも強過ぎる。
しかしあの巨像達は神話級UBMなど遥かに上回る。
地竜の軍勢すら
…………友はそれを望んで……
『──心配かけたなぁ、ヴィジャボリオン』
……気が付くと、ギガレウムが顔を近付けて来ていた。
と言っても至近距離ではない。
ギガレウムとは対称的に人間が抱えられる程小さいヴィジャボリオンを息遣いや身じろぎで吹き飛ばしてしまわない、彼らしい心優しき距離だった。
『オラァ、自分からおめさんを悲しませる事はしないよう、気をつけるだよ』
『──……いや。気にする事は無いとも、我が友よ。君がどのような道を選ぼうとも、その心を私は尊重しよう。余り気を病み過ぎぬようにな』
『あんがとなあ、オラの友達ざんよ』
『【地竜王】様の為の任とあらば連絡役が必要だろう。私の力はきっとそれに適任だ。【地竜王】様の説得は任せてくれ、何年かかろうとも送ってみせるさ。──ではな、ギガレウムよ』
『どうもあんがとうなぁ。──達者でなあ、ヴィジャボリオン』
──こうして、ギガレウムは『最高』の元へと旅立った。
「すまないな、私のエネルギー源は自然にこの身に備わったものだ。私自身にも教える事はできない」
『……そうだか。悪がったなぁ、押しがけちまって』
自分程ではないにしても巨体だからすぐに見つかるだろうという想定からすれば長い時間を掛けて、それでも辿り着いたかの巨像とそれが作り出した人間体の元で事情を説明したギガレウムは想定はしていた言葉を打ちつけられた。
……名前を『最高』と言うあの二人は、遥か昔に人間によって作られたゴーレムである巨像が最初にあり、魔力不足で何百年も動けなかった巨像が周囲の魔力を元に自然と動力源を生み出し、しかし特に理由を与えられていなかったが故に身じろぎ一つ取らなかったのが『友達が欲しい』という人間の願いに応え、人間の肉体を作り出した──。
つまり地竜の軍勢を押し留めたエネルギー源は、器物、或いは鉱物系のモンスターとしての能力に由来するものであり、それは鉱物も食べられなくはないが生物系のモンスターであるギガレウムには無いものだった。
……友からも助言され、自分でも考えていたとは言え、それでも落胆がギガレウムの心に膨らむ。
「──だがいい機会だ。もし良ければあなたのエネルギーがどうにかならないか、試してみないか?」
『え……?』
──だが、『最高』がそれで終わらせはしない。
「あなたほどの力量ならば、
『え……』
『最高』はギガレウムに道を提示した。
──モンスターとして『エネルギー消費を補う』スキルを新たに身に付けるという、新たな道を。
「《バイブレーション・ウォール》も私が後天的に身に付けたスキルだ。私の動力源の仕組みも解明すればあなたにも身に付けられるものかもしれないしな」
『だ、だどもオラァが頑張ると腹が減って周りに迷惑をかけちまうだ、……それにオラは不器用だで……』
「〈厳冬山脈〉ならそうだったかもしれないが、ここなら猶予はあるだろうよ。もし上手く行かなくても海に住処を移すという手もある。……ああ、もしかして泳いだ事が無いか?なら泳ぎの練習にも付き合うとも」
それは、不確かな道なれど『最高』が身に纏う輝きよりも尊く輝いて。
『……『最高』どん。なしてそこまで考えでくれるだか……?オラァあんだが守ろどしだもんを壊そと、攻めて来たもんだでよ……』
……だからこそ心の後ろめたさを照らされずには居られなかった。
視点が高いギガレウムは気が付いていたのだ。
あの巨像の背後、音の壁の向こうには人間の村が在ると。
そして『最高』はその村を守る為に戦ったのだと。
……それほど愛着の有るものを壊そうと攻めて来た地竜を、あの巨像は許さないのではないかとギガレウムは思っていた。
