散り際の鬼、再び咲き誇る   作:心ここにあらず

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オリキャラ登場します!


十六話

――静寂の空間が訪れ

 

ざわめいていた空気が嘘のように消え、訓練所には張り詰めた緊張だけが残る。

 

砂を踏む音すらまるで聞こえないーー

 

そんな中ーー

 

 

 

「……派手に行くぜ」

 

 

 

宇髄天元が、ゆっくりと二振りの大刀を抜き放つ。

 

鋼が擦れる音が、やけに大きく響き渡る

 

 

 

対する歳玄は――

 

 

 

「来い」

 

 

 

ただ一言吐き捨て腰の刀に手を添え、わずかに重心を落とす。

 

その構えは静かで、隙がないことを相対する天元は感じ取る

 

まるで――抜かれる瞬間そのものが、既に斬撃であるかのような気配。

 

 

 

次の瞬間ーー

 

 

 

――消え失せた

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

須磨が息を呑む。

 

視界から消えたのは、歳玄。

 

 

 

だが――

 

 

 

「遅ぇなァ!!」

 

 

 

轟音が鳴り響き、砂埃が辺り一面に舞い散る

 

 

宇髄が踏み込みを見せると

 

地面が砕け、爆ぜるような速度で間合いを詰める。

 

 

振り下ろされる二刀から繰り出されるは――

 

 

“音の呼吸”

 

 

 

壱ノ型――轟

 

 

 

爆ぜるような斬撃が、空間ごと叩き潰す。

 

 

――が

 

 

 

「……浅い」

 

 

 

ギィン!!

 

 

 

甲高い音が鳴り響き

 

いつの間にか、歳玄の刀がその軌道に割り込んでいた。

 

しかも――"片手のみ"で

 

 

「なに……?」

 

 

宇髄の目が細まる。なにせ体格だけ見れば宇髄の方が一回り大きく、実際に宇髄本人が力勝負で負けたことなど、それこそ悲鳴嶼行冥くらいのものである。

更にその行冥ですら片手で受け止めることなど不可能と自負している

 

 

ーーしかし

 

 

目の前の剣士は現に片手で受け止めているではないか

 

 

その様子を見た宇髄はすぐさま認識を改める。"ただの強者"からこれまで出会ってきた剣士を含め"過去最強"へとーー

 

 

「力任せだな」

 

 

 

そう歳玄が瞬間――

 

 

 

目の前から歳玄の姿が消え失せる

 

 

「チッ!」

 

 

直感で身体を捻る。

 

次の瞬間――

 

ヒュン、と風を裂く音と共に声が耳に届く

 

 

ーー桜の呼吸・弐ノ型・散華

 

 

 

「っく!」

 

 

 

宇髄の背後から乱れ桜の如く数え切れないほどの斬撃が宇髄に叩き込まれる。

対する宇髄もその二対の大剣で受け止めようとするがーー

 

 

「「天元様!!」」

 

 

ビシュッーーとあらゆる方面から血が噴き出るほど切り刻まれていた。

 

流石の宇髄の大剣ですら大柄な体格を全て守り切ることは不可能でありその隙を歳玄が見逃すはずもなかったのである

 

 

 

「洒落くせぇ!!」

 

 

 

ーー音の呼吸・弐ノ型・鳴動(めいどう)

 

 

 

防御の姿勢から刀の持ち手を変えた宇髄は二刀を重ね合わせるように叩き大爆発を起こさせる。

 

 

 

「自爆か!?」

 

 

あの爆発では自らも巻き込む…そう判断した歳玄は宇髄の行った策に驚きを隠せない。地面や周囲を巻き込みながら制圧する爆撃…無傷で済むはずも無いがーー

 

 

 

「かっかっか!派手に強ぇな歳玄!!」

 

 

「…ふっ」

 

 

 

爆風や歳玄の剣技により炎症や切り傷で全身くまなく傷だらけの宇髄であるが、まるで何事もなかったかのように仁王立ちしている様に思わず笑みが溢れる歳玄

 

 

 

「次は俺が魅せる番だな!」

 

 

 

「…」

(剣圧が上がりやがった…)

 

 

 

二振りの刀を横に水平に構える宇髄に警戒する歳玄

 

 

そしてそれは訪れるーー

 

 

