聖ドロンボ学園★6年3組   作:影の設計士

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5限目:図工「ドクロマークの美学的設計と、自爆装置の隠蔽工作」

午後の重苦しい空気が漂う図工室。

阿久津ドロンジョ真矢は、教卓に立てかけられた真っ白なキャンバスの前にいた。

彼女は迷いのない手つきで筆を躍らせる。漆黒のインクが滴り、淀みない動きで巨大なドクロマークが描き上げられた。それは単なる悪の紋章ではない。恐怖と機能美が完璧に調和し、見る者を射すくめるような呪術的な美しさを湛えていた。

 

「……何を呆然としているの? さっさと作業に取り掛かりなさい。あなたたちは、デザインを単なる『飾り』だと思っているようだけど、それは大きな間違いよ」

真矢は筆を置くと、髑髏の頭がついた黒い鞭を手に取った。その先端で、描き上げたドクロマークの「鼻」の部分をピシャリとなぞり、デザインとリスク管理についての講義を始めた。

 

◇デザインとリスク管理

【ブランディング:存在の誇示】

ひと目で「悪」と分かる象徴の重要性。

「自分が何者であるか、何を成そうとしているのか。それを一目で世界に誇示できない人間に、歴史を変える資格も、組織を率いる資格もないわ。このドクロは、弱者への警告であり、仲間への道標なのよ」

【カモフラージュ:欺瞞の技術】

自爆スイッチを、いかに日常の風景に溶け込ませるか。

「致命的な弱点は、最も目立つ場所に隠すのが一番安全なのよ。人は、あまりに堂々と存在する『穴』には気づかないもの。それが、大衆というスカポンタンたちの認知限界よ」

【構造欠陥の美学:完璧への拒絶】

なぜドロンボウ一味のメカは最後、必ず親指一本で壊れるのか。

「完璧すぎるものは、美しくないわ。崩壊の予兆、一抹の脆弱さがあってこそ、芸術は完成するの。そしてそれは、万が一の際にすべてを清算するための、唯一の救済でもあるのよ」

 

【実践:自分だけの「ポチっとな」】

講義を終えると、生徒たちの机には一人一台、小さな木箱が配られた。

今回の課題は、「一見するとお洒落な宝石箱だが、開け方を一箇所でも間違えると、けたたましいブザー音(自爆音)が鳴り響く仕組み」を構築することだ。

図工室に、カチ、カチ、という精密部品をいじる音と、生徒たちの荒い鼻息が響き渡る。真矢はヒールの音を鳴らしながら、獲物を探す猛禽類のように机の間を巡回する。

「……馬場さん。あなたのその箱、スイッチが丸見えじゃない」

真矢が背後に立った瞬間、馬場久子の肩がビクリと跳ねた。ラバースーツ越しに発せられる威圧感と、微かに漂う香水の香りに、彼女は生きた心地がしない。

「そんな分かりやすい場所に弱点を晒して、ヤッターマン……いいえ、この社会の荒波から逃げ切れると思っているの?」

真矢の冷酷な声が図工室に響く。

「自分の心の内を見透かされるような人間は、真っ先に『おしおき』の対象になる。自爆装置は、あなたの『プライド』と同じ。誰にも触れられない場所に、しかし確実にそこに存在するように配置しなさい」

久子は真っ青になりながら、震える手で配線をやり直し始めた。

 

【授業の結び】

生徒たちが真っ黒なペンキで手を汚し、ハンダごての熱に顔を火照らせながら作業を続ける中、真矢は窓の外を見つめ、静かに、しかし重みのある声で語りかける。

「いい? この授業で作っているのは、単なるガラクタじゃないわ。あなたたちが将来、自分の会社を持ち、家庭を築いたとき……心のどこかに必ず『自爆スイッチ』を仕込んでおくことね」

真矢はゆっくりと生徒たちを振り返った。その仮面の奥の瞳は、未来の絶望までをも見通しているかのようだった。

「すべてが上手くいかなくなったとき、未練がましく過去の栄光にしがみつくのではなく、自らの手で、自らの意思で、すべてを爆発させてゼロに戻す勇気。……それができない大人が、どれだけ惨めな余生を送るか。あなたたちにはまだ分からないでしょう」

真矢は鞭を教卓にピシャリと叩きつけた。

「『やっておしまい!』……その一言で、過去を清算できる強さを持ちなさい」

5限目の終了を告げるチャイムが鳴り響く。

図工室は、黒いペンキとハンダごての匂い、そして「自分の弱点をどう隠し、プライドをどう隠し持つか」という生徒たちの必死な思考の熱気で満たされていた。

(5限目・終)

(6限目へ続く)

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