散り際の鬼、再び咲き誇る   作:心ここにあらず

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三十三話

 

突然の鬼の強襲から撃退と窮地を脱した2人であるが、鬼の討伐方法がない2人には長時間鬼から逃げ切ることは至難と考え、これまで育った実家を放棄する決断を下したのだった。

 

2人はそれぞれ、思い出の詰まった物を背中いっぱいの風呂敷に背負い、旅立った。

 

 

 

これまで碌に下界には出なかった2人である。いくら地図があるとは言え四苦八苦することは目に見えていた。

 

 

 

「うわ〜兄さん!見て見て!3色のお団子があるよ!」

 

 

「良かったら食べてみるかい?」

 

 

「いいの!?」

 

 

「勿論。アンタらみたいな子供が遠慮する必要なんてないよ」

 

 

「ありがとう!!ほら兄さんも!」

 

 

「ん。あんがと」

 

 

 

 

実力は兎も角、外見はまだまだ少年の枠を出ない2人である。大荷物を背負った少年たちに対して街の人々の対応はどこか優しかった。

 

2人は様々な出会いがあった。初めてみる食事や食材…衣服や伝統、芸術や芸能と2人の価値観を広げるもので溢れていた。

 

そしていよいよ歳玄のいる街に入った。

 

ここまで来るのに家を飛び出して3日ほど経った。2人は家に残された貯蓄を使い、宿や食事を取り、既に手元の金銭は底を尽きようとしていた。…と言うか普通に直接この街に向かっていればお金に余裕はあったはずである

 

しかし、見慣れないものや初めて見る食べ物に興奮した2人は要らぬ散財や買い物をしてしまい、余分な出費を重ねてしまっていたのである

 

 

 

 

 

「…うわ〜おっきいお屋敷ぃ〜」

 

 

 

「…本当にここか??」

 

 

 

 

2人の目の前には街中の中心部に位置する、田舎者の2人から見ても大層立派なお屋敷が佇んでいた

 

 

 

「ここが歳兄さんのお家なの?」

 

 

 

「う〜ん…何回見てもここなんだよな」

 

 

 

何度確認しても地図が示す場所はこのお屋敷である。2人は無言で目線を合わす

 

 

 

「「もしかして、とんでもないお金持ち??」」

 

 

 

確かに屋敷を見るだけなら名家や資産家に並ぶ領域だろう。しかし実態はこの屋敷自体は貰い物に過ぎない。

勿論、柱である以上裕福な方なのは間違いないが、2人が思っているほどではないだろう。

 

2人が門の前で話し込んでいるとーー

 

 

 

「あら?お客さん?」

 

 

「我が家に何か様でも?」

 

 

「「ん??」」

 

 

 

後方から2人に近寄る影が二つ…声に振り向くとそこにはーー

 

 

 

ーー着物を着た2人の女性の姿

 

 

先ずは左の柔らかな光をまとったような、穏やかで儚げな美しさを持つ女性。長い黒髪はしっとりとした艶を帯び、毛先にかけてほのかに紫が差すようにも見える。髪はゆるやかにまとめられ、桃色の蝶の羽を思わせる髪飾りが静かに揺れている。

 

そして右側の女性… 黒髪は肩ほどの長さで切り揃えられ、毛先にかけて淡い紫へと変化する模様が特徴的であり蝶の羽を模した髪飾りが左右に添えられ、軽やかな印象を与えている。

 

 

2人ともが、この街では飛び抜けた美女・美少女であり、町内では有名である。

 

 

 

「「……美人…」」

 

 

 

双子は女性達の浮世離れした美貌に口を開けて惚けてしまっていた

 

 

 

「もしも〜し。大丈夫ですか〜??」

 

 

「「っ!?あ、はい!!いいえ!!」」

 

 

「どっちですか」

 

 

 

 

固まった2人に近寄って声をかける長髪の美女と驚き慌てて理解不可能な日本語を話す双子…そしてそれに突っ込むもう1人の美少女と言う構造が出来上がっていた

 

 

 

 

「あ、いや、あの!」

 

 

 

有一郎が何か話そうとしたその時、門が開き中から人が現れる

 

 

 

 

「たくっ…家の前で何を騒いでるんだ」

 

 

 

「「歳兄さん!?」」

 

 

 

「あら、旦那(あなた)」

 

 

 

「帰ってたんですか歳」

 

 

 

中から現れたのは双子が待ち侘びた人物…悲鳴嶼歳玄である。そしてその姿を見た4人はそれぞれが違った反応を見せる

 

