不思議で不思議でしょうがない。
……あと、48ページ(全ページ)か、
視界が緑に染まった次の瞬間、あらゆる感覚が消失した。
指先の重みも、足元の砂の感触も、肺に取り込む空気の温度すらも。
残ったのは、暗闇の中に浮く自分の意識と、隣り合う無機質な声だけ。
《告。石化現象の完了を確認》
今から約三千七百年後、千空たちは復活する。
気が遠くなるような時間だが、やることは決まっている。
目覚めた瞬間に、千空たちが動きやすい盤面を整えておくこと。
そして、原作のシーンをしかとみること。
そのためにまずは、目覚める場所のシミュレーションからだ。
ー
《告。可能です》
それを聞いた凜は心底安心した。なぜなら、これは一種の賭けだったからだ。
ー石化を解くタイミングを千空と同じにできる?
《告。可能です。個体名:神代 凛の記憶から、個体名:石神 千空は西暦5738年4月1日に石化を解くと確認》
その回答に、凛は思考の端を緩めた。
同期は完璧だ。あとはその時まで、この暗闇の中で復活後の計画を練るだけ。
だが、懸念はある。
三千七百年という歳月は、文明を滅ぼすだけではない。地殻そのものを書き換える。
地殻変動などが起こる活率は確率は決して低くない。
そして、凜は自分が石化した場所を思い出す。
………砂浜だった。
砂浜にある石像なんて3700年も経てば波に流され、海底へと落ちて行ってしまうだろう。
《告。海底へと沈む確率およそ99%。無限バリアの常時発動を推奨。実行しますか?》
ーYes
即答だった。
三千七百年という空白の時間が、今この瞬間に始まった。
だが、焦りはない。
次に目を開ける時、そこが深海であろうと、問題ないだろう。
復活した後、すぐに瞬間移動すればいい。
しかし、本当の問題はそのあとだ。復活したらどこに行けばいい?千空のところに行ってしまうと、司が復活しない可能性がある。そうなると、今後のストーリーがもうすごいことになる。
凜は思考を回した。ひたすら回した。
そして、ある結論を出した。
石神村に先回りすればいいと。
さすれば、司も復活し千空は石神村へ、大樹と杠はスパイとして司軍に行くだろう。
だが、それだけで終わらせるつもりはない。
原作の展開もいいが、自分がいればもっと良い結末に書き換えられる。
千空たちの苦労を肩代わりし、全員が笑えるハッピーエンドをこの手で作る。
そのためにも、まずは石神村で盤面を整えておくところからだ。
そこまで考え、自らの意識を、深い眠りの底へと沈めていった。
三千七百年後の自分を信じて、今は休もう。
人はこれを、思考放棄という。