まのさば とある少女の事件譚   作:フリッカ・ウィスタリア

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嫌な予感を感じ、焼却炉へ足を運んだミツキは、何者かの焼死体を発見する
ミツキの通報を受け、囚人達はラウンジに集められた


魔女裁判開廷

焼却炉

「あっ…あぁ…あぁぁぁぁ!!」

最悪の予感が当たってしまい腰が抜けた私はその場に座り込んでしまう

ホゥホゥ ホゥホゥ

スマホの通知が鳴り、メッセージが表示された

『はぁ…桐本ユリさんが遺体で発見されたようですね。皆さん今すぐラウンジに集まってください。指示に従わない人は看守が強制連行しますので』

ラウンジに行かなきゃ。でもこれ本当に桐本ユリなの?これは事故?それともやっぱり誰かが…

恐怖で思考が纏まらない

とりあえずメッセージに従う必要があるだろう。震える足を奮い立たせ、私はラウンジへと続く階段を昇って行った

 

 

ラウンジ

「ゴクチョー!ユリが死んだってどういうことさ!説明してよ!」

「私に詰め寄られましても、私も今しがた報告を受けて皆さんに連絡しただけですので。そういうのは第一発見者に聞いてくれませんかね?」

「第一発見者は誰?」

「わ、私よ」

「どこにユリは居たんだ?死んだってなんで!?」

「私も分からないわ!でも、地下の焼却炉に真っ黒に焦げた塊があって、その塊に桐本ユリの髪留めが…」

「そ、そんな…」

「えっと…お話し中にたいへん申し訳ないのですけど、魔女裁判の説明をさせてもらっても良いですかね?」

少女達の引き攣った顔を見ても劇でも見ているかのような淡々としたゴクチョーの口調に恐怖を覚えた

「残念ながら、今回集められた少女達の中から被害者が出てしまいました。私としてはどうでもいいのですが、私の上司達は魔女を殺せとおっしゃっているので、この後、魔女裁判を開廷します」

魔女裁判。初日に詳しい説明はなかったものの、魔女図鑑の規則に詳細が記載されていた

殺人衝動を抑えきれなくなった魔女を見つけ出し、投票にて1名を処刑する。裁判員は集められた生存者が行う

「裁判は…21時からにしましょうか。それまでは各自、自由に事件の捜査をしていただいて構いませんよ」

裁判の事前説明を終えるとゴクチョーは通気口へ飛び立った

「とりあえず、捜査しよう。誰がユリを殺したのかを判明させないと」

「アヤはパス。また時間になったら裁判には顔出すね」

「なっ…」

こんな事が起きてもアヤは我関せずといった様子で、流石の私も腹が立った

「『いい加減あの子の事は放っておきなさい。時間の無駄よ』」

アヤの反応に目くじらを立てている間に他の皆は捜査に向かったらしい

「(私も早く捜査に行かなきゃ。誰が桐本ユリを殺したのか)」

 

 

B1F 焼却炉

再び私は焼却炉へ足を運んだ。本当なら二度とここへは足を踏み入れたくなかったが、死体発見現場を捜査しなければ重要な手掛かりを見落としてしまうかもしれない

「(またあの死体を見なきゃいけない…よね)」

中に死体があると分かっているのに焼却炉の扉を開けるというのはなかなかに勇気がいるもので、しばし躊躇ってしまったが意を決して扉を開けた

「(焼却炉の中は、衣服の燃えカスの他にはおそらく遺体と思しき黒い塊、そして桐本ユリが身に着けていた髪留めだけね)」

息を止め、なるべく手先の気味の悪い感触から気を逸らしつつ再度焼却炉の中を探したが新たな証拠品は見つからなかった

「桐本ユリ、この髪留め、一応預かっておくわね。」

その後、一応焼却炉以外の空きスペースも探したが何も見つからなかった

 

 

1F シャワールーム

もしダストシュートから落下したか突き落とされたのだとしたらここか2階の物置部屋だろう

「特に目立ったものはないけど…ロッカーも確認しておこうかしら」

幸いロッカーには鍵がついておらず、他の囚人のロッカーも開ける事ができた

「中に入っているのはタオル類と替えの衣服、その他装飾品か」

流石に眼鏡など個人調整が必要な物の替えは置いていないようだが、衣装で括られる物は毎日交換の対象らしい

「…あれ、桐本ユリの服がまだあるのに、髪留めがない」

服を替えていないということは、桐本ユリは今日まだシャワーを浴びていなかったということだろう。しかし、それなら髪留めだけないのは不自然である

「マリの方の服は…こっちも髪留めだけない。なのにメルルのヘアピンはある。どういう事?」

髪留めは装飾品の為、衣服類と一緒に支給されるはずなのだが、例外もあるということだろうか

「…まあいいわ。次に進みましょう」

 