宇髄は両手で二刀を左右・上下に振り回し、歳玄の目の前に爆発と斬撃による巨大な空間を作り出した

 

 

そしてーー

 

 

 

「俺様の攻撃…耐えれるもんなら耐えてみな!!」

 

 

 

 

ーー音の呼吸・伍ノ型 鳴弦奏々(ごのかた めいげんそうそう)

 

 

 

回転する刀がまるで空間を抉り取るような爆風と斬撃を携えるような剣技を繰り出しながら歳玄に向かい突き走る宇髄

 

 

 

(真正面から受けたらタダじゃ済まねぇか…)

 

 

「「歳(くん)!!」」

 

 

 

歳玄の耳にコチラを心配する2人の声が響き渡る

 

 

 

(…ここで逃げんのは漢じゃねぇ…)

 

 

 

「…はぁ」

 

 

 

歳玄は刀を己の心臓の位置で構え… "平青眼"の構えから一気に回転し刀を滑らかに振り続ける。周囲に“桜の結界”のような斬撃の壁を形成する。

 

 

 

ーー桜の呼吸・伍ノ型・"流桜"(りゅうおう)

 

 

 

舞う刃は絶えず巡り、触れた攻撃をすべて弾き、逸らす。踏み込めば裂かれ、離れれば間合いを許さぬ―歳玄が持ちうる攻防無双の防御技である

 

 

 

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

 

 

宇髄の繰り出す爆風と斬撃が歳玄の桜の結界を吹き飛ばそうと削り取る。

 

しかし歳玄もまた、斬撃で作られた桜の結界で宇髄の攻撃を弾き返し一刀の侵入も許さない。

 

 

 

「「うぉぉぉぉ!!」」

 

 

 

互いに永遠とも思わせる押しも押されぬ一進一退の攻防が続き、2人の技の威力に周囲の地形が変わる。

地面は抉れ、宇髄の爆風で吹き飛ばされた歳玄の桜の斬撃は木々を斬り飛ばし削り取る。

 

そして遂に

 

一瞬とも数刻とも取れる極上の攻防に終の刻が訪れた

 

 

 

「「はぁ…はぁ…はぁ」」

 

 

 

宇髄の爆破と斬撃を全て防ぎきり、二刀の間を潜り抜けた歳玄の刃が宇髄の喉元にピタリと当てられる

 

 

 

「…はぁ…はぁ…参ったぜ。お前の勝ちだ…強いな歳玄」

 

 

「…ふっ…こちらの台詞だ天元…ここまで"流桜"を削られたのは初めてだ」

 

 

「よく言うぜ。無傷で受け切っておいてよぉ〜」

 

 

 

決着は宇髄の攻撃を全て受け切った歳玄に傾いたのであった。しかし負けた宇髄に悲壮感は無く、むしろ晴々とした表情を浮かべていた。

 

そしてそんな2人に

 

 

 

「「「天元様〜!!」」」

 

 

「うわっ!痛って!ちょまて!」

 

 

「「歳(くん)!!」」

 

 

「おっと!」

 

 

 

天元と歳玄…各々に声援を送っていた家族が飛びつく。宇髄の嫁…特に須磨とまきをの2人は宇髄の体を見て涙を溜めている。

 

 

 

「天元、このままウチに来いよ。うちのしのぶは医療の知識も持ってんだ。その程度なら処置出来る。」

 

 

「お!本当か!助かるぜ!」

 

 

 

 

こうして2人の柱による立ち合いは終了するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷはぁ〜!!こんな大浴場で酒も呑めるとはなぁ〜!戦いの後の酒は沁みるぜぇ〜!」

 

 

「ふっ…そりゃあ良かったぜ」

 

 

 

 

現在、歳玄と天元は歳玄の屋敷にある浴場にて2人仲良く入浴していた。応急処置を施した天元が『汗かいたから風呂入ろうぜ!』…と言い出したことがキッカケであるが嫁と入ろうとする天元を何とか止めた歳玄が代わりに入ることとなったのであった。

 

 

 

 

「にしてもありゃあ良い女になるぜ〜」

 

 

「あ?」

 

 

「姉妹揃って容姿良しの器量良し…何が不満なんだよ歳玄」

 

 

「…別に不満なんてねぇよ」

 

 

「なら何で身を固めねぇ。お前くらいの歳なら許嫁の1人や2人居てもおかしくないだろ?」

 

