ライブ当日二人のおかげでぐっすり眠れた
多すぎもしなくて、少なすぎもしない頭も身体も軽いベストな睡眠
アルバイトは休ませてもらったので、今日一日はスケジュールに余裕がある
進行は完璧に頭に入っているし、機材のチェックも七夜と何度もした
不安要素は全部潰したというのに、緊張は全く収まらない
今からでもこの控室に七夜を呼んで手を握ってもらいたいくらいだ
「ヤバいヤバい、怖い怖い助けて七夜……」
残念ながら七夜はかぐやのチャンネルのメンバーではないのでこの場にはいない、いや現実の配信部屋になら、隣にいるんだが、警備モニターとにらめっこ中なので、声を掛けるのは申し訳ない
あいつはなんとこのライブの警備主任となっていて、最前列の席よりも近くて、誰よりもライブをいい席で見られる位置にいるので助けには、来てくれない
「だらららら、蟹!だらららら、うさぎ!」
かぐやは謎の物真似ルーレットを見せつけて私の反応を待っている。元気一杯かよ
緊張しまくっている今の私にどんな反応を期待しているのだろうか
「はいはい、可愛い可愛い」
適当にかぐやをいなしていると
「だらららら、どじょう!」
ヤチヨが謎のポーズでポンっと出現した
「うわ、ビックリした!」
登場とどじょうをかけたギャグなのだろうか…………推せる!推してるけど!
「あ、ヤチヨだ!おつ~」
おい言葉遣いマジで
「おつ~☆」
あ、良いんだ
「ねぇねぇ~彩葉~練習しすぎてお腹すいた~終わったらパンケーキ食べよ?」
今に分かった事じゃないが本当に大物だ
私は、七夜が中華粥を作ってくれなかったら何も食べられなかった
おかげでキリキリしそうな胃を癒してくれた
「パンケーキいいなぁ~ヤチヨも食べたいなぁ~」
「一緒に食べる?」
「ぁ…………よよよよ…ヤチヨは電子の歌姫なので食べられないのです…」
「えー、それ何の拷問?かぐやだったら絶対無理!」
だろうな作るのも食べるのも大好きなかぐやにとっては、絶食生活なんて、絶望以外の何物でもないだろう
「ヤチヨ可哀想…………あ!確か七夜がえっと…何だっけ?味覚再生エンジン?ってのを組んでるからその内食べられるかも!」
「…………それは……楽しみだねぇ…うん…でも大丈夫ヤチヨはキラキラを食べて生きていけるから」
キラキラとは?
「ツクヨミに集まってくれた人達みーんなのキラキラだよ☆それを見るのがヤチヨは何より大好物なのです☆」
「そっか。じゃあこれあげる」
かぐやがそう言いながら差し出したのは、電柱から出てきた時からずっと身に着けていた銀のブレスレット
「こらこら。そういうのはもーっと大切な人にあげるものなんだよ☆」
「ほへ~」
『各所準備OKです』
舞台監督からのメッセージが空間に表示された
七夜からも
『不審者及び不埒者無し、並びに設備等に不具合無し。楽しんで』
とメッセージ
「いざ、ゆこうか」
そう言ったそう言ったヤチヨの顔は、歌姫の物に切り替わっていた
「ヤオヨロ~☆皆生きるのはどうですか?良い事あった?それとも泣いちゃいそう?よしよし、全部大丈夫。どんな孤独な道のりでも、楽しかったなーって記憶が足元を照らすよ。この時間も忘れられない思い出にしたいから………どうか一緒に踊ってくれる?」
ヤチヨの誘いが地鳴りのような大歓声をもたらす
そしてステージにリズムが刻まれてる
「世界で一番お姫様♪そういう扱い心得て~…………よね♡」
一曲目は「ワールドイズマイン」
電子の歌姫たるヤチヨと我儘お姫様のかぐやによく似合う曲だった