 

2F 物置部屋

ダストシュートがあるもう一つの部屋に入った私だったが、特に何かが見つかる気配はなさそうだった

「軽くだけど、ほこりが積もってる。多分ここは私以外、誰も立ち入っていないのね。他を当たりましょう」

物置部屋の写真を撮った後、私は部屋を出た

 

 

ゴーン ゴーン ゴーン

21時になり、裁判所の鍵が開き、各々が裁判所へ入廷してきた

「えー、改めて説明しますね。皆さんには今から桐本ユリさんの殺人犯について裁判をしてもらいます。話し合いの結果、殺人犯を投票し、最も票を集めた人を『魔女』として処刑します。もし犯人を絞れず同数票を複数人が集めた場合、安全のために全員処刑します。説明は以上です。それでは魔女裁判、開廷です」

ついに始まってしまった。最低最悪な魔女裁判が

 

 

「まず各々捜査で見つけた物を開示しよう。各々が知っていることや証拠品が分からないと話し合いも空想や推論だけになってしまうからね」

「『合理的ね。賛成だわ。とはいっても、私は何も見つける事は出来ていないけど』」

「私が見つけた物はこれよ」

私は先程見つけた証拠品を皆に共有した

「『黄色のバラの髪留め』に『ユリちゃんの物と思われるスマホ』、これは『どこかの部屋の写真』?」

「写真については後で説明するわ」

「他にあれか見つけた物はないかい?」

マリの呼びかけに誰も反応することはなかった

「見つかったのはこれだけか…くそ…」

あまりの手掛かりの無さにマリも悪態をつくしかなかった

「『裁判も時間制限がある。さっさと始めた方が良いわ』」

「そ、そうですね。始めましょう」

「まず事実確認からしましょう。今回の被害者は桐本ユリ…と思われる」

「現状ここにいないのはユリだけだから、それは間違いないだろうね」

「現場は地下の焼却炉。その中で焼死体になっているのを私が発見したわ」

「ナノカちゃんはなんで焼却炉なんかに行ったの?」

「疲れていたから早めにシャワーを浴びようと18時過ぎにシャワー室に行ったら脱衣所で桐本ユリの物と思われるスマホを見つけたの。その後ダストシュートから何か焦げた臭いがしたから、嫌な予感がして見に行ったの」

「なら、犯行時刻は15時より前で間違いなさそうですね」

「え?なんでそうなるの?今の話でユリちゃんが死んだ時間の話してたっけ?」

「アンタここの規則読んでへんのか?毎週月曜の15時に焼却炉は自動稼働するんや。もし夕方に死んだんやったら焼けへんやろ」

「うっさいなぁ…ちょっと聞いただけじゃん。鬼の首取ったみたいにさ」

「このガ…教えたってんのに」

「話が脱線してるわ。裁判を続けましょう」

「それじゃ、15時以前でユリを見た人はいる?」

「『私は12時過ぎに食堂で見たきりだわ』」

「あの、私見ました」

オドオドとチヒロが手を挙げた

「どこで見たんだい?」

「中庭で裁縫を教えてもらう約束をしていて、カオリさんもそこにいました。時間は…13:20くらいから…いつまでしてましたっけ?」

「14時頃までだよー。おかげで良い枕が出来た」

「そうなると、ユリが死んだのはおおよそ14時から15時の1時間の間ということになるね。その時みんなは何をしてたか教えてくれないか」

「私と久遠エツコ、溝倉シズカは湖方面にある丘でピクニックをしてたわ。14:40くらいには牢に戻ってきてたと思う。その時に貴女とも会ったわよね」

「ああ、ボクはギリギリに帰ってきたから牢の前で会ったのはもう少し後だと思うけど。大体それくらいだったと思う」

「私は中庭で自分の作った物の強度を見てたわ。時間は詳しく見てなかったけど、13時から14時までだったと思う。それ以降はサキとずっと一緒にいたわ。シャワーに一緒に行ったのは…14時過ぎだったかな」

