散り際の鬼、再び咲き誇る   作:心ここにあらず

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十一話

 

 

「やはり強いな歳!!」

 

 

そう言い放つのは太陽のような立髪を持つ青年・煉獄杏寿郎

 

 

「よく言う。お前も以前会った時とは別人のようだ」

 

 

そう言いながら煉獄の刀を捌く青年は悲鳴嶼歳玄である。

 

2人は今、歳玄の家付近にある訓練所を訪れ稽古に励んでいた。最近は綾ノ氶が歳のせいか腰を痛めたせいで刀を振れなくなっており、まともに歳玄と打ち合えるのはカナエしかいなくなっていた。

 

そんな時に現れたのが以前、下弦の鬼の討伐の際に共闘した杏寿郎である。杏寿郎も歳玄とそう変わらぬ年齢ながら卓越した実力を有しており、隊士としての階級も既に甲まで登ってきていた。

 

 

 

 

「そう言えば知っているか。次の"柱"候補筆頭にお前の名が上がっていることを」

 

 

 

訓練を終えたばかりの杏寿郎がお茶を啜りながら話す

 

 

 

「…そうなのか…いや初めて聞いたな。と言うか今"柱"って空いているのか?たしか9人埋まっていた気がするんだが」

 

 

 

そうなのだ。そもそもこの柱と言うものは9人までと規定が決まっている。そして歳玄の記憶では今世では既に9人の柱が存在していたはずである

 

 

 

「…それがだな」

 

 

杏寿郎は湯呑を静かに置いた。

 

先程までの朗らかな空気が、僅かに沈む。

 

 

 

「――水柱が、討ち死にした」

 

 

 

 

 

「……なに?」

 

 

 

歳玄の目が細くなる。

 

 

 

冗談を言う男ではないと分かっているからこそ、その一言の重みがそのまま胸に落ちた。

 

 

 

「任務は山間の村だったそうだ。夜の内に壊滅……生存者は無しだそうだ」

 

 

 

「……鬼の規模は」

 

 

 

「不明だ。だが、柱が単独で向かい――帰らなかった」

 

 

 

今世の水柱の事は綾ノ氶や行冥を介して歳玄も耳に挟んだ事はあった。水柱はどの代の柱にも必ず常駐していたと言うだけあり今世の水柱もかなりの実力を有した剣士であったと…

 

 

 

そしてこの話を異様たらしめる理由が存在した。

 

 

それはその場に居た鎹鴉の証言と水柱が敵の鬼と争ったとされる場所にはおかしな傷が多数存在した。

 

そう鬼でありながらその者は剣を扱い、まるで"呼吸"のような血鬼術を操ると言う…そして証言では「まるで、“剣そのものが意思を持っている”かのような斬撃だったと」

 

 

 

歳玄の脳裏に、あり得ぬ光景が浮かぶ。

 

 

“鬼の身でありながら、剣士足り得る者”

 

 

 

 

「だからこそ"上"は既に新しい柱を立てることを検討している…新たに現れた脅威に対抗するために…」

 

 

「…」

 

 

「…そしておそらく"それ"に選ばれるのはお前だ…歳」

 

 

「お前じゃ無いのか?」

 

 

「俺はあり得ないだろう。なんせ未だ現役の炎柱の父上がいるのだ。…それに実力、信頼、条件、全てにおいてお前は大きく内定している」

 

 

柱になる条件…それは

 

柱になるには階級が甲であることと、鬼を50体倒すか十二鬼月を倒していることが条件である。その2つの条件を満たしていれば柱になれる。しかし柱がすでに9人いる場合は誰か柱が1人死ぬか引退するのを待たないとならない。

 

 

 

「まぁ俺もいずれその地位まで昇るだろう…だからひと足先にお前がなれ…お前なら誰も文句は言うまい」

 

 

「…杏寿郎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日――

 

黒羽に導かれ、歳玄は山奥に佇む屋敷へと足を踏み入れた。

 