 

「2人はおかしいっての…それに」

 

 

「それに?」

 

 

 

 

歳玄の脳裏に現れるは…かつて…前世で己…"土方歳三"が唯一愛した女の姿…女子の癖に剣を扱い、土方が見惚れるほどの蒼く美しい眼を持った女。最後は会津にて新八に任せ江戸へと移させたが…あの時代…今より更に"剣に飢えた"土方歳三が唯一愛した女であった。

 

 

 

「なんだ…他に好いた女でもいんのか?」

 

 

 

そのようなことを知る由もない天元は的外れなことを口にする

 

 

 

「そんなんじゃねぇさ…ただ…2人の気持ちにも気付いているさ」

 

 

「…」

 

 

「こんな剣にしか興味の無い馬鹿な俺を好いてくれた奴らなんだ…いつかは全て受け入れるつもりだった。今更アイツらを他の奴に渡すつもりもねぇ。…俺(土方歳三)が俺(悲鳴嶼歳玄)を認められるようになったら全てにケリを着けに行くつもりさ」

 

 

「…よく分かんねぇがお前はお前なりに考えてるってことか。…応援するぜ。"先輩"としてな!」

 

 

「…なんか不安になってきた」

 

 

 

 

その後も2人は立ち合いの傷を癒すように一日を通してゆっくりと過ごすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元と立ち合いを行ってから一月後…歳玄は黒羽より承った任務を終え、自宅への帰路についていた。

 

その帰り道…街の中心街を歩いているとーー

 

 

 

「ーーください!…やめてください!役所に言いつけますよ!」

 

 

「良いじゃねぇかよ〜。嬢ちゃんも暇してんだろ?」

 

 

「ひっ!気持ち悪い!手を離しなさいよ!」

 

 

「んだとクソアマ!」

 

 

 

見るからに野蛮そうな大男が学服を着込んだ女生徒に言い寄っていた。そして女生徒に断られたことでヤケになった男は女生徒の手を捻りあげようとする

 

 

 

「…おい…その辺でやめとけ」

 

 

 

「あ!?…関係ねぇやつはすっこんでーーひっ!?」

 

 

 

見兼ねた歳玄が声を掛けると、振り向いた大男と目線が交錯する。始めは大口を叩いていた大男であるが歳玄の剣圧を感じ取り…

 

 

 

「す、すいませんでしたぁぁ!!」

 

 

 

女生徒の手を慌てて引き離し急ぎ足で立ち去っていくのであった。

 

 

 

 

「なんなのよもう最悪だわ〜…て、あっ!ちょっと待ってそこのお兄さん!」

 

 

 

「あ?」

 

 

「え!お兄ちゃん!」

 

 

「あ?何言ってんだお前」

 

 

「いやいや、な訳ないか。長髪だし」

 

 

 

 

荒くれを退けた歳玄はもうこの場に用は無いと考えたのか立ち去ろうとしたところ、先程の女生徒に声をかけられる。

 

 

 

 

 

「さっきはありがとうございました!」

 

 

「ふっ…気にすんな。お前こそ災難だったな。」

 

 

「もう本当に!いつもはお兄ちゃんがいるからこんな事にならないんだけど…って…あ!私市川尊(みこと)って言います!お兄さんは!」

 

 

「…俺は悲鳴嶼歳玄…つうかお兄さんって言われるほど歳離れてねぇだろ」

 

 

「え!お兄さん…歳玄は何歳なの!」

 

 

「14だ」

 

 

「え!同い年なの!こんなに大っきいのに!もしかしたらお兄ちゃんと同じくらいかも」

 

 

「…」

(…なぜこの女に…琴の姿を…)

 

 

 

歳玄は今し方助けた目の前の女生徒…尊に前世での想い人を重ね合わせた己の脳に違和感を感じていた。

 

 

 

「あの!良かったらこの後家でご飯食べて行かない!お兄ちゃんがご飯作ってくれてるんだ!」

 

 

「…いや…俺は」

 

 

「じゃあ、決まりね!ほら行こ!」

 

 

「いやだから俺は」

 

 

 

有無を言わさず歳玄の手を引く尊にため息を出す歳玄。

この出会いが歳玄の人生を大きく変えることになるとは…この時は思いも知らなかったのである。

 

 

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