「うん、確かそのくらいだったと思うわ」

「中庭での行動を証明できる人は?」

「裁縫をしていた私達が見てます」

「なら、サキさんとマドカさんにも犯行は無理だね」

「アヤは周りの奴らがうるさいから静かな所を探して、13:30~14:30くらいまで娯楽室で寝てた。その後はサクラに起こされて一緒にいたよ」

「私はー、裁縫クラブの後はずっとチヒロちゃんといたよー」

「カオリさん、中庭ですぐ寝ようとするので私が髪で運んだんですよ。ずっとウトウトしてたので、そのまま私の牢に戻って私は髪の手入れをしてましたけど」

「後はボクとミドリさんメルルさんだけど、14時以降は3人で各自集めてきた物資を医務室で共有してたよ。だからお互いが証人さ」

「『そうね。誰も途中で席を外したりしていないし、アリバイは成立すると思うわ』」

ここまで聞き、私は奇妙な事に気が付いた

「(全員の行動を時系列に並べると、犯行推定時刻に誰も犯行に及べないわ。誰かが共犯で口裏を合わせている可能性もあるけど、そうでないなら…)」

「皆の話をまとめてみると、ボクを含めた数名に完全なアリバイは無い事が分かるけど、犯行に及ぶには現実的じゃない時間だね」

表に書き出してみると、14時以降ではマリ、メルル、ミドリの3人はアリバイの前後10分ずつ、アヤが娯楽室で寝ていて、かつ誰にも見つかっていない20分、同様にサクラがアヤを見つけるまでの20分アリバイを立証できない時間が存在する。

しかし、14時過ぎにはサキとマドカがシャワー室にいる為、実質的に14:50~15;00に犯行に及んだことになり、あまりに現実的でない

「まさか…ユリは自殺を?」

マリの呟きに私も納得してしまう

「ゴクチョー、もし、被害者の死因が自殺、それか偶然の単独事故だった場合、裁判はどうなるのかしら?」

「え?私に話しかけてます?…そうですねぇ、規則を追加するの面倒なんで、あまり例外を作ってほしくないんですが…全員が被害者を『魔女』と投票し、かつ自殺や単独の事故であると裏付ける証拠が提示できるのなら生存者からの処刑はなし…と認めましょうか」

ゴクチョーは至極面倒くさそうにしているが、一応妥当性を立証できれば何が何でも生存者から処刑する人間を選定する必要はなさそうだ

「いえ、違うと思います」

その場にいるほとんどの者が今回の一件は事故またはユリによる自殺と思いだした矢先、口を開いたのはチヒロだった

「どういう事だい?ユリが自殺でない証拠に心当たりがあるのかい?」

「い、いえ、そうではないんですけど、ユリさん、私達と裁縫をしているとき、とても楽しそうでした。それに、私達に「また裁縫しよう」って言ってくれたんです。今から死のうと思ってる人の言葉ではないと思うんです」

「確かに違和感ではあるけど、自殺していない証拠ではないね。それに、単に不運な事故だった可能性もある。それならボク達のアリバイと関係なくユリが死んだことにも納得がいくよ。まあ、ボクとしても双子の妹を急に失ってとてもやるせない気持ちだけどね」

その表情はとても暗く、偽りの物ではない気がした

ただ、私もある一つの可能性に思い至った。これは本当に小さな可能性。何の証拠もなければ、私の突飛な思い付きですらある可能性だ。しかし、それを私は確認せずにはいられなかった