静寂が支配するその場所は、外界とはまるで隔絶されたような空気を纏っている。

 

風の音すら柔らかく、どこか神聖で――絵に描いたような貴族のお屋敷のような外観であった

 

 

 

(ここが……お館様の……)

 

 

 

一歩、また一歩と進むたびに、自然と背筋が伸びていく。

 

やがて広間へ通されると、そこには既に数名の柱たちが並んでいた。

 

その誰もが、一目で“異質”と分かる存在感を放っている。

 

 

――その中心に

 

 

白い着物を纏い、穏やかな微笑みを浮かべた男が座していた。

俺と兄貴が鬼殺隊を目指したあの日以来か

 

 

「今日はよく来てくれたね、歳玄」

 

 

相変わらず柔らかく、だが不思議と胸の奥まで響く声を発するのは"産屋敷耀哉"…鬼殺隊の頭である

 

思わず膝をつき、頭を垂れる。

 

 

 

「……お呼びとあらば」

 

 

「顔を上げてくれ。君の働きは、すでに多く聞いているよ」

 

 

 

ゆっくりと顔を上げると、その瞳は優しく、すべてを見透かしているようだった。

 

 

「この一年、誰よりも多くの任務をこなし、誰よりも多くの鬼を斬ってきた」

 

 

「そのすべてが、人々を救うための剣だったこともね」

 

 

 

静かに言葉が落ちる。

その一言一言が、重く胸に響く。

 

 

「歳玄」

 

 

名を呼ばれる。

 

その瞬間――場の空気が、わずかに張り詰めた。

 

 

「君を――柱へ任命したい」

 

 

 

――沈黙が訪れる

 

一瞬、時が止まったように感じた。

 

柱たちの視線が、一斉に歳玄へと向けられる。

 

そのすべてを受け止めながら、歳玄はただ前を見据えた。

 

 

 

「……」

 

 

「君の力も、覚悟も、すでにその域に達している」

 

 

 

穏やかな声音のまま、断言する。

 

 

「もちろん、柱としての責務は重いーー仲間を守り、人を守り、時には――自らが矢面に立つ存在だ…それでも君なら出来ると私は考えている」

 

 

「…」

 

 

「どうだい?受けてくれるかい?」

 

 

 

産屋敷耀哉が再建を見つめながら問う。

 

歳玄は、ゆっくりと息を吐きーー

 

 

 

「…お望みとあらば」

 

 

 

産屋敷耀哉の目を捉えながらしっかりと答える歳玄

 

その返答に

 

お館様は、ただ優しく微笑んだ。

 

 

「ありがとう、歳玄…君が柱として歩んでくれること、心から嬉しく思うよ」

 

 

そしてーー

 

 

「今日この時より――君が"桜柱"だ」

 

 

そう産屋敷耀哉が告げた瞬間歳玄の中で何かが芽生えるような感覚があった。

 

 

これはあの時以来ーー

 

 

そう…新撰組の副長に任命された時と同じ感覚…

 

 

 

「皆も異論はないね?」

 

 

 

そう言い歳玄と同じく膝をつく柱たちに唱える

 

 

 

「「「はい!!!」」」

 

 

 

柱たちも異論を唱える事なく無事、歳玄は柱へと昇格を果たしたのであった。

 

 

 

 

そして無事歳玄の昇進が決まった後、柱たちは現地で解散することとなり新参者として歳玄も一言二言会話し別れる。

 

 

 

「…おめでとう…待っていたぞ…歳」

 

 

「…遅くなったな。兄貴」

 

 

 

そう声を掛けてくれたのは悲鳴嶼行冥…現岩柱である。

 

 

 

「何を言ってるんだ。14歳で柱への昇格など最速であろう。…なによりそれに誰も異論を唱えていないことが全てだ」

 

 

「…それは多少兄貴の方からも言ってくれてたんだろ?」

 

 

「…いや、私は本当に口出ししていない…全てお前の力だ…歳」

 

 

「…ならありがたく受け取っておくぜ」

 

 

 

