散り際の鬼、再び咲き誇る   作:心ここにあらず

8 / 37
八話

最終選別を終えた翌日。

 

 

 

山を下りた先の屋敷。

 

 

 

生き残った隊士たちは、それぞれ簡素な部屋へと案内されていた。

 

 

 

 

 

「……静かだな」

 

 

 

 

 

歳玄は縁側に立ち、庭を見ていた。

 

 

 

七日間の戦いが終了した。

 

 

 

その全てが、まだ体の奥に残っている。

 

 

 

(……だが、これで終わりじゃない)

 

 

 

むしろ――

 

 

 

 

(ここからだ)

 

  

 

その時。

 

 

 

バサッ――

 

 

 

 

空気を裂く羽音が歳玄の耳に聞こえる

 

 

 

 

「……来たか」

 

 

 

 

一羽の鳥が、音もなく歳玄の前へ降り立つ。

 

 

 

 

 

黒く美しい羽

 

 

そして

 

 

歳玄によく似た鋭くキツい眼差し

 

 

 

 

「合格者、歳玄!」

 

 

 

 

人の言葉を紡ぐ声。

 

 

「これより貴様の伝令を務める!」

 

 

 

 

 

それは――

 

 

 

鎹鴉…鬼殺隊にとっては重大な任務を預かる相棒的存在である

 

 

 

 

「……鴉か」

 

 

 

歳玄はわずかに目を細める。

 

 

 

 

「我が名は――黒羽(くろは)!!」

 

 

 

「覚えておけ!!」

 

 

 

 

「任務は我が告げる!!怠るな!!死ぬぞ!!」

 

 

 

 

やけに騒がしい鳥だな。ていうか鳥って喋るのか…

 

 

 

 

 

「……随分と、よく喋るな」

 

 

 

「当然だ!!優秀だからな!!」

 

 

 

 

誇らしげに胸を張る黒羽。

 

 

 

だが歳玄は、ふっと視線を外す。

 

 

 

 

「……まあいい」

 

 

 

「任務があるなら、さっさと持ってこい」

 

 

 

「フン!!すぐに忙しくなるぞ!!覚悟しておけ!!」

 

 

 

 

バサッ――

 

 

 

黒羽は再び空へ舞い上がった。

 

 

 

 

その姿を見送りながら――

 

 

 

 

「……次だな」

 

 

 

 

歳玄は静かに呟く。

 

  

 

 

 

――数日後。

 

 

 

 

 

再び呼び出された場所。

 

 

 

 

それは、刀鍛冶が受け持つ場所だった。

 

 

 

 

「……来たか」

 

 

 

 

 

どこかふざけたような面をつけた男。

 

 

 

低く、落ち着いた声が歳玄に向けられる

 

 

 

「最終選別を生き残った剣士に、日輪刀を授ける」

 

 

 

差し出される数本の刀。

 

 

 

まだ色を持たない、“原石”。

 

 

 

 

「好きなものを選べ」

 

 

 

 

歳玄は、無言で一歩踏み出す。

 

 

 

(……これだ)

 

 

 

 

迷いはなかった。

 

 

 

 

一振りの刀を手に取る。

 

 

 

握った瞬間――

 

 

 

 

 

ゾクッ――

 

 

 

 

 

刀と、自分が“繋がる”感覚。

 

 

 

 

「……面白い顔をする」

 

 

 

 

刀鍛冶が呟く。

 

 

 

 

「その刀は、お前を選んだらしいな」

 

 

 

 

歳玄は何も答えない。

 

 

 

ただ、ゆっくりと刀を構える。

 

 

 

 

その瞬間――

 

 

 

 

スゥ……ッ

 

 

 

 

 

刀身の色が、変わる。

 

 

それは

 

淡く。儚かない感情を浮かび上がらせる

 

 

 

そしてどこか、冷たい美しさを持った――

 

 

 

 

「……桜色……か」

 

 

 

ほんのりと、薄紅に染まる刃。

 

 

歳玄は思った。まるでーー

“散ることを宿命付けられた色”のようだとーー

 

 

「うむ…初めて見る珍しい色だな」

 

 

 

 

刀鍛冶が呟く。

 

その言葉を聞きながら

 

歳玄は刀を鞘へ収める。

 

  

 

カチリ――と音が響く。

 

 

 

 

そして全ての業務を終えた後歳玄は家へと帰ることにする

 

 

その日の夕刻

 

 

歳玄は、家への山道を歩いていた。朝に出発したこともありそれ程遅くない時間にはつきそうであった。

 

 

そして山を登り自宅が見えたその時ーー

 

 

 

ドサッ!と歳玄に向かい飛びついてくる人影が現れる

 

 

 

「おっと…」

 

 

「…お帰りなさい」

 

 

「…あぁ…ただいま。…しのぶ」

 

 

 

抱きついてきたのは胡蝶姉妹の妹…しのぶであった。帰る日程を伝えてなかったことからたまたま自宅に残っていたのであろう。

後2人の姿が見えないが…

 

 

 

「2人は?」

 

