散り際の鬼、再び咲き誇る   作:心ここにあらず

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三話

「っ!クソガキがぁぁ!!」

 

 

 

 

踏み込み一つで、間合いが消える。

 

 

 

人間のモノとは思えない速度。

 

 

 

だが――

 

 

 

(……見えてる)

 

 

 

 

迫る爪に振り下ろされる軌道。

 

 

 

 

(単調だな)

 

 

 

 

歳玄は前世での経験と卓越したその身体能力で身体を半歩だけずらす。

 

 

しかし紙一重で風が、頬を裂いた。

 

 

 

 

(深追いしてこい)

 

 

 

 

 

「ヒヒッ!!逃げてばっかじゃ――」

 

 

 

 

言い終わる前に、踏み込む。

 

 

 

 

床を蹴る音すら最小限。

 

 

 

 

懐へ――入り込む。

 

 

 

 

「なっ――!?」

 

 

 

 

 

(ここだ)

 

 

 

 

手にあるのは、ただの木刀。

 

 

 

だが関係ない。

 

 

 

 

斬るべき“線”は、見えている。

 

 

ヒュンッ!!と木刀を横凪に振り抜く。

 

 

 

 

(……浅い!)

 

 

 

 

手応えはあった。

 

 

 

だが――骨まで届いていない。

 

 

 

 

「ヒヒッ!!効かねェよォ!!」

 

 

 

鬼の腕が、振り上がる。

 

 

攻撃のために近づいた至近距離…

 

 

 

この距離では回避は――間に合わない。

 

 

 

ドゴッ!!と轟音が鳴り響き歳玄を壁まで吹き飛ばす

 

 

 

「ぐっ……!」

 

 

 

(……チッ…なんつぅ馬鹿力だ。一発で骨までイカれてやがる)

 

 

 

 

 

咄嗟に、左腕で受けたがあまりの威力に一撃で骨が折れるのを感じた

 

 

 

(…まじでやべぇな。もう一度貰えば俺は…)

 

 

 

口の端が、僅かに吊り上がる。

 

 

「ヒヒッ……いい顔するじゃねェか」

 

 

鬼が、愉快そうに嗤う。

 

 

歳玄は己に死神が近づいてくる気配を感じながらその貌は嬉々としていた。

 

 

そして

 

 

 

「あ?」

 

 

 

歳玄は覚悟を決めた。

 

刃は胸の位置より低く、地を舐めるように相手に構えられている。

その位置は、防御でも牽制でもない。

 

“最短で相手の急所に届く軌道”をなぞった位置に

 

上段でも中段でもない。

 

だがその実――

 

どこからでも斬り上げ、斬り払い、斬り抜けるための“無駄を極限まで削ぎ落とした形”

 

 

 

"平青眼"

 

 

 

歳玄の新選組時代の“実戦剣”であり【土方歳三】の始まりの型である

 

 

 

 

 

「キャハッ!もっと楽しませろよォ!!」

 

 

 

 

 

再び、踏み込んでくる。

 

 

 

 

今度は――もっと速い。

 

 

 

先程よりも明確に。

 

 

 

 

(……来たな)

 

 

 

 

 

だが

 

 

 

上からくる振り下ろしに対し歳玄は

 

 

 

(…ここだ)

 

 

正面に構えた木刀水平に振り抜き一閃する

 

 

 

「んな!何ぃぃぃ!?」

 

 

 

歳玄の振り抜いた木刀は鬼の両腕を切り裂き吹き飛ばすことに成功する。

 

ただのガキだと舐め切っていた化け物は己の腕を切り落とした自分より遥かに小さな存在に驚愕する

 

 

 

「…はぁ…はぁ…これでテメェは終わりだぜ」

 

 

 

「…」

 

 

 

「…両腕を使えないテメェなんか怖くも何ともねぇ…はぁ…はぁ」

 

 

 

「…残念だったな…」

 

 

 

「??…んなっ!?」

 

 

 

 

歳玄が切り落とした筈の両腕が再生を始めていたのだ。

 

 

 

 

(…っくそ…やっぱこの体じゃあ…これ以上は…)

 

 

 

 

そしてそれ以上に齢10歳を超えたばかりの体では歳玄の…いや土方歳三の剣は余りに疲労が激しく、どんどんと意識が遠のくのがわかった

 

 

 

 

「ヒッヒッヒ…てこずらせやがって…お前はゆっくりと食べてやるぜ」

 

 

 

そう言い歳玄に近づいてくる怪物の姿

 

 

 

(…ここまでか)

 

 

 

そう思った瞬間ーー

 

 

 

バギャァァン!!と轟音を鳴らし化け物の隣の壁が叩き破られ、何者かの攻撃で化け物の体が吹き飛ぶ

 

 

 

(…あぁ…やっぱり戻ってきちまったか)

 

 

 

煙が立ち上り見えないもののその後ろ姿に歳玄は見覚えがあった

 

 

 

「遅れてすまない!!大丈夫か歳!!」

 

 

 