 

 

「「歳兄さん??」」

 

 

 

「「旦那(あなた)!?」」

 

 

 

女性達は歳玄を兄呼びした事に対し、双子は歳玄を旦那呼びした事に…それぞれ驚きの表情を浮かべる

 

そして、当の歳玄はというと

 

 

 

「…とりあえず中に入れ」

 

 

 

一度その場を整理するために中に入る事を促すのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず自己紹介から始めましょうか」

 

 

 

 

そう唱えるのはカナエである。

 

 

 

 

「あ、はい。俺は時透有一郎…です。11歳です」

 

 

 

「僕は時透無一郎って言います。11歳です」

 

 

 

 

カナエに見つめられた双子達から自己紹介を始めた

 

 

 

 

 

「あら、双子?」

 

 

「あ、はい」「うん!」

 

 

「ふふ…じゃあ今度は私達ね」

 

 

 

 

双子の反応に笑みをこぼすカナエ

 

 

 

 

 

「私は悲鳴嶼カナエ。もう分かってるかもだけど、歳くんのお嫁さんよ」

 

 

「私は悲鳴嶼しのぶです。…その…私も一応…妻です」

 

 

「「えぇ!?」」

 

 

 

 

少し頬を赤らめながら自己紹介を行なうしのぶ。

カナエに関しては薄々勘付いていた双子…しかし、もう1人のしのぶも歳玄の妻と聞いて驚愕する2人。

 

 

 

 

 

「さ、歳兄さん奥さん2人もいんのかよ!!」「うんうん!!」

 

 

 

「あら、厳密には3人よ?」

 

 

 

「「えぇぇぇぇぇ!?」」

 

 

 

 

本日2度目の驚愕の事実である

 

 

 

 

 

 

「…ウチのことはいい。…それよりそんな大荷物なんて抱えてどうしたんだ?」

 

 

 

「「…うん…」」

 

 

 

そして2人は語りだす。歳玄と別れてからも2人は剣術を磨き続けていたこと、そしてとある日の夜…以前言っていた鬼と遭遇したこと。運良く撃退に成功したものの討伐方法が存在しなく、諦めて逃げてきたこと…

 

 

 

 

「…そうか」

 

 

 

「「…ごめんなさい」」

 

 

 

頭を下げる双子

 

 

 

 

「なぜ謝る?」

 

 

 

「歳兄さんに剣を教わったのに恥をかかせることをしちゃったから」

 

 

 

「うん…情けなくって」

 

 

 

「…ふっ…馬鹿野郎が…数日やそこら指導しただけで鬼に勝てるなら、今頃日本中の鬼が絶滅しているさ。ましてや今回は日輪刀も呼吸も無しなんだ。それで勝てるのは鬼殺隊にも僅かだろうさ」

 

 

 

「「…」」

 

 

 

「…それでも…その状況下でさえ立ち向かい…尚且つ迎撃したお前達を俺は"誇り"に思う」

 

 

 

「「…ぐっ… うわぁぁぁぁぁん!!」」

 

 

 

 

 

歳玄の言葉で漸く肩の荷が降りたのだろう。互いが互いを意識し合い、切磋琢磨しながら育ってきた2人である。両者が弱みを見せないため、我慢し続けてきたのだろう。

 

いくら"特別な才"を持っていても実際は齢11になる少年たちである。それが異形の化け物に立ち向かうなど余程のことでもない限り不可能だろう。

 

2人は、母のこと…父のこと…そして鬼から逃げてしまったこと…これまでの全ての事を思い出し泣き崩れる。

 

 

 

2人が崩れるように泣き始めてから暫くたった後…手を赤くさせてた2人に歳玄が問う

 

 

 

 

 

「…鬼が憎いか?…お前達から居場所を奪い…今ものうのうと生き続け、"弱者"から搾取し続けている悪鬼どもが…」

 

 

 

「「っ!?」」

 

 

 

2人の脳裏に浮かぶはあの日の光景…そして…次に沸き上がるは"憤り"

 

何を守れず、家族の唯一の思い出である居場所すら護れず今も、師の前で安心している不甲斐ない自分達への"怒り"

 

 

 

 

「お前達に"覚悟"があるのなら俺は俺の全てを賭けてお前達を強くしてやる」

 

 

 

「「…」」

 

 

 

