体が重い… 特に腹部が。
手が動かない、しかも両腕が…
取りあえず熱い…、全身が!!!!
「ハッ!!」
日照ヨウは眼を覚ます。
あの迷宮でコード『D』というドラゴンを称した魔物を倒し、ユイを助けてから…
「なんでベットの上なんだよ、しかも」
今現在、ヨウは眼を開けただけであって起き上がったわけじゃない。
何故なら、両腕に魔導書ことアダムとイヴが気持ちよく寝息を立て寝ているし上半身にはユイがしがみ付きながら眠っている。
更には、足と足の間にも誰かの体温が感じられる。
「なんて、こった…」
布団を捲れない状況で体が拘束され何も確認できないこの状況が誰かに見つかったら…
「起きてくださ~い。朝ですよヨウ…」
俺の人生は今日で終わるかもしれない。
しかも、社会的に…
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「うーむ。」
「何見てんだ?アラタ」
そのアラタの視線と同じ方向に目を向けると一生懸命に校庭をランニングするリリスの姿があった。
アラタはさっきから厭らしい視線を止めようといないが、別に自分には関係のないことなのでサラッとスルーする。
だが、その視線に合わせてるということは俺も見ているわけで…
「お兄さーん!」
「うわっ!!」
いきなり抱き着いてくる平和な少女が一人。
「ねぇ、ヨウ?」
「主様…」
そして、何か怖い魔導書。
さらに…
「どこ見てるんすか?ヨウさん。」
静かに背後に忍び来る一人の忍者。
美少女と言えば、皆が美少女なのだが何故か嬉しさよりも恐怖の方が大きかった。
確かに嬉しいんだ。嬉しいんだが…
皆に目を合わせられないっ!!
「いや、アラタと一緒にこれからのことを語っていただけだよ。」
「そうっすか。なら、そういうことにしておきましょうか」
こんな会話が日常的に行われたら、俺の身が持たない。
ここを出て修行してこようかな…
実際にまだまだ力を使いこなせていない上に、自分自身の力なんて暴走させてしまった。
それで、レビィをあんな目に…
「やっぱ、修行すっか。」
「「え?」」
これに反応したのは意外にも意外なことにアラタとリリスだった。
「ん?どうした、先生。」
「な、何でもありません。」
「そっか。」
これから考えるべきことは、魔力の制御と力の管理だな。
アダムとイヴにだけ任してらねぇ。
体育の時間は自分の修行メニューの考えで全て費やされた。
だが、ここで思いもよらぬ眠気に襲われる。
(やっべ、眠くなってきた。)
そのまま芝生に体を預けるように大の字になって寝転がる。
これから何が起こるとも知らずに…
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ねぇ、君は力を制御して良いことがあると思う?
魔力を制御して良いことがあると思う?
自分自身を制御して良いことがあるの?
もっと、もっと力を解放しないと何もかも失うよ?
大事なモノや、守りたい大切な人がいるなら全てを壊してまでも力を手に入れなきゃダメでしょ?
解き放って、研ぎ澄まして、全部壊さないと…
失わず守ろうだなんて甘いこと考えないほうが良いよ?
欲張ると何もかもが無くなっちゃうからね。
「ハッ!!」
意味不明な声がして目を覚ますと、雷が鳴り響く暗い暗雲が立ち込める天気になってきた。
外は雨が降り、まさに何かの前兆って感じだった。
「あれ?俺寝すぎた?」
部屋にはヨウたった一人。
何かがおかしい…
「取りあえず、教室に行ってみるか。それからだな…」
制服に着替え、二つのネックレスをつけると自分の部屋から出る。
だが、本当におかしい。
いつもなら魔導書の二人が出てきてくるはずなのだが…
まるで存在が消えたように静かだ。
しかも、廊下を歩いているとガラス張りになった窓が粉々に砕け散っている。
「何かあったなー、こりゃ。」
また、アラタがラッキースケベでも起こして水晶女が激怒してここら辺をブッ飛ばしたのか?
いやでも、これは内側から壊されたものではない。
何故なら破片が廊下にふっ飛んでいるから。
「しっかし、俺が寝てると問題が起こるはやめてくんねーかなー。何か嫌な予感もするし学園長にでも聞いてみよう」
教室に向かう予定だったが、方向を急に変え少し駆け足で学園長室に向かう。
「いや~、随分長く寝ていたね。ヨウ君。もう君が寝てから一日が立ってるよ。」
「マジでか…、まぁそんなことはいいから”何でアラタ達がいねぇのか”教えてくれよ。」
「う~ん。きっと”お化け”にでも連れて行かれたんじゃないかな~」
「お化け?」
「うん。このビブリア学園にはこういう話があるんだよ――――…」
ある日、仲のいい二人の姉妹がいました。
とても仲が良く、いつも二人で図書館で楽しくテーマについて研究をしていると強い雷によって窓ガラスがバラバラに飛び散り、図書館の本が雪崩のように落ちてきてしまう。
だが、妹は恐怖によって体が動かず立ちすくんでいると姉はそれを見かね助けてしまったのです。
そし姉の方はそのまま行方不明になり、妹の方はポツンっと一人ぼっちになってしまいました。
「そして今日、同じようなことが起こったんだよね~」
「そっか、分かった。」
ただそれだけ言い残して学園長室から挨拶も無しに飛び出す。
「あらら~、大変なことになりそうだ。」
愉快であり深い意味が籠った声が、一人の部屋に共鳴していく…
「どこだ?アラタはどこにいんだ?」
考えても一向に埒が明かない。
というよりも、何も分からない。
「いや、待てよ。」
ポッケから取り出したのは一枚の紙切れ。
それには魔法陣が書かれており、くしゃくしゃになっている。
「これを使えば、ユイのとこにいけんじゃねぇか。」
そう、これは一回きりの転生用の魔術。
学園長にユイの【崩壊現象】時に、渡された紙切れ。
ダンジョンが崩壊するときにこれを使ってユイを連れ戻せということだった。
「なら、行くしかねぇよな…」
「強欲(アワリティア)のアーカイブに接続。テーマを実行しろ」
その合図と共に景色が入れ替わる。
爆発音と、人の苦しそうな呻き声がする場所に移った。
廃墟のようだ。
「ヨウっ!!」
「おぉ、先生…とアラタ。何があったんだよ。」
「そ、それが――――」
「クッ!!」
呻き声がする方を向いてみると、貧乳ツインテールのそっくりさんとレビィが激闘を繰り広げていた。
何も考えずに取りあえず、止めに入ろうと駆け出す。
「なにやってんだよ!!?」
「あれ?、ヨウさん?」
「誰?この子」
「あれ?貧乳じゃない?」
そこにはセリナに似た少女が戦っていた。
でも、貧乳じゃないとすると本物は…
周りを見渡し確認すると、遠くの方でアリンに膝枕されているセリナを見つけた。
とても辛そうに呻いている。
「あれ、お前がやったのか…」
「そうよ、魔力を食べちゃった。」
「へぇー」
レビィと戦いながら話せるだけの強さがある。
でも、関係ない。
二人も危険な目に合わされて、黙っている程――――
「俺は弱くねぇぞ?」
「え?」
一瞬、姿が消える。
それに戸惑ったのか動きが少し鈍った瞬間だった。
「取りあえず、帰れ。巨乳ツインテール。」
魔力を吹き飛ばす力を少しだけ拳に込め、真っ正面から殴り飛ばす。
「ぐっ!!」
後方にふっ飛んだ時の、少女の表情は少し薄笑いが含まれていた。
遅くなりました。
次は落第騎士です。