散り際の鬼、再び咲き誇る   作:心ここにあらず

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二十九話

 

 

 

これはとある日の任務帰りでの出来事…

 

 

その日歳玄は遠方での任務を黒羽から伝えられており、その任務を遂行するため遥々山を越え向かっていた時のこと…

 

その日は酷く雨が降りしきる梅雨深い日だった。

 

 

 

「…くそっ…これじゃあ方角がわからねぇ…」

 

 

 

辺りの日は沈み掛かり、霧と雨が段々と濃くなりつつある状況…そしてこんな山奥では人1人見当たらない。

 

どうしようもない場面、歳玄は一夜を過ごせる洞窟を探そうと雨の中山を徘徊しようとする。

 

 

 

「…ん?」

 

 

 

 

すると木々に囲まれたこの山奥で一軒の小屋ほどの大きさの家が建っているのを目撃する。

 

もしかしたら人が住んでいるかも知れないという希望を頼りに歳玄は小屋の扉を叩いて見ることにした。

 

 

 

「…すまない。誰か住んでいるものはいるのだろうか」

 

 

 

その瞬間ーー

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

「んっ!!」

 

 

 

 

扉が勢いよく開き、黒髪長髪の1人の少年が斧を振り翳しながら飛び出してきたのだった

 

 

少年の割に力も強く勢いのある一振りだったが…

 

 

 

「っ!刀!?」

 

 

 

 

相手は歳玄であり、子供の一撃など容易く刀で受け止めてしまうのだった。

 

 

 

「無一郎!!コイツ刀を持ってるぞ!!お前は逃げろ!!」

 

 

 

「え!?兄さんは!?」

 

 

 

無一郎…目の前の少年がそう口にした瞬間、奥からさらにもう1人…斧を振り翳す少年と瓜二つの少年が現れる

 

 

 

「俺の事はいい!お前がいても邪魔なだけだ!早くーー」

 

 

 

「落ち着けよ」

 

 

 

 

興奮する目の前の少年の斧を刀の鍔で弾き飛ばす。

 

 

 

「おい…」

 

 

 

「っ!?く、くそ!!」

 

 

 

「兄さん!?」

 

 

 

「…はぁ…」

 

 

 

興奮して話を聞いてもらえる状況ではないと考えた歳玄は、刀を捨てて両手を上げる

 

 

 

 

「っ!?な、なにを!?」

 

 

 

「…話を聞いて欲しい…俺は別にお前たちを襲撃しにきたものじゃない」

 

 

 

「う、嘘だ!刀を持ってるじゃないか!」

 

 

 

 

目の前の少年が答える

 

 

 

 

「これは仕事の都合で所持しているだけで"人間"に向けるためのものじゃない」

 

 

 

「…」

 

 

 

「に、兄さん…多分この人の言ってる事は本当だと思うよ」

 

 

 

「無一郎!?」

 

 

 

「だ、だってこの人が僕たちを殺そうとしたら一瞬でやられると思うんだ…でも、そうなってないって事は…」

 

 

 

「…分かった…中に入れよ」

 

 

 

「すまない。助かる」

 

 

 

 

後ろにいる少年の説得もあり、なんとか中に入ることができた歳玄。

 

中に入り、薪を焚いてくれた兄弟に感謝を述べつつ、こうなってしまった経緯を鬼と鬼殺隊関係を上手く誤魔化しながら話す。

 

 

 

 

「へぇ〜そうなんだ!じゃあこれって本物の刀なの!」

 

 

 

「あぁ。見て見るか?」

 

 

 

「うん!」

 

 

 

 

目の前の双子…斧を持っていた方が兄の有一郎であり、おどおどした優しそうな子が無一郎である。

 

初めての来客という事もあり、無一郎は歳玄に懐くように隣に腰掛け話しかける。

 

反対に有一郎はまだ疑っている様子であり、反対側に座り歳玄を見定めるかのように見つめている

 

 

 

 

 

「へぇ〜なら兄弟2人で住んでいるのか」

 

 

 

「うん。父さんたちが亡くなってからはね」

 

 

 

「おい、あんまり他人にペラペラと話すんじゃねぇ」

 

 

 

「ご、ごめん兄さん」

 

 

 

 