互いに帰る家は同じとて行冥にも歳玄が同格まで上り詰めたことに想うことがあるのであろう。

そしてそんな2人に近づく大きな人影ーー

 

 

 

「ようよう!!そいつが例のアンタの弟か?」

 

 

 

こちらに大声で近づいてきた男…とにかく一言で言えば――"派手"…“派手主義を体現した男”である

 

 

まず目を引くのはその体格…

身長はかなり高く、行冥ほどとは行かずとも長身の歳玄より更に頭ひとつ大きい。そして筋肉質で引き締まった身体つき。柱の中でも屈指の恵まれたフィジカルを持ち、立っているだけで圧倒的な存在感を放っている。

 

髪は白に近い銀髪で動くたびに揺れるその髪もまた、彼の派手さを際立たせている。

 

 

この男もまた今世の柱の一角に座る強者である

 

 

名を"宇髄天元"

 

 

"音柱"を冠する"忍"である

 

 

 

「そのリボンに容姿…ド派手にイカしているなお前!!」

 

 

「…声のデカい奴だな」

 

 

「…宇髄…紹介しよう。俺の弟であり、先ほど桜柱に任命された歳玄だ」

 

 

「おう!噂は聞いてるぜ」

 

 

「…へぇ…どんな噂だ?」

 

 

「"鬼より恐ろしい剣鬼"…とかその癖、女2人をド派手に侍らさせている…とかな!」

 

 

「んな!?」

 

 

 

序盤は兎も角後半に信じられない噂を立てられていた事に驚きを隠せない歳玄

 

 

 

「…よもや歳…お前」

 

 

「兄貴はちょっと黙っててくれ」

 

 

 

とんでも無いことを言い出しかねない兄貴の口をいち早く閉じさせる

 

 

 

「ぶはっ!!悲鳴嶼の旦那にそんな口聞く奴は初めて見たぜ!こりゃ傑作だ!」

 

 

 

俺たちの会話を見た宇髄が爆笑する

 

 

 

「…兄貴は鬼殺隊でどう言う立ち位置なんだ?…俺は基本1人で行動しているからあまり知らなくてな」

 

 

「どう言うってお前ーー」

 

 

 

 

宇髄の口から語れる悲鳴嶼行冥の評価とは

 

 

鬼殺隊最高戦力である柱の一角、

岩柱を務める剣士ながらその実態は"剣を使わぬ剣士"なり

 

そして当世にて"柱最強"と自他共に認める傑物であり、他の柱たちからも一目置かれており、実力・精神力ともに鬼殺隊の中核を担う存在… 常に数珠を手にし、涙を流しながら祈りを捧げる姿を目撃したことから若手や階級が下のものから尊敬の念を込めこう呼ばれている

 

 

 "不動明王"

 

 

 

それが宇髄から語られた悲鳴嶼行冥の評価であった

 

 

 

「一目置かれてる代わりに皆んな話しかけにくいんだろうよ」

 

 

 

そう語る宇髄…しかしこの男は

 

 

 

「その割にお前は気にしてなさそうだな」

 

 

 

そう…歳玄が口にした通り、この男も一定の敬意は行冥に抱いているがそれだけでありそれ以上の感情は持ち合わせていなかった。

 

 

 

「まぁ確かに旦那の強さは認めている…だがーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー"俺様は神だ"!!最強だろうが不動明王だろうが神に勝てん!!」

 

 

 

「「…」」

 

 

 

堂々と言い放つその様に2人は何も言えず立ち尽くしている。

 

しかし、言動はさて置きこの男が真っ直ぐな馬鹿なのは間違いないだろう。一見豪快で自己中心的に見えるが、実際は、俺もそうだが周りがよく見えている。こう言う男は現場で冷静な判断ができ役に立つだろう。

 

 

「まぁなんだ、これからよろしく頼むぜ歳!」

 

 

「…あぁ。よろしく頼む天元」

 

 

 

そう言い互いに握手を交わすのであった。

 

 

 

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