……身勝手な人間がきっかけだったとは言え、それを遥かに上回る大勢の人間を滅ぼした報復に『……これはやり過ぎでねぇべか……』と思い、しかし結局軍勢を止められなかった後ろめたさも影を落としただろう。
元より一縷の望みとは言え、罵られ、拒絶され、攻撃される事も考えていたギガレウムにとって『最高』の親身さは想定外だった。
「それでもあなたは私だけを狙って来ただろう」
だが、『最高』にとってギガレウムは感謝すべき事をしていた。
「……あなたが私を無視して《バイブレーション・ウォール》に突っ込んだら止めようが無かった。【ドラグバイオレンス】は私だけを狙って来たが、離れる訳にもいかなかった。……もしあなたが突っ込むようならあなた達を殺さねばならなかった。そうさせないでくれた事に感謝したい。ありがとう」
『だ、だども』
「それに、優しいあなたが落ち込んでいるのは悲しい事だ。悲しい事をそのままにすれば悲しくなってしまう。──だからどうか、私を助けてくれないか?」
『──…………あの二体に挑んで、死のうとはしてないか』
『──』
『最高』の言葉に、自分が死ななかった理由の一つである友の、身を案じる声が重なる。
『──分かったでよ。よろしくなぁ、『最高』どん』
気付けばギガレウムは、『最高』の示した道に歩み出していた。
『最高』がギガレウムの友となるまでは、すぐだった。
『──つまり【巨竜王】は膨大なエネルギーを蓄えておるのですよ。殺してしまえばそのエネルギーが無秩序に解き放たれてしまいましょうや。それに彼は海から陸、陸から海へと水分や微生物、種々の種や卵を運び、塩分や汚染を取り除き、擾乱作用とやらも齎す〈巨竜航路〉によって大陸中央の多くを再び緑豊かとするのに大きく貢献しておるのです。ですので殺してはならないのでございます。お分かりですかな?〈マスター〉殿?』
「うん分かった!分かったからさ、この氷解いてくれない?そろそろ死にそうなんだよねー」
「分かっておらんではないか、【竜王】の目を甘く見るでないぞ?」
『ホッホッホ』
──〈厳冬山脈〉の奥底。
ここに一人の〈マスター〉が囚われていた。
「安心せい、ここは特別製じゃ。我等の許し無しには飢える事も、渇く事も、死ぬ事も無い。ああ、『ろぐあうと』とやらをして『せーぶぽいんと』を変えてもここに現れるぞ?アリカとやら」
「……えっマジ?いいのそれ?」
『ホッホッホ。まあ広く使えば我等皆尽く滅ぼされましょうが、貴女のような均衡を大きく乱す危うい心を持つ者を一人捕らえるくらいならば交渉の余地はありましょうや』
この氷獄は【竜王】の秘奥を用いて作られた理外の牢。
……言葉にした性能はちょっと盛ってはいるがそれでも〈監獄〉に次ぐ収監性能を誇る。
「……うわーん、心細くなっちゃったー。キミの柔肌で暖めてくれるとお姉さんうれしいなぁー?」
「…………、……(……おいヴィジャボリオン。こやつ反省する気が無いぞ?殺した方がよいのではないか?)」
『(ホッホッホッ、まあ殺しても無駄ですからなぁ〈マスター〉は。そうでなくとも名にしおう〈
……それでも折れない〈マスター〉に【地竜王】勢力優位の契約を結ばせるには神話級
:ギガレウム
UBMとしての銘は【巨竜王 ドラグギガント】。
“最も偉大な竜”と呼ばれる事もある。
“純粋性能型”に区分されるUBMであり、スキル開発は苦手。
そもそも狭い山では何か頑張れば腹を減らして周りに迷惑をかけてしまうが故に修練どころか極力活動は控えねばならず、かつては芽が出ない修練に小さき友を付き合わせもしてしまった申し訳なさもあっていつしかスキル開発を諦めてしまった。
