散り際の鬼、再び咲き誇る   作:心ここにあらず

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二十二話

 

 

「…ん…ここは…」

 

 

 

歳玄の目に広がっているのは白く塗られた壁と高い天井であり、隣には大きな窓が設けられており、日中は柔らかな自然光が差し込み、室内全体を穏やかに照らしている。

 

 

「…俺は一体…」

 

 

歳玄が辺りを見渡しているとコンコンッとドアがノックされる音が聞こえた。

 

扉が開き入室してきたのはーー

 

 

 

 

「「歳(くん)!?」」

 

 

「ん?っぶね!」

 

 

 

現れたのは男物の衣類を持ったしのぶと、林檎などの果物を両手に抱え込んだカナエであった。2人は歳玄が目を覚ましているのを確認すると、両手に持っている荷物を寝具に放り投げ歳玄に抱きつくのであった

 

 

 

「…本当に貴方は…どれだけ心配させれば気が済むんですか」

 

 

「…本当よ…このまま目を覚さないんじゃないかって…怖くて」

 

 

 

2人とも目に涙を溜めながら力強く握ってくるのを知った歳玄は自分が如何に大切にされているのかを思い知ったと同時に"自らの気持ち"を再確認するのであった

 

 

 

 

「しのぶ、カナエ」

 

 

「「…はい?」」

 

 

 

 

声の声量を落とし、いつになく真剣な表情を浮かべる歳玄に疑問を抱く2人

 

 

 

「…こんなどうしようない俺を好いてくれる2人を手離したくない…他のやつに奪われたくないんだ」

 

 

「「っ!?」」

 

 

「愛している…俺と結婚してくれないか?」

 

 

 

唐突に告白する歳玄に驚きを隠せない2人

 

 

先に口を開くのは

 

 

 

「…こんな俺?…それは貴方を好きになった私達に失礼なんじゃないですか?」

 

 

「え?」

 

 

「…剣に夢中で好きな事に没頭して皆んなを守る為に頑張っている貴方だから…私は好きになったんです」

 

 

 

しのぶが想いを口にする

 

 

 

「…不器用だけれど他人の気持ちには敏感で…自分には酷く厳しいのに他人には凄く優しい…こんな俺なんて言わないで…貴方はとても素敵な人よ。…私胡蝶カナエも貴方が好きです」

 

 

「…と言うことは」

 

 

 

そう言う歳玄に対し2人は顔を見合わせて微笑みながら

 

 

 

「「お願いします」」

 

 

 

承諾するのであった。前世では土方歳三として愛した女性はいたが結婚まではいけなかった。今世では必ず2人を幸せにすることを誓う歳玄であった。

 

さらに家族として…夫婦として強い絆で結ばれた三人であったがここに嵐を呼び込む新たな影が現れる

 

 

コンコンッという音と共に勢いよく扉が開かれ現れたのは

 

 

 

「歳ちゃ〜ん!今日もお見舞いに来たよ〜」

 

 

「「「え」」」

 

 

新婚夫婦の旦那をちゃん付けで呼ぶ未婚の若い女性…

 

そのような女が現れたことを見逃す筈もなく…

 

 

 

「歳…この女は誰ですか?」

 

 

「歳ちゃんはモテるのねぇ〜」

 

 

 

眉間に皺を寄せ明らかに怒気を滲ませるしのぶと無表情のまま淡々と歳玄に話しかけるカナエ…どちらも恐ろしいのは言うまでもなく

 

 

 

「い、いや!待て!コイツはだなぁ!」

 

 

「歳ちゃんこの女ども何!私の歳ちゃんに近寄らないでくれる!?」

 

 

 

ここで取り返しの付かない台詞を吐いてしまう尊…もはや歳玄に出来ることは争いが出来るだけ穏便に終結するように願うことのみ

 

 

 

「私の歳ちゃんですって!」

 

 

「私たちの歳くんですから!!」

 

 

 

言い返すしのぶとカナエに対して尊は

 

 

 

「何を言ってるのかしら?そもそも歳ちゃんは私を助ける為にここまで頑張ってくれたんですもの。命を賭けてまで守る女なんて…愛しているとしか言いようが無いわ!!」

 

 

「「…歳(ちゃん)」」

 

 

 

歳玄が大怪我を負った理由をただ上弦クラスの鬼と戦ったとしか聞いてなかった2人は更に怒気を膨らませる。

 

 

 

「…ふぅ…」

(覚悟を決めろ悲鳴嶼歳玄)

 

 

「俺が愛しているのはしのぶとカナエ…お前達2人だ!!」

 

 

「「歳(くん)!!」」

 

 

「ただ!…尊のことも大切に思っている…家族としてだが」

 

 

「と、歳ちゃん…」

 

 

「いや、待て尊…早まるなよ」

 

 

「歳ちゃんの大馬鹿野郎!!」

 

 

 

 

歳玄の言葉に女として愛されていないことを知った尊は涙を流しながら病室を飛び出ていく。残った三人はその様子を唖然と見つめる他なかったのだった…

 

 

 

 

「とにかく一度事情を聞かせてくれませんか?…なぜこのような大怪我を負ったのかも全て」

 

 

