急遽入り込んだ柱合会議だったが実弥の暴言に始まり、最後は和解に無事落ち着くことができた。
そしてここに
「何分柱というものはやる事が多い…戸惑うこともあるだろうし、さまざまな苦難が訪れると思う」
「そういう時はいつでも頼ってほしい」
「私たちは仲間であり…家族なのだから」
「…御意っ」
お館様の言葉に実弥が頭を下げて答える
こうしてここに鬼殺隊の新たなる柱
"風柱・不死川実弥"が誕生する事となった
「もう〜お館様の前であんな圧を出すなんて! 彼の事斬っちゃわないか心配だったわよ〜!」
「かっかっか!久しぶりに歳玄の剣圧を浴びたが、またヤバくなったんじゃねぇか!」
「うむ!思わず剣を抜きそうになった!」
「…しかしあの男も歳の剣圧に辛うじてだが耐えていた。それなりの修羅場を潜っていると見て間違いない」
「…ふっ…」
柱会会議が終了した面々は帰路に着く前に、今日の出来事について話し合っていた。
「笑い事じゃないでしょ歳くん!」
「…すまん」
「すでに尻に敷かれてんな歳玄!」
反省の色がない歳玄を叱るカナエ
「杏寿郎、そう言えばお前も継子を取ったらしいな」
「む?あぁ!俺と同様熱い志を抱いた少女でな!才も申し分ないだろう!」
「女性なんですか〜!私会ってみたいわぁ〜」
「煉獄が女の継子を取るとは意外だなぁ〜」
「うむ!そのうち歳玄の屋敷にも連れて行くとしよう!」
先肌までとは打って変わり穏やかな雰囲気を出す面々のところに
屋敷の方から歩いてくる3つの人影
「今日は本当にすいません!ちゃんと言い聞かせますんで今後とも宜しくしてやってください!」
「ちょっと口は悪いんですけど同期では1番強くて頼りになるんで仲良くしてやってください!」
現れたのは実弥とその付き添いで現れた隊士2人
「ちっ…なんだ…その…悪かった」
「ふっ…次はお館様を困らせんなよ」
「良い仲間を持ったな不死川!」
「えぇ宜しくね不死川くん!」
「…南無…良い仲間に恵まれたな」
「…」
どこか気まずそうに頬をかきながら謝罪する実弥とそれを受け入れる柱の面々。
「あ!ちょ!おい!」
「やばいやばい!その人は1番やばい!」
謝罪を終えた実弥はゆっくりと歳玄の元へ歩く。同期の言葉を振り切りながら向かうのはーー
「「…」」
そして目の前に立ち歳玄と目が合う。
「…どうしたらそんなに強くなれるんだ」
「あ?」
「…あれ程の剣圧…初めての経験だったぜ。戦う前から"勝てねぇ"って思ったのはよぉ」
「…」
「アンタが頂点か?」
歳玄の目を見つめながら問い詰める実弥
「…あぁ…俺が1番強い」
「…あっはっは!そうか…そうか!…頂点(テッペン)まではこんなにも遠いのか!」
「…」
「面白ぇ…俺も行くぜ…その領域まで」
「…ほう…」
「…じゃあな。アンタも悪かったな」
歳玄のことを遥か格上と理解した上で尚、その領域に立つと宣言する実弥に少し驚く。
そして歳玄の反応を確認した後、同期2人に引きずられるように連れ去られていくのを目撃した。
「…なんて言うか…凄い独特な子だったね」
「…俺を目指すか…面白いことを抜かす奴だ」
残った面々はその様子を見つめていた。
初対面…しかもあれ程の剣圧を直に浴びて尚歳玄の目を逸さずに見るなんて事は並の胆力では無い。
それに気づいた歳玄は実弥のことを認めつつあるのであった。
◆
柱合会議から数ヶ月が経ったある日のこと、歳玄は武流の通う道場まで足を運んでいた。
「お勤めご苦労様です!悲鳴嶼さん!」
「「「お疲れ様です!!」」」
門を過ぎると、道着を着用した青年達が大勢立ち並び歳玄に向かって頭を下げる。
「…おう」
短く答えた歳玄はそのまま道場内に足を運ぶ。ここを初めて訪れた日に全員を返り討ちにして以来この対応である。
そして
そこに居たのは
「やっと来たか歳玄!見ろ出来るようになったぞ!」
「…ほう」
そこで歳玄が目撃したものとはーー
竹藪で作られた獲物が複数に斬り分けられており、先端はどれも黒くなっており所々に焦げ臭い匂いが立ちのぼっている。
明らかに普通の切り傷ではなく特別な力によって斬られた跡
「完成させていたのか…この短期間で」
「あぁ!名付けて"嵐の呼吸"!!どうだ!カッコいいだろ!」
先はどの傷…それは武流が呼吸を使い切り刻んだ跡だったのだ。
それにしても"嵐の呼吸"か
「嵐の呼吸か…」
