「"全集中"…」
「お師匠…全集中とは…」
行冥が全集中について綾之丞に尋ねる。
「…ふむ…お前たちは鬼が強い力と再生能力を持ち、なかには「血鬼術」(けっきじゅつ)と呼ばれる異能を使う者も居ることを知っているか?」
「「…」」
「通常なんの武器もなしに奴らに対抗することなど出来はしない。そんな鬼に対抗するために歴代の鬼殺隊が編み出した対抗策が「全集中の呼吸」だ」
"全集中の呼吸"… 基本的に鬼殺隊士は鬼の頸を斬ることを目指し、そのために訓練を重ねて身体を鍛え、さらに肺を大きく、強くして呼吸法を体得する。この呼吸法は正式には「全集中の呼吸」と言う。身体能力や体力が飛躍的に向上して、常人には不可能とも思える戦いが可能となる。
「そしてこの呼吸を会得することで鬼殺隊士は特別な力を振るう事ができるようになる」
「「特別な力?」」
「少し見て見るか」
行冥と歳玄、そして綾之丞の前に――
静かな空気が張り詰める。
風が止み、草木すら息を潜めたような静寂。
綾之丞はゆっくりと腰の刀に手を添えた。
「……よく見ておけ。これが――“呼吸”だ」
スゥ……
一度、大きく息を吸う。
その瞬間――
空気が、変わった。
(……違う)
歳玄の背筋に、冷たいものが走る。
ただ息を吸っただけのはず。
だが――それだけで、目の前の男の存在が“別物”になった。
「――全集中」
ドンッ
地を踏み込んだ瞬間、
綾之丞の姿が“消えた”。
「――なっ!?」
次の瞬間には、十間先の岩の前。
ヒュン――
抜刀の音すら遅れて届く。
ズンッ……
遅れて、岩が縦に滑り落ちた。
まるで最初から斬られていたかのように、
綺麗に、静かに。
「……これが、“特別な力”だ」
刀を納めながら、綾之丞が振り返る。
「筋力、速度、反応……全てが引き上げられる。だがそれだけじゃない」
「呼吸により血流を制御し、酸素を全身に巡らせる。極限まで引き出された肉体は、鬼にすら届く刃となる」
歳玄は、言葉を失っていた。
(今の動き……人間のものじゃねぇ……)
行冥もまた、静かに息を吐く。
「……ただの剣技ではない……」
「そうだ」
綾之丞の眼が、二人を射抜く。
一歩、二人へと歩み寄る。
「呼吸を極めるということは、自分の身体を完全に掌握するということ」
「恐怖も、痛みも、迷いも――全てを呑み込み、なお動け」
「それが出来ぬ者は、鬼の前で死ぬ」
沈黙。
重い言葉が、胸に沈む。
「……だが」
綾之丞は、ふっとわずかに口元を緩めた。
「出来るようになれば――」
「お前たちは、“人でありながら鬼を屠る存在”になれる」
歳玄の拳が、ぎゅっと握られる。
「……やる」
「俺はそれを、身につける」
行冥もまた、静かに頷いた。
「……ご教授願いたい」
綾之丞はゆっくりと頷く。
「いいだろう」
そして――
「まずは“呼吸を保て”」
「昼も夜も、眠る時すら――“全集中”を途切れさせるな」
「出来るまで、斬ることは許さん」
「「……っ!?」」
「それが第一歩だ」
静かに告げられたその言葉は、
あまりにも過酷で――
だが同時に、
鬼へ届く唯一の道だった。
――こうして、地獄のような修行が始まる。
◆
修行が始まってから早1年ほどが経過した。
「…まさかここまでとはな」
「…お師匠と御指導のおかげであります」
兄貴は一年で師匠に並び立つことに成功した。
と言っても師匠の現役は何十年も前の話らしく今はとっくに現役から退いている。ただそれでも破格の強さなのは間違いなく俺たちの寺を襲った鬼程度なら一太刀で斬り捨てることが出来るだろう。
かくいう俺は
「才気、気迫、技術、どれをとっても素晴らしい。剣士としての能力は既に完成されていると言っていいほどの領域だろう。」
「…」
「…ただ…鬼殺隊の剣士としてはまだ半人前だ」
「…ちっ」
「まだ"馴染みの型"は見つからないか?」
「…あぁ」
鬼殺隊…鬼殺隊に所属する剣士たちは特別な呼吸を用いて独自の型を使い鬼を葬っていく。元々は五代流派…岩、雷、風、水、炎の呼吸の型が存在しここから己に見合う様々な呼吸へと派生させていく。
師匠で言えば水の呼吸、兄貴で言えば岩の呼吸を使用する戦闘形態を完成させていた。
しかし
俺本人はイマイチ自分に合う呼吸が見つからず今は水の呼吸を使用しているが俺にはあまり合わないのが使ってみた肌感で分かる。
「こればかりはしょうがない…行冥は予定通り"最終選別"に向かっていいよ。君ならすぐに突破出来るはずだ」
「…ありがとうございます」
「歳…君は」
「分かってるさ。…俺はまだ足りねぇ…何もかも」
「「…歳」」
歳玄本人は決して認めようとしないが、行冥、綾之丞サイドからして見れば真に怪物なのは歳玄の方であった。
なにせ、齢11の歳にて純粋な剣の腕だけ見れば既に2人を凌駕している。この2人が歳玄相手に有利に立ち回れる点と言えば呼吸の練度、純粋な腕力ぐらいであろう。
さらに
(歳玄が最も優れている点は、その類稀な才気でも、剣士としての技量でも無い…それは"必ず殺すという殺気"だろうな)
立ち会いにおいて相手を殺す気持ちで向かい合う者など、最早剣を握らないこの大正時代には存在しないかも知れない。
日常的に剣を握る鬼殺隊士ですらごく僅か、柱の領域に踏み入れた者のみ…ましてや綾之丞…人間相手にアレほどの殺気をぶつけれるなんてのは異常な他ならない。
極め付けは歳が必殺としている"平青眼"…あれはまさに幕末の時代…実戦最強と恐れられた修羅の型
あの型を用いた戦闘形態を取る歳は"本当に人を殺したことのある"圧を放っている
本当に剣を…斬り合いを楽しんでいるような表情
アレはまさに"剣鬼"の所業に相応しい
(そしてそれは…鬼狩りとして最も必要な要素であるとも言える)
何せタダでさえ異形の姿をした怪物である。修行を納めた鬼殺隊士でさえその姿形を目撃しただけで恐怖を抱き退散する者も後を立たない。
ましてや鬼…更にはその上位に位置する12匹の鬼達…そしてその頂に座るあの怪物相手では柱以外では戦う前に心をへし折られてしまう可能性が高い。
そしてその点で言えば歳にその心配はまるで無い。
コイツは鬼を見れば必ず殺すであろう。少しの躊躇もなく必ず…
もしかしたらあの怪物達相手でもコイツなら笑いながら闘うのかも知れない。
それほどの剣の狂気をコイツは秘めている。
鬼という矛先がいることを喜ぶべきなのか…いずれ訪れるかも知れない居場所を失った矛先の収め方も教えてやるべなのかもしれんな
主人公の容姿なんですけど、ちるらん中盤のポニテ土方をちっちゃくした感じで考えています!いずれ成長したら原作土方歳三そのままになりますけどね!