悲鳴嶼行冥が慌てて歳玄の体を抱き上げる。

 

 

 

「…あぁ…こんな小さな体で」

 

 

 

体の至る所に傷が見え、特に左腕…大きく腫れ上がりあられも無い角度に折れ曲がっている

 

 

そしてその声を聞いた歳玄からとうとう意識が消えたのだった

 

 

 

「と、歳ぃぃぃぃ!!」

 

 

「テメェ…ぶち殺してやる」

 

 

 

歳玄の意識がなくなったのを確認した悲鳴嶼行冥は泣き叫び、その隙に怪物が背後に立つ

 

 

化け物が悲鳴嶼行冥の背中に爪を突き刺そうとする

 

 

その瞬間ーー

 

 

 

 

「ぐはっ!?」

 

 

 

怪物の体が吹き飛ぶ。

 

 

 

「何がっーー」

 

 

 

何が起こったのか理解できない怪物が口を開く間も無く悲鳴嶼行冥が拳を振り下ろす

 

 

 

「や、やめっーー」

 

 

 

ただひたすらに、悲しみをぶつけるように…

 

 

すでに怪物の頭は潰れ、原型を留めてはいなかった

 

 

しかし

 

 

悲鳴嶼行冥は止まらない

 

 

そしてそれは

 

 

朝日が昇るまで止まることはなかったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…いてぇ…体中が軋むように悲鳴を上げてやがる)

 

 

 

 

歳玄は痛みで意識を取り戻した。

 

 

目を開け周りを見渡すと…ここは

 

 

(どこかの診断所か?)

 

 

医療所に近い雰囲気を感じる場所に寝かされていた

 

 

そしてしばらくすると扉を叩く音が聞こえた

 

 

 

「おや、起きていたのかい?」

 

 

 

扉から現れたのは歳玄より幾分か年齢が上の少年

 

 

 

「私の名前は産屋敷耀哉と言う。君が悲鳴嶼歳玄で大丈夫かい?」

 

 

「…なんで俺の名前」

 

 

「それは行冥から聞いたからさ」

 

 

「っ!そうだ!兄貴!兄貴はどこだ!あの化け物に襲われてんだ!」

 

 

 

 

目の前の男から悲鳴嶼行冥の名を聞いた歳玄は取り乱す

 

 

 

「落ち着いて」

 

 

「落ち着けるわけがっ!」

 

 

「大丈夫だよ。"今"は…別室で休んでいるだけさ」

 

 

 

 

どこか深みを持たせた言い方に疑問を感じる

 

 

 

 

そしてあの化け物について産屋敷耀哉から顛末を語られた。

 

 

まずはあの化け物…

 

 

あれは鬼という正真正銘の化け物だった

 

 

奴らは人間を主食とし、驚異的な再生能力や超人的な身体能力、そして独自の「血鬼術」という妖術に近いモノを扱うという

 

 

そしてそれを葬る鬼殺隊と言う部隊がありその頭が目の前の男だということ

 

 

…鬼の討伐方法

 

 

鬼は通常、鬼殺隊が所持している日輪刀と言う特別な刀で首を切り落とすこと…もしくは日光で焼き切ることの二つのみだということ

 

 

そして兄貴は…悲鳴嶼行冥はあの鬼を日光によって討伐したこと

 

 

 

 

そしてさらに衝撃的な事を聞かされる

 

 

 

あの日、生き残ったのは俺と兄貴、…それに兄貴が逃した沙代だけであった事。鬼を討伐した兄貴は俺を運び麓まで降りたそうだ。

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

待ち受けていたのは兄貴を犯罪者として待ち構える街の住民の姿

 

 

 

 

あの日、悲惨な光景を目にした沙代は混乱した。…それこそ鬼という人物を悲鳴嶼行冥に移し替えるほど

 

 

そして化け物だと偽った

 

 

その後兄貴は捕えられ牢獄に投獄されたが、目の前にいる産屋敷耀哉がその後の顛末をしり助けてくれたそうであった

 

 

 

「兄貴…」

 

 

 

「あ!」

 

 

 

 

 

産屋敷耀哉の声を無視し俺は兄貴のいる部屋へと駆け込んだ

 

 

 

 

「兄貴!!」

 

 

 

「…っ!歳!!」

 

 

 

悲鳴嶼行冥を見つけた歳玄は近くまで駆け寄った

 

 

 

 

「…すまない歳…俺が…私がもっとちゃんとしていれば」

 

 

「何言ってんだよ」

 

 

 

助けた子供にも見捨てられ悲鳴嶼行冥は疲弊し切っていた

 

 

 

「兄貴は俺たちのためにあの怪物…鬼に立ち向かってくれたんだ…兄貴のおかげで俺は生き延びた。…ありがとう」

 

 

「…っ…歳…歳…。」

 

 

 

その後産屋敷耀哉が使用人を引き連れ駆けつけてくるのだがそれすら気にしないほど兄貴は泣き続けた。

 

ずっと1人で我慢していたのだろう。…その日は俺たち2人で寺の家族を弔いながら過ごしたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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