散り際の鬼、再び咲き誇る   作:心ここにあらず

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十四話

 

 

任務から戻った歳玄とカナエは童磨に関する報告をするために産屋敷邸に足を運んでいた。

 

 

 

「ーーまずはよく生きて帰ってくれたね」

 

 

「「はっ!」」

 

 

「これまで上弦の鬼…それも弐を冠する十二鬼月の中でも上位者との戦闘で生きて帰ってきた者はいなかった」

 

 

 

そう。これまで上弦の鬼に関する情報が全くなかった理由は出会ってしまえば最後、生きて帰って来れないからである。…そしてそれは柱ですら例外ではない。

 

上弦の鬼の強さは大体柱3人分に該当すると言われている。そして全国各地に任務で飛び立っている柱が複数人で行動することはまずあり得ない。…そのような点から今まで上弦についての情報が全くと言って良いほど存在しなかったのだ

 

 

 

ーー今日この日までは

 

 

 

歳玄の鎹鴉である黒羽から任務の詳細を聞いた産屋敷耀哉は思わず立ち上がってしまうほどの衝撃を受けた。

 

これまで全くと言って良いほど情報が無かった上弦の鬼との遭遇…そしてなんと言ってもその鬼と交戦し無傷で生還した"柱"がいるのだ。

 

 

(これを転機と言わず何という!!)

 

 

 

耀哉はすぐに任務後の2人を屋敷に招集し任務の詳細を2人の口から聞いた。

 

 

 

雪山での戦闘…氷の血鬼術を扱う女の鬼

 

 

そして

 

 

"上弦の弐・童磨"との戦闘

 

 

上弦の弐・童磨… 髪は淡い銀色に近い金髪で、服装は豪奢で華やかなものを好み、色鮮やかな着物に身を包んでいる。そして何より左目に「上弦」、右目に「弐」の文字が刻まれている。

 

鉄扇を武器に操る血鬼術は冷気に関するものであると…術を霧状に分散していたと報告されているが歳玄によると、両者共に"全力は出していない"との事なので本来の能力は別にあるのかもしれない。

 

 

 

「もう少し奴の血鬼術を引き出せれば良かったのですが…」

 

 

「いや…これだけの情報が分かっただけでも十分さ。この情報は至急他の柱たちにも共有させて貰うよ」

 

 

「はっ!」

 

 

「…一つだけ聞いても良いかい?」

 

 

「…はい」

 

 

 

少し含みのある話し方をする耀哉

 

 

 

「…あのまま戦闘を続けていればどちらが勝利したと思う?」

 

 

「っそれは!」

 

 

「よせ…カナエ」

 

 

 

耀哉の問いに思わずカナエが立ち上がり、それを制する歳玄

 

 

 

「…負けるつもりはねぇ…だが…勝てるかどうか…それも分からねぇ。…それほどの相手なのは間違いねぇ」

 

 

「っ!?…やはりそれほどの強さと言うわけか」

 

 

 

歳玄の言葉に驚きを隠せない耀哉

 

 

 

「行冥がね…鬼殺隊最強は"歳玄"君だと口ずさんでいてね」

 

 

「…兄貴が?」

 

 

「あぁ…『真剣で斬り合えば勝つのは間違いなく歳』であると…そして、その君でさえ単独の立ち合いにおいては上弦の弐と拮抗しているとなると…」

 

 

「…」

 

 

「今の鬼殺隊に単身で上弦…更に上澄みの数字を持つ鬼には勝る人間は居ないと考えるのが妥当かな」

 

 

 

 

鬼殺隊最強を冠する男・悲鳴嶼行冥が認める歳玄が単独での斬り合いで上弦と引き分けたことを考えれば他の柱ではおそらく単身では歯が立たないことは明らかだろう。…そして何よりもこれまで上弦の討伐に挑んだ歴代の柱たちが討ち死にを果たす中、上弦の討伐記録が為されていないことが何よりも証拠となる

 

 

 

「…となるとこれまで以上に聡く強い剣士を育てなければならない…歳玄…君は継子はいるのかい?」

 

 

「っ!?」

 

 

 

耀哉が口にした継子という言葉に反応したのはカナエである。

 

 

 

「…いえ…今はまだ」

 

 

「…そうか、ならーー」

 

 

「…しかし、こんな俺に剣を教わりたいと願い立ててきた奴がいまして」

 

 

「っ!歳…くん」

 

 

 

歳玄の言葉に思わず驚き見つめるカナエ

 

 

 

「…へぇ…それは誰なんだい?」

 

 

「隣の胡蝶カナエを…俺の継子として育てます。」

 

 

「ふっ…そうかい。」

 

 

 

歳玄に名を呼ばれ嬉しさが隠しきれないカナエを見た耀哉は思わず笑みを溢してしまった。

 

そして歳玄がカナエを継子にした理由はただカナエ本人に頼まれたからではない。…今回の童磨との遭遇でカナエ本人が奴に目をつけられた可能性がある。今のカナエでは俺がいない場で奴と出会ってしまえば…おそらく…