 

「え、あぁあの2人はいつもの場所で授業中です。姉さんが『歳くんに負けてられないわ!』って言いながら張り切ってるんですよ」

 

 

「…ふっ」

 

 

 

思わず想像できるその姿に笑みが溢れる歳玄。

 

胡蝶姉妹は鬼に両親を殺害され行冥に助けられた後、ここにやって来たと聞いた。となれば2人が鬼殺隊士を目指すことは必然であったのだが…

 

姉のカナエは次第に自分の才能を開花させ剣士としてみるみる育っていった。しかし…

 

妹のしのぶは生まれ持った才能は申し分なく呼吸も使用可能なのだが、いかんせん筋力が足りず鬼の首を切り落とすだけの力が足り無かったのだ。勿論、しのぶは現在13歳…もう時期14歳に達するとはいえ年齢的に考えればまだまだ成長の余地はある。だが…姉のカナエや同い年の歳玄を目の前で見続けたしのぶは隊士になる目標を見失いかけていた。

 

 

 

「とりあえず中に入りませんか?」

 

 

「あぁ」

 

 

 

俺たちは2人が戻ってくるのを家の中で待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数刻した後、月が見えだす頃に2人はようやく帰って来た。

 

 

 

「っ!歳く〜ん!!」

 

 

 

家に帰って来たカナエは歳玄の姿が目に入った途端にしのぶと似たような飛びつきを見せた

 

 

 

「お前らは抱きつかなきゃ死ぬ呪いでもかかってんのか」

 

 

「ん?お前…"ら"?」

 

 

 

そう口で言った後ゆっくりとしのぶの方を向き直すカナエ。そしてそこには顔を赤くし湯呑みで隠すような仕草を見せる妹の姿がーー

 

 

 

「きゃぁぁぁ!!可愛いわしのぶ!お姉ちゃんも頑張らないと!」

 

 

「何を言ってるの姉さん!?」

 

 

 

 

相変わらず騒がしい姉妹を尻目に

 

 

 

「君なら楽々合格してくると思ってたよ。…どうだった試験は」

 

 

「師匠…あぁ…正直毎日アンタと稽古してた時の方がよっぽどしんどかったぜ」

 

 

「ふふ…それはそれは。やはり君を満足させられるような相手は見つからなかったと言うわけか。」

 

 

「まぁな」

 

 

「逆に君が満足できるような相手となるとそれこそ"奴ら"基準になっちゃうからある意味満足しなくて良かったと取るべきか…」

 

 

「…」

 

 

 

 

 

 

綾之丞が口にした"奴ら"とは…

 

 

 

その説明をするにはまず"鬼"とはなんなのか…どこから生まれ落ちた存在なのかを説明しなければならない

 

 

この時代では夜の帳が下りる頃――

人の世の裏側では、決して語られることのない“絶対的な支配”が存在している。

 

そう"鬼"による弱肉強食の世界…

そしてその頂点に立つ存在…

 

 

それが、"鬼舞辻無惨"と呼ばれる"鬼の始祖"と呼ばれている怪物である

 

すべての鬼の血の源であり、恐怖そのものを具現化した存在だ。

 

 

そして無惨は人間の中から選りすぐりの存在を鬼にする。運悪く無惨と言う災害に見舞われてしまった者…はたまたその中には自らの人生に絶望し自ら進んで鬼になる者まで現れている。

 

そんな中で無惨の血を与えられた人間は鬼となる。だがそれは“救い”ではない。

むしろ選別だ。適応できぬ者は肉体が崩壊し、適応した者もまた――

永遠に無惨の支配から逃れることはできないのだからーー

 

彼の血には呪いが宿る。

名を口にすれば死に至り、逆らえば細胞一つ残さず消される。

 

鬼にとって無惨とは“神”ではない。

 

“絶対的な恐怖の象徴”である。

 

 

 

そしてその無惨に選ばれし最強の鬼たち――

それが「十二鬼月」と呼ばれる精鋭部隊である

 

 

 

 

十二鬼月は、鬼の中でも特に強力な十二体で構成される。

彼らの瞳には数字が刻まれている。

 

“上弦”と“下弦”。

 

その二つに分けられる。

 

 

 

そしてその中でも上弦は、鬼の中でも“別格”とされている。

 

数百年もの時を生き抜き、幾多の柱を葬ってきた怪物たちだ。

 

一から六までの序列を持ち、数字が小さいほど強いとされる。

 

彼らはほとんど入れ替わることがない。

なぜなら

それほどまでに完成された強さを誇るが故討伐されることがないからだ

 

人間の技も理も通じない。

彼らの戦いは、まさに“災厄”。

 

十二鬼月は“精鋭”であると同時に、

“選別され続ける存在”でもある。

 

忠誠か、死か。

 

そのどちらかしか許されない。

 

 

そして今もどこかで、

人知れず血は流れ、命は喰われている。

 

すべては、あの男の意志のままに。

 

 

鬼舞辻無惨を倒さない限り

奴の支配は、

終わることなどないのだからーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。