有一郎の鋭い視線が、まるで刃のように歳玄へ突き刺さる。

 

火に照らされたその横顔はまだ幼いはずなのに、妙に大人びていた。いや大人になるしかなかったか…

弟を…家族を守るために…

 

 

「……兄貴分ってのは大変だな」

 

 

 

ぽつりと歳玄が呟く。

 

 

「は?」

 

 

「無一郎を守ろうとしてるんだろ。さっきの斧の振り方…迷いがなかった」

 

 

「……別に」

 

 

 

ぶっきらぼうに返す有一郎。だが、その視線がほんの僅かに揺れたのを歳玄は見逃さなかった。

 

 

 

「普通、あの年であそこまで踏み込める奴はいねぇよ。怖くて手が止まる」

 

 

「……」

 

 

「でもお前は違った。“自分がどうなるか”より“守る”方を選んだ」

 

 

 

薪がパチ、と弾ける音が静寂に響く。歳玄はかつて寺子屋で鬼に襲われた時の自分を有一郎に重ねた。

 

あの時もどうしようもない中、行冥と他の家族を守るために1人鬼に立ち向かう選択をした歳玄

 

 

そんな歳玄を有一郎は黙ったまま見つめる。

 

 

 

「……だからなんだよ」

 

 

「いや、単純にすげぇと思っただけだ」

 

 

「……は?」

 

 

 

予想外の言葉に、有一郎の眉がわずかに動く。

 

 

「疑うのは正しい。家族を守るためには必要なことだ」

 

 

歳玄は少しだけ笑みを浮かべる。

 

 

 

「でもな、“全部拒むだけ”じゃ守れねぇ時もある」

 

 

「……どういう意味だ」

 

 

「さっき俺を家に入れたのは、お前じゃねぇか」

 

 

「っ……」

 

 

「無一郎の言葉を信じた。あれはお前の判断だろ」

 

 

 

有一郎は言葉に詰まる。

 

確かに、自分は最後に“受け入れる”選択をしたのだ。

 

 

 

「……勘違いすんな。あいつがうるせぇから仕方なくだ」

 

 

「はは、そういうことにしとくか」

 

 

 

軽く笑う歳玄に、有一郎は小さく舌打ちをするが——先ほどまでの殺気はもう無かった。

 

その時、無一郎が楽しそうに刀を眺めながら口を開く。

 

 

 

「ねぇ兄さん、この人すごいよ。全然動じてなかった」

 

 

「……あぁいう戦闘には慣れているのか?」

 

 

「慣れ、か」

 

 

 

 

歳玄が静かに呟く。

 

 

「まぁ…そうだな。嫌でも慣れる」

 

 

その声音は、どこか遠くを見ているようだった。

 

 

「……あんた」

 

 

有一郎がぽつりと口を開く。

 

 

「何人くらい斬ってきたんだ」

 

 

無一郎の手が止まる。

 

 

「に、兄さん…!」

 

 

「いや…いい」

 

 

 

歳玄は静かに答える。

 

 

 

「数は覚えてねぇ。でもな——」

 

 

 

一拍置いて、有一郎を真っ直ぐ見る。

 

 

「“守れなかった数”の方が、よく覚えてる」

 

 

「……!」

 

 

 

歳玄は敢えて、"鬼"という単語を含まずに答える。

そしてその言葉に、有一郎の目が見開かれる。

 

 

 

「だからお前みたいな奴は嫌いじゃねぇよ」

 

 

「……なんでだよ」

 

 

「同じ顔してるからな」

 

 

 

かつての自分と…

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

しばらくの沈黙——

 

やがて有一郎はふっと視線を逸らし、鼻で笑う。

 

 

「……変な奴だな、あんた」

 

 

「よく言われる」

 

 

「……飯、食うか」

 

 

 

ぽつりと、有一郎が言う。

 

無一郎がぱっと顔を明るくする。

 

 

 

「いいの!?兄さん!」

 

 

「うるせぇな。客だろ、一応」

 

 

「はは、悪いな」

 

 

 

歳玄が少し肩の力を抜く。

 

火の温もりが、三人の距離をゆっくりと溶かしていく——

 

外では相変わらず雨が降り続いている。

だがこの小さな小屋の中だけは、不思議と静かで温かかった。

 

