散り際の鬼、再び咲き誇る   作:心ここにあらず

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遅くなりました。プライベートが何かと忙しくて…あとどうやったら高評価貰えるのでしょうか?笑笑


二十五話

 

 

山の麓に一歩足を踏み入れた瞬間、空気が変わるのが分かった。

 

それまでの世界とは切り離されたかのように、ひやりとした冷気が肌にまとわりつき、呼吸の一つ一つがやけに重く感じられる。空は薄曇りで、陽の光は差し込んでいるはずなのに、どこか色を失ったように鈍く、景色全体が淡い灰色に染まっている。

 

足元には無数の砂利と踏み固められた土の道。その道の両脇には、背の高い木々が隙間なく並び立ち、まるで外界との境界線を作るかのようにそびえ立っている。枝葉は風もないのにわずかに揺れ、時折、乾いた葉音が静寂を裂く。

 

耳を澄ませば――音が存在しないようだ。

 

鳥の囀りも、虫の羽音も、何も聞こえない。ただ、自分の足音と心臓の鼓動だけがやけに大きく響き、まるでこの場所そのものが“侵入者”を拒んでいるかのような錯覚に陥る。

 

さらに奥へ進むと、空気は一層重く、濃くなる。

 

木々の隙間から見える山の上部は、まるで霧に包まれているかのように霞み、その先に何があるのかを決して見せようとしない。視界の端では、何かが動いたような気配がしても、振り向いた瞬間には何もいない。

 

――だが、確かに“何か”はいる。

 

 

 

 

「…ここが最終選別の場所か」

 

 

 

そう呟くのは鋭く荒れた黒髪が無造作に跳ね、どこか獣のような野性味を感じさせる男。

顔立ちは整っているが、その表情は常に気怠げで、鋭い眼差しの奥には修羅場を潜り抜けてきた者特有の陰が宿っている。

 

身に纏うのは、"淡い紅の羽織"。ゆったりとしたその衣は風に揺れ、静けさの中にどこか不穏な気配を漂わせる。内側は着崩された和装で、胸元ははだけ、無防備さと同時に無頼さを強く印象づける。

 

 

 

男が辺りを見渡すと自分と似たような目的で訪れたであろう剣士達が数十人集まってきていた

 

 

そしてそんな中静まり返った山の入口ーー

白装束を纏った女性が、穏やかな声で語りかける――

 

 

 

「ようこそ、お越しくださいました。

これより皆様には、鬼殺隊入隊を懸けた最終選別に臨んでいただきます」

 

「この先に広がる藤の花の山には、捕らえられた鬼が解き放たれています。

藤の花は鬼を拒みますが、その結界の内側では――誰も守ってはくれません」

 

「試験は七日間。

夜を越え、鬼を退け、生き延びることができれば合格です」

 

「剣の腕だけでなく、判断力、胆力、そして――己を貫く意志。

そのすべてが問われます」

 

「どうか忘れないでください。

ここで命を落とす者も、決して少なくはありません」

 

「それでも進むと決めたのなら――」

 

(わずかに微笑み、静かに手を差し出す)

 

「どうぞ、お進みください。

皆様のご武運を、心よりお祈りしております」

 

 

 

 

 

この先を進むも進まないも自分次第…ここにきているもの達は当に覚悟は決めているのだろう。

 

誰1人として拒否するものは現れなかった

 

 

 

「…では始めさせていただきます…」

 

 

 

「「「…」」」

 

 

 

「それでは…開始!!」

 

 

 

 

女性の合図と共に一斉に森に走り込んでいく剣士達。男も例に漏れず先頭を突き進んでいく。

 

 

そしてある程度進んだところで急停止する

 

 

 

 

「……」

(いやがるな…"奴ら"の匂いだ)

 

 

 

その瞬間ーー

 

 

 

 

「ケヒッ!馬鹿め!!」

 

 

 

男の背後にある木の上から飛びついてこようとする"鬼"

 

 

背後をとった事で勝利を確信する鬼であるが

 

 

 

「馬鹿はお前だ」

 

 

 

ーー嵐の呼吸・壱ノ型・"嵐牙"(らんが)

 

 

 

背後に現れた鬼を回転斬りのように振り向きながら刀を振う事で周りの木すら巻き込むほどの竜巻を起こす

 

 

 

「なにぃぃぃ!?」

 

 

 

鬼は叫び声を上げながら空中に打ち上げられ刃の竜巻に切り刻まれる

 

 

そして

 

 

 

「…な…なに…もの…だ」

 

 

 

地面に落下する寸前…首を切り落とされ命を落とす

 

 

 

 

「…ふぅ…まずは1匹…」

 

 

 

そう呟くと同時に

 

 

 

「助けてくれぇぇぇ〜!!」

 

 

 

斜め右奥の方から人間の助けを呼ぶ声が聞こえ動き出す男

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男が鬼を狩り始めた場所から少し離れた森の中に"ソレ"はいた

 

 

概ね人間とは思えないほどに伸び切った赤黒い手足に気色の悪い顔…

 