「一ついいかしら」

「何だいナノカさん」

「前提として、これは私の思い付き。そして、本当に事故か自殺であると確認したいから言うのだけれど」

「えらい回りくどい言い回しするやん。何が言いたいんや」

「桐本ユリがダストシュートに落下・または閉じ込められた時間は14時以降と推定されていたわよね?それはその前に桐本ユリが他の囚人と会っている証言があったから」

「『そうね。それがどうかしたの?』」

「その桐本ユリ、本当に桐本ユリ本人なのかしら」

「ん-?どういう事ー?」

「桐本ユリと桐本マリ、貴女達は一卵性双生児。つまり、瓜二つの姿をしている。それなら、入れ替わりができたんじゃないかしら?」

「ボクがユリのフリをしてチヒロさんやカオリさんと会って犯行時刻を誤魔化したって言いたいのかい?」

「ええ、でもこれは何か証拠があるわけじゃない、だから桐本マリ、13:20~14:00の間、どこで何をしていたか教えてちょうだい」

信じたくない。まさか双子の姉が、あんなに仲の良さそうだった二人の片方が、肉親を手にかけたなんて

「どこにいたっけ…」

「つい半日ほど前の事なのに覚えていないの?」

「ごめん、すぐ思い出すから…えっと、確かゲストハウスあたりで何かいい物資が貯蔵されてないか確認に行ってたはず」

「え?その時間なら拙も火精(サラマンダー)の間に居たと思いますけど、マリさんも近くにいたんですか?」

「あれ、違ったかな。図書室で文献を探してた時だったかも…いや、これも違うな」

自身の曖昧な記憶を探り、次第にしどろもどろになり始めた

「あっ、そうだ。2階の物置部屋で何かないか探してたんだった!」

その返答に私は確信してしまった

「桐本マリ。信じたくなかったけど、確信したわ」

「え?確信て何が?」

「桐本マリ。桐本ユリを殺害したのは、貴女ね」

突然の犯人断定に皆が驚きの表情で、私の方を向く

「な、何を言ってるんだ。君はボクの昼間の行動を聞いただけだろう?それに物置部屋にいた事を否定できる証拠もないじゃないか」

「この写真を見てちょうだい」

私が提出したのは初めに共有したとある部屋の写真だった

「この写真が何の証拠になるんや?」

「これは今しがた桐本マリの話にあった2Fの物置部屋の写真よ。捜査が始まった19時頃に撮影したわ」

その情報を聞き、青ざめたのはマリだった

「この部屋の床、ほこりが積もっているのが分かるかしら」

「でも、足跡があるじゃん、少なくとも誰かは行ったって事っしょ」

「それは私が2日前に入った時の物よ。それに桐本マリの履いている靴とこの足跡、似ても似つかないわ」

桐本マリが履いているのはパンプス。対して部屋にあるのは私の履いているスニーカーの跡。流石にこの二つを見間違えているとは考えにくい

「ちょっと待ってくれ!みんな、ここを見て欲しい!」

突然、桐本マリが大きな声を上げた

「ここ、この部屋にもダストシュートがあるんだ!もしかしたら、犯行が行われたのはシャワー室じゃなくて、ここだったんじゃないか?それなら僕だけじゃなく、ここに足跡が残ってるナノカさんにも犯行が可能さ!だって彼女の魔法は『変身』なんだから!」

一件その発言は筋が通っているように思える。確かに、私であれば犯行自体は可能だ。魔法もそのトリックにうってつけだろう

「桐本マリ、それは無理よ」

「なんでだい?ユリを気絶させるなり何なりすれば後は担いでこのダストシュートに放り込むだけじゃないか」

証言するマリを見る少女達の目は冷たいものだった

「ナノカさんは昼の自由時間、ずっとエツコさんと私とピクニックに行ってたって話だったじゃないですか。確かにナノカさんが犯人なら、ユリさんと入れ替わるトリックは同じように出来ますけど、その場合入れ替わってる間はピクニックの現場にいなかったことになっちゃうので、アリバイと矛盾しちゃいますよ」

「なら…なら…」

その後も様々な憶測や可能性を並べていたマリであったが、誰もマリの言葉に耳を貸すことはなかった

 

これはとある双子の話

ある所にとても仲の良い双子がいました

二人はいつも一緒で、保育園でも、お家のお風呂でも、小学校や中学校でも一緒にいて、時には喧嘩もすることはあったけど、必ずどちらかが誤り、仲直りできた。

そんなある日、妹の物を縫い合わせる才能が開花し、大人も顔負けの出来であった。時を同じくし、姉は器用に布でも紙でも硬い金属類でも綺麗に切り分け、素材の無駄や失敗作なんて出さない程の才能を開花させた。

双子はお互いの才能を褒め合い、自身の事のように喜んだ。しかし、周囲の人間は違った。やれ妹の方がすごい、やれ姉の方が器用だと当人を置いて言い争っている。二人はそんな諍いが大嫌いだったので、いつも二人して仲裁をしていた。

しかし、二人とも内心は分かっていた

ユリ(マリ)の方がすごい。なんでボク(アタシ)にはあの魔法がないんだろう」

こんな気持ちは相手を困らせるだけだと胸に秘め、余生を過ごすのだと心に決めたのでした

 

 

投票の結果は満場一致で桐本マリという結果となった

「あっ、話し合いは終わりました?では早速魔女の処刑に進みたいと思います」

こんな時もゴクチョーは変わらず淡々と職務をこなすようだ

「皆さんのスマホに『処刑』の文字が出ていると思います。それをぐぅ~っと押して頂くと処刑執行が承認され、処刑台が出てきます。名残惜しいところ恐縮ですが、サービス残業とか勘弁してほしいので、さっさと押してくださいね」