確かにカナエは並の隊士と比べれば一線を越える実力を有している。しかしこと上弦…いや十二鬼月となれば話が変わってくる。

 

このままカナエをのこのこ死なせるわけには行かない。…"もう2度と俺の前で大切な家族を失いたくない"

 

今回の任務でそう決意した歳玄はカナエを継子にすることを決めたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歳玄が柱に昇格してから変わったことが一つある。それがーー

 

 

 

 

「わぁ〜凄く立派なお屋敷なのね!」

 

 

 

歳玄とカナエの前に佇むはーー街の中心地に近いところにある、白壁に囲まれた広い敷地の中、重厚な木造の屋敷が静かに佇んでいる。飴色に艶づいた柱と梁、緩やかに反る瓦屋根が風格を漂わせており、正面には大きな引き戸と玉砂利の玄関、その先には松や池を配した手入れの行き届いた広大な庭と… 落ち着いた威厳と格式を感じさせる広大なお屋敷が佇んでいた。

 

 

この広大なお屋敷を手に入れたことである。

 

 

経緯を説明すると…以前任務帰りに鬼に襲われているところを助けた夫婦が存在した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

任務の帰路、人気のない街道で歳玄が足を止めたのは、微かに漂う血の匂いに気づいたからだった。

 

 

 

「……人の血か…穏やかじゃねぇな」

 

 

 

歳玄は低く呟いた直後、風を裂くように地を蹴る。

 

辿り着いた先で目にしたのは――崩れた駕籠と、倒れ伏す数人の護衛。そして、その奥で震えるように寄り添う一組の男女の姿。

 

 

 

「た、助けてくれ……!」

 

 

 

その背後には、月明かりに照らされて嗤う鬼。

 

 

 

「……間に合ったか」

 

 

ーー桜の呼吸・壱ノ型・桜花一閃

 

 

鬼が反応するよりも早く歳玄は抜刀する。

そして踏み込みと同時に放たれた一閃は、夜気すら裂く鋭さで鬼の首を断ち――そのまま静寂が訪れる。

 

 

「……もう大丈夫だ」

 

 

血振るいを終え、刀を納める歳玄。

 

その言葉に、夫婦はようやく糸が切れたように崩れ落ちた。

 

 

 

――それから数日後。

 

 

 

歳玄のもとに届いた一通の文。

 

丁寧な筆致で綴られた礼状と共に記されていたのは――

 

 

 

「……屋敷を譲る、だと?」

 

 

 

思わず眉を顰める歳玄に対し、隣で文を覗き込んでいたしのぶが柔らかく微笑む。手紙の送り主はあの日助けた夫婦である。そして内容は、あの日鬼から助けて貰った御礼の言葉とこの夫婦が所有する屋敷を一つ譲渡したいとの事…更には『これ以上自分たちのような人間を増やさないためにも…』と綴られており歳玄に鬼狩りの資金援助をしたいと書き込まれていた

 

 

 

「きっと、それだけ命を救われたことが嬉しかったのよ」

 

 

 

「だとしても、ここまでのものを受け取る理由にはならねぇ」

 

 

 

「でも……断ったら、その方たちきっと悲しむわ」

 

 

 

そう言われてしまうと何も言い返せない歳玄…

 

結局、歳玄は耀哉に相談する事になり『是非頂いて起きなさい』と言葉を頂戴することとなり、1人で住むには広すぎる新たな住居と思わぬ資金源を得ることになってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ〜お部屋がいっぱい!」

 

 

「こんなに大きなお風呂街でも見かけたことないわ!」

 

 

「あ、お庭にこんなに大きな池もある!それに鯉も飼育しているのね!」

 

 

「立派な台所だわ〜!ここで料理できたら幸せね!」

 

 

「…」

 

 

 

屋敷の中を走りながらはしゃいでいるカナエを見て歳玄はなんとも言えない表情をしている

 

 

 

「…なぁカナエ」

 

 

「ん?どうしたの歳くん」

 

 

 

どこか緊張しているような面持ちでカナエに話しかける歳玄

 

 

 

「良かったら…ここで一緒に…住まないか?勿論みんなで」

 

 

「っ!!良いの!!」

 

 

「あ、あぁ。カナエが良ければだが」

 

 

「そんなの良いに決まってるじゃない!嬉しいわ〜!!」

 

 

「おっと…」

 

 

 

満面の笑みで歳玄に飛びついてくるカナエをゆっくりと抱き抱える歳玄

 

 

 

「とりあえずあの2人にも聞いてみないとな」

 

 

「ふふ…しのぶは聞く必要ないと思いますけどね!」

 

 

「そうか?」

 

 

 

俺たちはその日は任務の疲れを癒すため、街で食べ歩きしたり、買い出しをしたり、カナエのこちらに引っ越してくるための日用品を揃えたりと1日を通して寛ぐ時間を過ごしたのだった。

 

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