 

そしてその両手で1人の剣士を握り締め口に運ぼうとしている

 

 

 

 

 

「久しぶりの人間だぁぁぁ」

 

 

「や、やめ…やめてくれぇぇぇ!!」

 

 

 

涎を垂らしながら喜ぶ鬼と絶望の表情を浮かべながら泣き叫ぶ剣士

 

 

そして大きく口を開いた鬼が剣士を噛み砕こうとしたその時ーー

 

 

 

「おいーー」

 

 

 

「んあ?…っぐはっ!?」

 

 

 

「ぐへっ」

 

 

 

声が聞こえた瞬間ーー

 

 

振り向く隙も与えず鬼の両手が切り落とされ、剣士が地面に落ちる

 

 

そして

 

 

 

 

「な、なんだお前!!せっかくの俺様の楽しみを!!」

 

 

 

「その面を見ると虫唾が奔るんだよ…」

 

 

 

そう言い放つと男は刀を鬼へと向ける

 

 

 

 

「お前から先に食ってやる!!」

 

 

 

煽られた鬼は男へと飛びつくように口から飛ぼうとする

 

 

 

しかし

 

 

 

 

ーー嵐の呼吸・弐ノ型・"疾風裂衝"(しっぷうれっしょう)

 

 

 

 

男は一瞬で間合いを消し去る踏み込みからの横薙ぎを魅せる。そしてーー踏み出した瞬間、地面の砂塵が後方へ弾け、残像だけが遅れて追う。

 

 

 

「ぐぁ!?」

 

 

 

斬撃と同時に生まれる風圧が刃の軌道を拡張し、実際の刀身より広範囲の鬼の体を切断し首と胴体が別れる。

 

首を斬られた鬼は白目を剥きながら生命を途絶えさせる。

 

 

そしてその様子を見た助けられた剣士が声をかける

 

 

 

 

「あ、ありがとう!おかげで助かったよ!」

 

 

 

「気にするな!俺もコイツが気に食わなかっただけだ!それより怪我はないか?」

 

 

 

「い、いや大丈夫だ!俺の名前はーー」

 

 

 

そう言おうとした瞬間別の箇所から声が聞こえる

 

 

 

「はんっ…情けなくねぇのかよ。泣き喚きやがって」

 

 

 

酷く侮蔑も混じった声色で話す男。

 

 

2人は慌ててその方向を振り向くとそこにいたのはーー

 

 

 

黒に近い濃い髪は短く乱れ、整える気配すらない。全体的に荒削りで、どこか棘のある印象を与える男。

目つきは鋭く吊り上がり気味で、常に他者を値踏みするような冷たさと、内に燻る苛立ちが滲んでいるのが分かる

 

 

 

 

「…なんだお前」

 

 

「おっと…そう睨むなよ。お前のことは少しは認めてるんだぜ」

 

 

「…誰なんだよお前は」

 

 

「ふふ…俺の名は獪岳…いずれ鬼殺隊最強になる男さ。お前の名前も教えてくれよ」

 

 

 

 

男の態度が酷く気に入らない

 

 

 

「…俺の名は武流…市川武流だ」

 

 

「そうか武流。お前は良い剣士になれるかもな!…"俺の次"にな!!」

 

 

「…なんだと…」

 

 

「図星だからって怒んじゃねぇよ!」

 

 

「…殺されてぇなら先にそう言えよ」

 

 

「…はっ…やる気か?」

 

 

「ちょちょちょ!や、やめろって!!」

 

 

 

 

今すぐにでも死合いを始めてしまいそうなほど険悪な2人

 

 

そしてそんな2人を仲裁しようと間に入る助けられた剣士

 

 

 

 

「ちっ…雑魚が…会話に入ってくんじゃねぇよ」

 

 

「雑魚はテメェだろ」

 

 

「あぁ!?」

 

 

「図星だからって怒んじゃねぇよ」

 

 

「…てめぇ」

 

 

 

 

先ほどの言い回しを言い返す武流

 

 

そして

 

 

 

「あぁ…そうだ。もう一つ訂正しておいてやる。」

 

 

「…」

 

 

「テメェ如きじゃあどう足掻いても勝てねぇ男が今の鬼殺隊には存在している。最強だなんて言葉を吐けるのは井の中の蛙だけだってことを覚えておけよ間抜け」

 

 

 

 

そう言い捨てると歩き出す武流

 

 

 

 

「…くそカスがぁ」

 

 

 

そしてどこか苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ武流を睨みつける獪岳。

 

 

 

「…なんで今になって"奴"の顔を思い出すんだ…」

 

 

 

獪岳の脳裏によぎる幼少の頃の記憶…

 

 

どこか他のガキとは違うスカした雰囲気に遥か先をゆく剣の腕前

 

 

結局一太刀も入れることなく終わってしまったが

 

 

 

 

「…あいつは"あの時"死んだはずだ。…そうなるように仕向けたんだからな」

 

 

 

 

その言葉はこの不気味な夜の中に静かに消え去っていくのだった

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