自分達が処刑執行ボタンを押さなければいけない。その重圧にボタンを押すのを躊躇う

しかし、押さなければこの時間は終わらないのだ

一人、また一人と震える手でスマホの『処刑』ボタンを押していき、最後の一人も処刑ボタンを押し終えた

「はい。これより魔女の処刑を行います。あっ、ちなみに処刑執行を妨げる人は同じように処刑しちゃうので、くれぐれも邪魔をしないでくださいね」

次の瞬間、屋敷が震えるほどの轟音と共に、裁判所の中央が開き、下から何かがせり上がってきた

「これは…」

地下から現れたのは大きな作業台だった

揺れが治まると看守に連れられ、マリが作業台の中央に固定された

「最後に聞かせて下さい。ゴクチョー良いですか?」

「ハァ…分かりました、早くしてくださいよ。私も早く寝たいんですから」

「なんでユリさんを殺したんですか?」

「…殺してない」

「この期に及んでまだ言い逃れすんの?負け犬の言い訳とかアヤ一番うるさくて嫌い」

「殺してない!だってボクは…アタシはマリだしユリだもん!だから、私は桐本マユリさ」

一瞬、理解が追い付かなかった。しかし、数秒思考を巡らし、その言葉の意味が分かった

「まさか貴女…いや、貴女達…二人を一人にしたの?」

「え?どういうこっちゃ。意味分からんねんけど」

「おそらく、今のあの人は半分マリさんで、もう半分はユリさんということなんでしょう。でも、何でそんな事をする必要が…」

 

 

「昨日の晩、ボクはユリの社交性を褒めてた。それは嫉妬の裏返しだって気づいてたけど、それはユリも同じだったみたいだね」

「アタシはマリみたいに本音をストレートに伝えて壁を作らずに話せる勇気なんかない。私もマリが羨ましくて嫉妬してたの」

「今までお互いに隠してきた嫉妬心を打ち明けて初めて分かったんだ」

「あぁ、この子もあたしと同じだったんだって」

「そう思ったら自分の悪い所も良い所も」

「相方の良い所も悪い所も」

「受け入れて一緒に頑張ろうって思ったんだ」

「だから」

『一緒になろうって言ったの』

処刑台に縛り付けられているとは思えないほど、彼女達の顔は恍惚としていた

「昼過ぎの誰も来ない時刻のシャワールームで大好きなマリの魔法で二人を『分け』」

「大好きなユリの魔法で二人を『繫げた』」

「いままでずっと一緒にいたけど、繋がってやっと『一緒になれた』の」

「でも、もう一方の『ボク達』は要らなかった」

「だって、そっちの『アタシ達』がいたら、どこかで絶対また嫉妬しちゃう」

『だからバラバラにして適当にくっつけて捨てた』

話を聞けば聞くほど目の前の者が本当に人間なのか疑いたくなる。

つい数刻前まで親交を深めようと考えていた人間であったはずなのに、今は近付くことすら躊躇うほどに嫌悪している

「でも、それって結局、自分達の悪い所を捨てたって事じゃない?受け入れてないじゃん」

アヤの放ったその言葉は彼女達の信条にヒビを入れるのに充分であった

『は?今なんて言った?』

『彼女達』の心の揺れ動きに呼応するように、『彼女達』の顔にヒビが入り、両腕は黒く、爪は長く急速に変貌していった

「いけませんね。頃合いでしょうか」

ゴクチョーの合図で看守が処刑台のスイッチを押す

直後、大きなナイフが『彼女達』の首を落とした

『許さないゆるさないユルサナイユルサナイ!殺すころすコロスコロス!』

しかし、首だけになっても『彼女達』は怨嗟を吐き続けていた

「なんであの状態でもしゃべれるのよ!キッショ!」

「てイセイシロォ!」

次々とナイフが降り注ぎ、次々と『彼女達』の体を切り刻み、下の樽へ落ちた物は皮を剝がれ樽の中にいる何かに革製品へと加工されていく

「うっ…気持ち悪い…吐きそう」

『これは、私も気分が悪くなってきたわ』

その後も『彼女達』の断末魔と怨恨は裁判所に響き、処刑台が地下へ収容されるまで続いた

「はい、桐本マリさん、桐本ユリさんは魔女となりましたので、地下にて永遠の牢獄へ収監させていただきます。これにて魔女裁判を閉廷とさせていただきます。皆さんお疲れさまでした」

 

 

To Be Continued

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