だが山を下りてからは『最高』や連絡役にかこつけて耳目を送って来る小さき友の助けを受けながら頑張って修練を積み、竜王気によって形作られたエネルギー生成機構《巨竜炉心》、水や塩などによる核融合でのエネルギー生成機構《巨星炉心》、『存在の大きさ』の利用によりHP・MP・SPの生成能力を高める《巨体炉心》の相互にその機能を高め合う三つのエネルギー生成スキルを身に付け、生態系を圧迫する必要が無くなり、〈イレギュラー〉に認定された。
基本的に戦わないだけでエネルギー保有量は〈イレギュラー〉でもトップクラス。
心優しき巨きな竜。
└自殺しなかった訳
じりじりと自分が嫌になっていく日々の中で、自死を選ばなかったのは案じてくれる友がいたから。
:『最高』
まだ経験が少なかった時期でさえ〈イレギュラー〉筆頭にした地竜の軍勢を殺さず押し留められた『イレギュラー』(UBMの〈イレギュラー〉とは明確に区別されている)。
よっぽどの事をしなければかつて戦った敵でもその悩みには親身に接し、よっぽどの事をしてもコミュニケーションが取れるなら完全否定して殺しに行く事はなかなかない。
巨像は普通にでかいし、すごく強い。
└《バイブレーション・ウォール》
《ハイパー・バイブレーション》を元に作られた広範囲展開可能な超振動防壁スキル。
一番ニュートラルな状態でも神話級に堅牢。
ただ地竜の南進時点では規格外の大質量や超パワーは受け切れない。
:ヴィジャボリオン
UBMとしての銘は【塊竜王 ドラグランプ】。
友との連絡に試行錯誤するうち『《黒城地獄》を使った土の特性を強く引き出す』スキルである《塔活地獄》に目覚め、気付けば神話級に至っていた。
ただし肉体の脆弱さはそれほど改善されなかった為、組み直し半ばの《竜神装》を使えば長保ちできない。
土で巨体を纏えるし、《塔活地獄》の応用で性能を爆上げできる『最高』との能力相性がすごくいい。
:AR・I・CA
マスターの一人。
ロクでもない事をしようとして【氷竜王】と【塊竜王】に捕まった。
けどめげない。【氷竜王】ちゃんなら許容範囲、抱ける。
:グランヴァイシア・サリオン・フォルトロン
UBMとしての銘は【氷竜王 ドラグフリーズ】。
AR・I・CAは好みではないし、まぐわりたいという気は一切起きない。
:大陸中央
三強時代、特に【覇王】との決戦による大破壊を挟みつつもその自然環境は回復する所では度重なる荒廃から回復しつつある。
〈ギガ空洞〉のような大樹林は無いが、ちょっとした森くらいならある所にはある。
様々な要因で未だ荒廃が残る所もまた多いが。
:〈巨竜航路〉
【巨竜王】の移動による環境循環と環境回復、または〈ギガ空洞〉を中心とした【巨竜王】の移動ルート、あるいは〈ギガ空洞〉最深部から大陸南端海底を通り海へと通じる巨大地下水路(大陸にとっては細かい亀裂。水流が強過ぎて航行は困難)を指す。
地竜達にとっても餌の増加などで重要な物事である。
それ以前にある竜王にとって『皆の飢えを一つでも減らせて、とっても嬉しいだよ』と嬉しそうに言った友の喜ばしい偉業であり、『……もしかしてアイツって整地にちょうどよくない……⁈』程度の理由でそれを終わらせようとしたとあるマスターには外には全く出ていないが内心ブチ切れている。
:とある植物型UBM
神話級の強力なUBMだったが、寄生系の危険な能力を持っていた為、コミュニケーション不可・行動誘導不可・マスターへの刺激性も低度と確認された後、『最高』により分子振動熱線砲で塵一つ残さずあっさり消滅させられた。
仮に組み合ったとしても突破できない超振動と超硬度と超耐久が待ち構える相手では最後っ屁の寄生も発動する余地なく、特典武具化を選択され、爆弾景品としてガチャの肥やしとなった。
特に話題となる存在では無かった為、ギガレウムは存在すら知らない。