「お久しぶりです。
「これは風藍様。よくぞ参られましたな」
風藍と龍炎が訪れたのは第三軍の将、風迅がいる天幕だ。風羅から顔を出すように言われ、まさか将本人にも呼び出されるとは。
「あの方が……」
「本当に若い」
天幕には部隊長級の将が他にもいた。
彼らは口々に風藍の事を口にする。
「大きくなられましたな。風藍様の初陣が我が軍で飾って頂いて大変嬉しゅうございます!」
「そんな、お礼を言うのはこちらの方です。軍に合流させて頂きありがとうございます」
第三軍の兵数は八千。その兵達に合流する形で、風藍の小隊五十騎が加わる。
「歩兵の多いこの軍に五十とはいえ騎馬が加わってくれるのは心強いです。ですが、ご無理はなさらぬよう」
「はい、分かりました」
「それで、そちらが副官の龍炎ですな」
「は!」
「龍の一族族長の倅。槍を相当使えると」
龍炎の事を恒迅は知っているようだ。
「数年前まで第二軍にいると聞いたが、本当か」
「はい。風羅様からの言いつけで三年という期間の条件付きで第二軍におりました」
「確か、地位は千人将だと噂に聞いたぞ」
龍炎は、風藍が修練を行っている間、風羅軍の戦力として数えられ戦場にいた。
そこで龍炎は成果を出し、三年の間で千人将になるまでの武功をあげていた。
「はい。ですが、私は藍様の側付きです。ですから、その地位は戦場を離れる際に返上して来ました」
「「な!」」
それを聞いて、周囲にいた兵達が驚く。
「ははっ、それはすごい。風藍様、良き家臣をお持ちですな」
「はい。とても頼りにしています」
「私は、恩人である藍様に忠誠を誓っております。当然の事です」
その後、軽い雑談をして今回の戦の事を話し合った。
「今回は、国境沿いの戦い。敵は趙軍、徐々に秦の領地侵攻の兆しが見える為、目の前の趙軍を殲滅するのが我らの役目です」
「敵の数は一万……。侵攻にしては少なくないですか?」
「先鋒隊と言った所でしょうな。後方に軍が居ないところを見ると、すぐの進軍ではなく、こちらを探っているのでしょう。おそらく本番は少し先だと殿は考えているようです」
「なるほど……」
それであれば、風藍の初陣を飾っても問題ないだろうと風羅は判断したのだろう。
「では、私たちはこれから軍略会議を開きます。風藍様は第二部隊の千人隊の下へついてください」
「…………」
「気難しい奴ですが、実力は確かです」
一人の男が一歩前に出る。
この者が第二部隊の千人将だ。その顔に風藍は見覚えがない。他の千人将たちも知らない人ばかりだ。
「はい、よろしくお願いします……」
当然だけど、今の私は軍略会議に参加できる身分じゃない。
少なくとも、ここにいる人たちは千人将以上の人たち。今ここに立つには経験も実績も足りないんだ。
「行きましょう。藍様」
龍炎を先行に、風藍たち二人は天幕を後にした。
「龍炎、私はまだ力がないね」
「藍様……」
龍炎も風藍の気持ちに気付いたのだろう。
どれだけの身分があろうと、戦場は力の世界。それを改めて風藍は実感していた。
「龍炎。早くみんなのもとへ戻って私たちも戦術を改めておさらいしよう」
「はい!」
悔しがってなど居られない。私の戦いはまだ始まってない。自分の力を見せる為、今はできる事をやろう。