ライブだからこそできるイントネーションの変更された歌いだしと共に会場の熱気は最高潮に達した
その熱気を観客席より少し上、ライブをだれよりも近くで見ることの出来る場所で俺は飛んでいた
俺のアバターのドラゴン山伏ではなく赤いオーブとなってではあるが。
俺の役割はライブの熱気に浮かされてステージに上がろうとする愚か者の排除だが正直な話この規模のライブでやらかす輩はいくら何でもいないだろう
つまりは一番いい席でライブを見れるという訳だ。もちろん警戒は怠らないし俺の視界には三人が歌っているステージの他にも縮小化された画面がいくつも表示されて監視をしていた
ステージでは数万人が観覧しているとは思えないドタバタが繰り広げられていた
曲の合間にヤチヨが彩葉の右側にピタリと密着して彩葉が顔を真っ赤にしてショートしかける
「それ私の!!返して~!」
かぐやが頬を膨らませながら左側から彩葉を引っ張って引きはがそうとするが指でも滑ったのかひっくり返り、ステージに寝転がる。そしてぴぃぴぃ泣く
その様子を見てヤチヨがカラカラ笑い、そして手元でステージの演出を変える
「世界で一番お姫様♪」
かぐやが寝転がったまま歌う
曲は進み、サビのラスト
「ヘイベイビー」
「!?」
彩葉のキラーフレーズに危うくログアウトしかけた……
次の曲は新曲。曲名は「Ex-Otogibanashi」
「今は誰もが知る物語♪」
月からやってきたかぐやによく似合う歌いだし
それに続くフレーズもハッピーエンドが大好きなかぐやらしい
「誰かの書いた物語じゃない♪」
一度きりの人生誰かに自分の物語を書かせない自分で書きたい
終わりを恐れるんじゃなくて、今を見る
懐かしいようで初めての様なそんな今を愛する
きっと俺は、この景色を生涯忘れないだろう
そして何度も何度も思い出すだろう
辛い時でも、幸せな時でも目を閉じて思いを馳せるだけで耳の奥でこの歌を聞けるだろう
そんな心に…………いや…魂に刻み込まれるようなそんな歌だった
ライブが終わった
私のすべてを出し切った
高揚感で心拍は早いし、息も少し荒い
ステージから見えるサイリウムの光がまるで星のようで、【ツクヨミ】の夜空と合わせると銀河の中にいるようだった
「ヤチヨ、サイコー!」
「ヤチヨー!」
「かぐや結婚してくれー!」
「かぐやー愛してるぞー!」
歓声は止まない
余韻には些か熱すぎる熱が会場に渦巻いていた
「め~~っちゃ楽しかった!」
かぐやは興奮が潤んだ目で客席を見渡していた
「彩葉、七夜好き」
「え?」
かぐやは宙に浮かぶ赤いオーブに向かって手を振り、私に腕に抱きついた
かぐやと七夜を争うとなると勝ち目が…………ん?私も?
かぐやは計算高かったり子供っぽかったりするから
この好きが恋愛的な物なのか親愛的な物なのか分からないあるいは、親に向けるものなのかもしれない
「あ~、も~二人と結婚しようかなぁ」
え?七夜だけじゃなくて私とも結婚?
「ダメ?」
辞めろ辞めろ、その色っぽい顔をやめろダメって言えなくなるだろ
同性婚とか重婚とか法律とか倫理とか色々壁が…
「…………せ、生活費折半しなさいよ…………あと七夜にもちゃんと相談しなさいよ………」
「本当!」
お、お迎えが来るまで……
「七夜!かぐや達と結婚しよ!」
即断即決かよ
結婚の意味わかってんのこいつ
「七夜!かぐや達と結婚しよ!」
「あえ?」
彩葉と何かを話していたのは現実で薄っすら聞こえていたが、一体どんな脈絡なんだよ
ていうか結婚!?