「但し、一度でも頷いた途端、俺はお前達に対して一切の甘さを捨て去る…泣き喚こうが逃げ出そうが地獄の果てまで追いかけて連れ戻す…俺の修行は地獄よりも苦しく厳しいぞ…それでも強くなりたいなら"覚悟"を決めろ!!」

 

 

 

 

歳玄なりの激励…2人が2度と大切なものを奪われない様に…もし2人が断ったとしても投げ出したりなどしない…無論責任を持って2人の面倒を見るつもりである

 

 

しかし2人が選んだのはーー

 

 

 

 

「「お願いします!僕(俺)達を強くしてください!!」」

 

 

 

2人の眼に"覚悟の炎"が灯る

 

 

その眼を見た歳玄は、あの日出逢ったことは天啓だったと確信する

 

 

 

「…ふっ…いいぜ…お前達を必ず強くしてやる」

 

 

 

それは戦闘以外で初めて見せた、"剣鬼"の貌立ちであった。

 

話がまとまりかけたその時、ドンドンと慌ただしい足音が廊下から聞こえてくる

 

 

 

「ただいまぁ〜!!」

 

 

 

騒がしく現れたのは、これまた胡蝶姉妹に並ぶほどの美女である

 

 

 

「って…なんかちっちゃい子達がいる!?」

 

 

「…落ち着けよ。尊」

 

 

「五月蝿いのが帰ってきたわね」

 

 

「尊ちゃんがいると一気に明るくなるわね」

 

 

「だ、誰ですか?」

 

 

 

 

 

騒がしい女性を不思議に思った無一郎が問う

 

 

 

 

「私の名前は悲鳴嶼尊!そこにいる歳ちゃんのお嫁さんよ!」

 

 

 

「「この人が!?」」

 

 

 

「貴方達は?」

 

 

 

 

再三驚く双子。そして双子からことの顛末を語られる。

 

そして話の結末を迎える頃にはーー

 

 

 

 

「…ぐすっ…辛かったわねぇ…ほら、お姉さんのところにおいで」

 

 

「「え…」」

 

 

 

泣きながら双子を抱き寄せる尊。双子は未だ齢11になったばかりの年ごろ。それも成長が遅いのか少しばかり平均より小柄な為、女性の中でも比較的大柄な尊の両腕にきっちりと収まってしまった

 

 

 

 

「もう大丈夫よ…これからは私達がついてるからね。鬼なんて来ても歳ちゃんが退治してくれるわ!」

 

 

 

「「…」」

 

 

 

双子は母親以外で初めて抱き寄せられたからか、顔を赤くしながら俯いている

 

 

 

 

「歳ちゃん」

 

 

「ん?」

 

 

「話を聞いた限りこの子達、住む場所もお金もないのよね?」

 

 

「あぁ」

 

 

「なら、ここで一緒に暮らしましょうよ」

 

 

「「えぇ!?」」

 

 

 

驚くのは双子のみ。歳玄と妻達ははなからそのつもりであったかのように頷いていた

 

 

 

 

「あぁ。元よりそのつもりだったさ。修行云々の前に餓鬼をそんな路地に捨てる様な真似はしねぇ。」

 

 

「さっすが歳ちゃん!!」

 

 

「で、でもいいの?」「…」

 

 

 

 

双子が申し訳なさそうに尋ねる。

 

 

 

 

「勿論だ。なんだ嫌なのか?」

 

 

 

「「ううん!!」」

 

 

 

「なら良かった。…まぁ色々と話したいこともあるが、今日からこの家で暮らす以上俺たちは家族だ…辛いことや楽しいこと…いろんな事を分け合って助け合っていくのが家族だ。」

 

 

 

「「…家族…」」

 

 

 

「そうだ…だから、何かあったらまず俺たちを頼れ…1人で抱え込むな…お前達はもう2人だけじゃないんだから」

 

 

 

「ええ」「そうね」「うんうん!」

 

 

 

「「…ぐすっ…うわぁぁぁぁん!!」」

 

 

 

 

再び泣き始める双子…しかし、今回の涙を流す顔には悲壮感はなく、寧ろ嬉々として泣いている様にも見えた。

 

予期せぬ出会いから始まった歳玄と双子…そして紆余曲折ありながらも、再びこうして出会うことができた。

 

今度は"家族"として生きていく3人である。これから長い年月を生きることになろうであろう双子…この子達にとって歳玄たちはかけがえのない存在となり、心に住まう父や母のようになれるのだろうか…未来はまだ誰にも分からないのだから

 

しかし今は、双子の幸せを願わずにはいられない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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