「おう!元々俺に適性があったのが風と雷だったからな!その両方を上手い具合に自分なりに併せ持った形にしたぜ」
武流に適性があったのは、風と雷だった。しかしそれらは適性があるにもかかわらず武流の身体にはあまり馴染まなかった。使えば過度な疲労が起きるし、威力もそこそこ…使えない呼吸だって多く存在するのだ
行き詰まった所に声を掛けたのが歳玄である。歳玄は己の呼吸も水からの派生であることを伝え「何も必ず五代流派を使用しなければならない」ことはないことを伝えた。
そしてその結果、試行錯誤を繰り返し辿り着いたのが"嵐の呼吸"と言うわけである。
というより
そもそも何故武流が呼吸を覚えることになったのか…そこから説明する必要があるだろう。
あれは歳玄がまだ入院している時の話ーー
「歳玄…あれは…なんだったんだ…それにお前の強さも…明らかに人の領域を踏み外しているように見えた」
重苦しい口調で歳玄に問いただす武流
普段なら一般人に何を聞かれようとはぐらかす歳玄であるが今回は事情が違った。何せ武流の身内が狙われたのである。ここではぐらかせるより事情を伝えた方が両者のためになる…そう判断した歳玄は一つずつ説明する
まずは鬼のこと…
そして鬼殺隊のこと…
歳玄本人が鬼殺隊の中でも1番位の高い柱であること…
そして呼吸や日輪刀…それに鬼の弱点についても…
「…なるほどな…歳玄はこの前みたいな"鬼"といつも戦ってるわけか」
「…あぁ」
そして意を決したような目をした武流が口を開く
「なぁ…"それ"俺にも出来んのか?」
「あ?」
「それだよ…その呼吸?って奴」
「…適性があれば出来んじゃねぇか?」
「…ふーん…よし!決めたぞ歳玄!」
「あ?」
「俺も…俺も鬼殺隊に入隊する!!」
「はぁ!?」
そう高らかに宣言する武流に驚きを隠せない歳玄
「いやいやお前意味わかってんのか!この前みたいなバケモンと殺し合うんだぞ!?」
「分かってるよ!」
「それにお前…呼吸を使えるからって必ずしも鬼を殺せるとは限らねぇんだ」
「ん?どう言うことだ?」
「…はぁ…いいか…この前俺が出会った奴は鬼の中でも最も上澄みの領域に位置する鬼だ…正直俺ももう一回やれって言われて勝てるか分かんねぇ…そんな奴らが何匹もいるんだ…お前が呼吸を覚えたからって勝てるとは限らない」
「…」
「それに…尊はどうするんだ…お前がもし死んだら…」
歳玄はもっとも最悪な可能性を示唆し伝える
しかし
「…その為にも…俺が死なない為にも…そして尊を守る為にも…俺は鬼殺隊になってみせるぜ!!」
「…はぁ…」
武流の意思は固く、もはや歳玄が何を言おうとも変わる事はないだろう
「…分かった。…その代わり死ぬよりも辛ぇぞ俺の指導は」
「おう!望むところだ!」
そうして武流の鬼殺隊入隊への道が始まったのだった。
そして現在…
「…そうだな…武流。」
「ん?」
「今年の最終選別受けに行ってもいいぞ」
「え!もう良いのかよ!」
武流が驚くのも無理はない。なんせ正式に呼吸を習い始めてまだ半年程しか経過していないのだ。武流自身もそう簡単に歳玄の許可が降りそうもないと考えていたのでこの台詞には驚いてしまった。
「お前は元々剣術を習ってただけあって基礎は固まってたからな。そこに呼吸と見合った剣技を覚えたんだ。上等だろ」
「でもまだお前から一本も取った事ねぇぞ?」
武流は模擬刀とはいえ打ち合いの稽古の最中も歳玄から一本も奪った事はない。
「アホかテメェは…いくら呼吸を使えるようになったとはいえ鬼殺隊ではそれは当たり前のことだ。そこからが始まりでテメェは1番下っ端…俺は柱でその頂点…お前なんかに一本取られるくらいなら引退するっつうの」
「…そこまで言わなくても良いじゃんかよ」
「なら舐めた事抜かすんじゃねぇよ」
厳しい言葉を浴びせる歳玄であるが、武流の才と実力は認めている。なにせ、呼吸を覚えることに関しては歳玄より遥かに早かったのだ。
そして独自に生み出した嵐の呼吸…破壊力と瞬発力を兼ね備えた攻撃型特攻とも言える破壊力抜群の呼吸をこの短期間で編み出したのは見事としか言いようがない
だからこそ、歳玄は武流に対して最終選別への挑戦を許可したのだ。
「まぁ…なんだ…お前なら大丈夫だと思うが死ぬんじゃねぇぞ」
「おう!任せとけ!」
こうして今年の最終選別に武流が挑むことが決定したのだった
ちなみにこの時点で歳玄が15歳なのに対し実弥が18歳、武流が17歳なので2人とも年上にあたります。