「お、ま!?意味わかって!?」
「ダメ?」
「ダメって訳じゃ………い、彩葉はなんて……」
「七夜が良いならって!」
「いろはさん!?!?」
せめて告白はさせてください。マジで
というか、重婚じゃん
「ねえねえダメ?」
「…………せ、生活費折半だからな…………」
どうして…………どうして断れない…………
俺は女にだらしない塵屑です。生まれてきてゴメンナサイ……
「…………ん?」
視界に移る監視モニターにノイズが走る
異変は【ツクヨミ】だけではない
「あれ?ネット切れた?」
東京でも異変が広がっていく
「なんだこれ?月?」
何かにジャックされたようにあらゆるモニターに、スマホに満月が映し出される
人によっては温かい印象を持つかもしれないがその満月は何所までも無慈悲で冷たい
異変は広がる
「うお!?」
スマコンのAR状態の視界に頭が灯籠になった人影が横切る
異変は広がる
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「なんだこれ!?」
何かの数列が大量に表示される
会場は熱気のあった会場は新たなざわめきを生み出していた
そしていつの間にか空中に奇妙な人型が浮かんでいた
身体は真っ白で頭部にあたる部分が灯篭になった存在
今現在この会場で飛行が許可されているのは俺だけだ。明らかに異常事態だ
浮かんだ灯篭頭はステージの方へスライドするように移動して
「っ!?待て!」
即座にオーブ状態からアバターモードに切り替えてスロットから武器を抜き放ち、ブースターを吹かせてステージへと向かうが如何せん向こうの距離が近すぎる間に合わない
灯篭頭がかぐやの腕をつかんだ瞬間
かぐやの身体の力が抜け、まるで電源を切られたかのように膝から、がくりと崩れ落ちた
「かぐやになにをした!!!!」
かぐやの腕をつかんでいた腕を切り裂いてから反対側の手のチェーンソーを起動させて
灯篭頭を叩き潰すように振るう
グチャグチャと悍ましい音と真っ黒な血の様な液体をまき散らしながらバタバタと手足をあらぬ方向へ数舜動かした後、電気でも走ったかのようにピンっと体を引き攣らせ動かなくなった
此奴が何者か分からないが、少なくとも【ツクヨミ】のシステムで動いてない事だけは確かだ
「かぐ…!彩葉!かぐやを頼む!」
気付けば灯篭頭が他にも現れていて、囲まれていた
此奴らの正体なんて今はどうでもいい
とにかく、こいつらを殲滅する出来なくても、最低でも二人が逃げれれる時間を作る!
かぐやと彩葉の背後から近づいてきた二体の首を跳ね飛ばし、落とされた頭の片割れを蹴り次に近くにいた奴にぶつける
俺の背後の居た奴を股下から頭蓋まで切り上げて両断する
まだ二人に近づこうとする奴に左の武器を投擲してステージに身体を縫い抜ける
動きの止まったもう一体に飛び掛かり頭を叩き潰す
「彩葉!かぐやは!」
かぐやの方を見ると彩葉に支えられてはいるがその目に光はなく彩華の問いにも答えない
「ッ!…なんだ此奴ら!」
大半は潰したがそれでもあと数体残っている
此方を警戒してか怯えてかはわからないが迫ってこなくなった
削り切れはするだろうがこの場にいる奴らだけとも限らないので膠着状態になってしまった
「おいたはだめだよー」
ヤチヨが残った数体を薙ぎ払う
薙ぎ払われたうちの一体が起き上がり
「モウシワケゴザイマセン」
そんな言葉を残して俺が作った残骸と共に消えていった
ヤチヨが消したというよりも
「ヤチヨ…………今の奴らは一体…………」
「…………」
何で答えてくれないんだ
「今のは、一体?何が起こってしまうんだ?続報を待て!」
「なんだなんだ?」
「ヤチヨ、こういうの好きだからなぁ」
「演出なの?」
このまま演出として終わらせる気か?
「皆~今日は本当にありがとう~☆」
幕が下ろされ緊急で通信が切断され曲席とステージが分断される
「なあ……あいつらは……」
ヤチヨにもう一度問う
「うーん、バグじゃなさそうだし、やんちゃっ子の悪戯かにゃ~、調べとくよ☆」
噓をついているそれは直感で確信した
そしてその表情は何所か既視感があった
かぐやはステージに膝をついたままだった。うつろな目で一点を見つめていた
別世界をのぞいているように…………
何処かであった会話
「…喋る謎の生物…いやこの際少しでも腹が膨れるなら…」
「いーーやーーーー?!?!ここまで来て食べられるのは嫌ー!?かぐや美味しくないよ!?」
「味やらこの際気にせん」
「嫌ぁ!?離して!?えっと…えっと…そうだ!かぐや毒あるよ!食べたら死んじゃうよ!」
「飢え死によりマシな死に様じゃろうけぇ諦めて喰われろ」
「ギャァァァ!?助けてぇ!?七夜!?彩葉!?食べられるなら七夜が良いよぅ!?食べるなら彩葉が良いよぅ!………七夜にも食べられるなら…ウヘヘヘヘ…」
「…命乞いをした思うたら色ボケだしたでぇ…なんじゃこいつ…」
ここだけコソコソ小話ロングの予定だよ見たいのを選んでね☆
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七夜のツクヨミ初ログイン
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彩葉と七夜が友達になった話
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黙って両方書け!