——この出会いが、後にどれほど大きな意味を持つのか。

この時の三人は、まだ知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日…双子が住む家の前では何かがぶつかる様な衝撃音が響き渡っていた。

 

 

 

 

「っ!くっ!?」

 

 

 

「甘いぞ無一郎!!」

 

 

 

「…」

 

 

 

 

双子が住む家の前では、木刀を真似た木の枝で戦う2人の姿とそれを側で見つめている歳玄の姿があった。

 

と言うのも昨日の夜、歳玄の強さを少し目の当たりにした2人は…と言うより無一郎が歳玄に剣の教えを乞うたのだ。

 

歳玄本人としては泊まらせていただいた礼を兼ね、それを了承した事で今日の模擬戦が行われる事となったのだった。

 

 

そしていざ始まって見ると2人の剣に驚く歳玄

 

 

予め2人からは、剣などの指導はおろか斧以外は握ったことすら無いと聞いていた。

 

 

しかし

 

 

目の前で行われた模擬戦では、荒削りながらも"才能の原石"と言って差し違えないほどの戦闘が行われた。

 

 

 

 

 

まずは兄の有一郎…有一郎は出会い頭の斧を振り翳した時にも感じたが齢11歳とは思えない膂力と瞬発力を有している。まさに"天賦の才"と言えるだろう

 

今の時点でも、その辺の剣術道場に通っている同世代なら圧倒できるだろうな

 

 

 

 

 

 

そして弟の無一郎…身体能力では兄の有一郎には劣っている…しかし何度も兄と打ち合い"互角の攻防"を演じてみせた。これがどう言うことなのか理解できるだろうか

 

身体能力で劣り、技術も稚拙な者が身体能力で上回っている者と互角に戦うと言うこと…それはつまり無一郎には"希代の天凛"が宿っているということ。

 

 

 

 

「…あっはっは!!」

 

 

 

「「??」」

 

 

 

 

いきなり高笑いし始めた歳玄に驚きつつも首を傾げる双子

 

 

 

 

(…ここに居たぞ"総司"……お前の才にも劣らない天才が!!それも2人も揃って!!)

 

 

 

 

かの幕末の戦乱…数々の剣術家や武道家を持ってして"最強"の名を欲しいままにした"若き天才"…"新撰組一番隊隊長【鬼子】沖田総司"

 

実際に沖田総司を知る土方歳三こと歳玄本人に、かの天才剣士に並ぶ才とまで評価された双子

   

"根っからの剣術馬鹿"である歳玄は2人の剣才を目の当たりにし、胸が高鳴り酷く興奮してるのが自分でも分かった。

 

 

 

 

「おもしれぇ…なぁ2人とも…今度は俺が相手をしてやる。やるか?」

 

 

 

「「…」」

 

 

 

2人は互いの顔を見合わせて…

そして

 

 

 

「「やる!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人が歳玄に挑み始めてから半刻ほどの時が流れた。

 

 

 

 

「「…はぁ…はぁ…はぁ」」

 

 

 

「…」

 

 

 

 

地面に大の字で横たわり、息切れを起こし全身が土まみれになっている2人の姿とその隣で2人を見下ろす擦り傷すら負っていない歳玄の姿…

 

 

 

 

「…はぁ…はぁ…強すぎるよ歳兄さん」

 

 

「…化け物め…はぁ…はぁ…って歳兄さん!?」

 

 

 

 

横たわる状態で無一郎が発した言葉に驚く勇一郎

 

 

 

「うん。昨日聞いたんだ!そしたら歳玄さんだから歳さんで良いって!だから歳兄さん!」

 

 

「…ふ〜ん」

 

 

 

"兄"という言葉を聞いたからか少し頬を膨らませる有一郎。そんな有一郎の頭に手が添えられる

 

 

 

「…ん?」

 

 

 

「何拗ねてやがる?」

 

 

 

「す、拗ねてなんかない!!」

 

 

 

「??兄さんも呼んでみたら?」

 

 

 

「お、俺も!?…う、う〜ん。と、歳…俺はいい!!」

 

 

 

 

顔を赤くさせ家に走っていった有一郎を見て歳玄たちは顔を見合わせる。そしてどちらも吐き出す様に笑い合うのであった。

 

 

 

 

 

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