真矢は教卓に置かれた「ドクロリング(の偽物)」を愛おしそうに撫でながら、口を開いた。
「……汚れを拭きなさい。そんな無様な格好で、道徳を教わる資格があるとでも思っているの?」
彼女は黒板に、『連帯責任』と『爆発』という二つの言葉を書き殴る。
「いい? あなたたちは学校で『友達を大切にしましょう』と教わってきたわね。でも、そんな薄っぺらな言葉に何の意味があるの?本当の友情とはね……
『一緒に爆発に巻き込まれ、一緒におしおきを受けられるかどうか』。それだけよ」
真矢は鞭を振り上げ、壁に貼られたドロンボウ一味の集合写真をピシャリと指し示した。悪の三悪に学ぶ「真の組織論」である。
◇悪の三悪に学ぶ「真の組織論」
【友情】
一般的な道徳:助け合い、高め合うこと。
真矢の道徳:失敗をなすりつけ合いながらも、最後は三輪車に同乗すること。
【信頼】
一般的な道徳:裏切らないこと。
真矢の道徳:「いつか裏切られる」と知りつつ、メカのボタンを任せること。
【絆の証】
一般的な道徳:思い出の共有。
真矢の道徳:同じ形の「たんこぶ」を作ること。
「ボヤッキーやトンズラーを見てみなさい。彼らは無能よ。私の命令を聞き間違えるし、肝心なところでポチッとなと自爆スイッチを押すわ。普通の社会なら、彼らは即刻クビ。でも、ドロンボウ一味は解散しない。なぜか分かる?
『おしおきを受ける痛み』を共有しているからよ。あなたたちは、友達がテストで失敗したとき、一緒に居残ってあげる? 友達が会社でミスをしたとき、一緒に辞表を出せる?……できないわよね。あなたたちは結局、自分が可愛いだけのスカポンタンなんだから」
【爆発の意味】
真矢は窓の外のドクロ雲を指差す。
「なぜ、私たちの作戦はいつも爆発で終わるのか。
それはね、『リセット』が必要だからよ。
人生は、失敗の積み重ね。でも、爆発して服がボロボロになれば、一度すべてを忘れて笑うしかないわ。そしてまた、新しいインチキメカを作るために立ち上がる。
完璧な人間なんていない。正義の味方のふりをして、清廉潔白に生きるなんて息が詰まるだけよ。ドクロベエという理不尽な運命に怯えながらも、仲間と泥をすすって生きる……その泥臭さこそが、本当の『生きる力』なの」
【授業の結び】
真矢はゆっくりと教卓を離れ、生徒たち一人一人の目を射抜くように見つめた。
「いい加減、目を見開きなさい。
あなたたちがこの先、社会に出れば、必ず誰かに裏切られ、理不尽なおしおきを受ける日が来る。その時、隣に誰がいる?一緒に三輪車を漕いでくれるバカがいる?
……もし、そんな相手が一人でもいるのなら、あなたたちの人生は、どんなドクロリングよりも価値があるわ。さあ、給食の時間よ。今日はボヤッキー特製の『インチキたこ焼き』。残さず食べて、午後の爆発に備えなさい」
教室には、なぜか清々しい空気が流れていた。
生徒たちは「失敗しても、また明日がある」という、間違った方向に前向きな勇気を手に入れたのだった。
(4限目・終)
(5限目へ続く)