「私達にはその資格があるはずよ。歳くん」

 

 

「…あぁ…勿論だ」

 

 

 

 

そしてこれまでの経緯や零煌との死闘までを事細かく説明していく。

 

歳玄自身…思い返せばこの一月は思いもよらぬ出会いばかりであった。己の血族との出会いから、過去の因縁…そしてもう1人の自分との決別…とても言葉でだけでは言い表せぬような出来事の連続だった。

 

 

 

「…そのようなことがあったんですね」

 

 

「…次からはちゃんと私達に報告してね。夫婦になってすぐに未亡人なんて私は嫌よ…」

 

 

「…あぁ…本当に悪かった」

 

 

 

2人を悲しませた事に再度頭を下げ心から謝罪する歳玄

 

そして長期睡眠から起床したばかりの歳玄に無理をさせないように短い時間で退出するカナエとしのぶ

 

 

 

「…どうします姉さん。…彼女本気で歳のこと」

 

 

「ん〜難しい問題よね〜。…第一私達は彼女の事何も知らない訳だし、いくら歳くんの事を好きだと言っても歳くんだけでなく私達にも受け入れる準備が必要だわ」

 

 

「え!姉さんはあの女を受け入れるつもりなんですか!?」

 

 

「あら、しのぶは嫌なの?」

 

 

「嫌に決まってるじゃない!あんな女!」

 

 

 

 

しのぶは先程尊と言い争いをした事をかなり根に持っているらしく、思い出すだけで拒絶反応が出ている

 

 

 

「ふふ…確かにちょっとお転婆な所はありそうだけど案外しのぶと合いそうな気がしているのだけど…」

 

 

 

「えぇ!? 勘弁してくださいよ!私はあそこまで初対面で失礼な事を言いませんよ!」

 

 

 

「…しのぶも中々だと思うのだけれど…最終的に決めるのは歳くんだからねぇ〜」

 

 

 

「…」

 

 

 

カナエは最大限歳玄の主張に応えたいと言う考えだが、しのぶはまだ尊の事を疑っている様子であった。やっとの思いで愛おしい人と結ばれた日に、浮気?に等しい行為を目撃したのだ。しのぶの警戒も無理はないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…弱った…完全にやらかしてしまったな」

 

 

 

 

 

まさか愛した女2人を嫁にしたその日に別の女からも好意を伝えられるとは…いや…今まで尊がそう言った言動を取っていることには気づいていたがてっきりアレは"兄弟"に向ける感情と同じかと…

 

 

 

「どうしたもんかな…」

 

 

 

歳玄が頭を抱え悩んでいた時、扉を叩く音が聞こえ新たに2人の人物が入室してくる

 

 

 

「よぉ!また大手柄を上げたらしいじゃねぇか歳玄!」

 

 

「歳!更に強くなったようだな!」

 

 

 

勢いよく扉を開け入室してきたのは歳玄の同僚…音柱・宇髄天元と以前任務で共闘した煉獄杏寿郎である

 

 

 

「あ?お前ら何で…」

 

 

 

2人が急に現れた事に驚く歳玄

 

 

 

「お館様からお前の事を聞いたんだよ」

 

 

「あぁ!また離されてしまったかも知れんな!」

 

 

 

どうやら2人はお館様からことの経緯を聞き馳せ参じたそうだ。

 

 

 

「んで…今回はどんな鬼とやり合ったんだ?」

 

 

「うむ!お前がここまで追い込まれるとは余程強い鬼なのだろうな!まさか上弦か!」

 

 

「…いや…奴…零煌は上弦では無かった…」

 

 

「「…」」

 

 

「だが…以前やり合った上弦の弐…童磨よりも強いと思うぜ」

 

 

「「っ!?」」

 

 

「なに!上弦より強い鬼がいたってのか!」

 

 

 

 

歳玄をここまで追い詰めた鬼が上弦ですらない事に驚愕する

 

 

 

「いやまぁ上弦ではなかったが…なんつったかな…"参謀"…とか言ってたな。」

 

 

「「参謀」」

 

 

 

零煌…上弦の鬼…壱から淕の数字とは別の零の数字を与えられた強者…歳玄の肌感で言えばこれまで出会ってきた鬼の中でまさに別格の強さと剣圧であったのは間違いなかった。

 

実際問題、歳玄以外の隊士が零煌と出会っていた場合、どうなるのか想像するのは難しくないだろう。

 

 

 

 

「…俺もそろそろ本腰入れて動かねぇとな」

 

 

「…あぁ…今のままでは上弦の領域にいる鬼と出会ってしまえば勝てるか分からない」

 

 

 

以前から歳玄と戦ったことのある2人は歳玄の強さを知っている。その歳玄ですらここまでの致命傷を与えられてしまったのだ。今回の話を聞き2人に大きな危機感が芽生えるのは自然のことであった。

 

 

 

 

 

 

 

その後2人が帰ってから色んな人が歳玄の見舞いに訪れたのであった。行冥、綾ノ氶、武流に驚いたのは産屋敷耀哉…お館様までお付きの者を連れてやってきたことだった。

 

多くの人に心配されより多くの人に支えられ生きている事を実感した歳玄であった

 

 

 

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