超かぐや姫!~超人に脳を焼かれた廃人~   作:三流ゲーマー

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カランコエの浴衣はこの作品を作るのに最初設定を作って絶対にやりたかった事です


花火大会で

「和服良き~☆」

 

かぐやと彩葉はお揃いの髪飾りをつけてもらい、店の前にある大鏡の前に二人で並んでポーズをしていた

 

「なんか変じゃない?」

 

「いやいやめっちゃ似合ってる」

 

「…………本当?」

 

噓偽りの無い本音だ

事実、浴衣姿の彩葉に見とれて、数分思考が完全に停止しまった

かぐやに脇腹を突かれなければ、一時間でも停止していただろう

 

「何着ても似合うよ~!」

 

あ、めっちゃ照れてる

 

「な、七夜も似合ってるよ…」

 

「そ、そうか?」

 

「どうよ!かぐやちゃんのセ・ン・スは!」

 

小生意気な悪童(かぐや)の頭を撫で繰り回してやりたいがせっかくセットしてもらった髪が崩れてしまうのでしないが

 

「も、もう行こうぜ」

 

いつまで経っても出かけられそうになさそうなので早足で鏡から離れる

 


 

三人で行くので電車に乗って会場まで移動する

改札を抜けるまでは照れ臭かったが車内には何人か浴衣の子が居て安心した

それにかぐやと七夜の浴衣姿も見れて少々割得だった

 

「見て見て、彩葉、七夜!」

 

小さな子供の様に座席に膝を乗せて窓をのぞき込んでいるかぐや

 

「こら、かぐや行儀悪い」

 

私が注意しようとすると七夜が先に注意した

 

「すっごい、早い!うわ、ぶつかる怖っ!」

 

電車なんて、何度も乗っているはずなのに初めて乗った様な反応だった

今日は本当に元気だ

 

「駅に着くときには前を向いて座ってね、かぐや」

 

「あーい」

 

子供を連れ出す親の気持ちが少しわかった気がした

将来七夜との子供が…………

そこまで考えて手すりに頭をぶつけて思考を強制的に止める

 

「どうした?」

 

「にゃ、にゃんでもない!?」

 

「「?」」

 

七夜だけじゃなくてかぐやにまで怪訝な顔をされた

浮かれててるのは私もだった

恥ずかしすぎて爆発しそうだ

 


 

駅を出て会場まで歩くうちに俺達の他にも浴衣を着た人達がどんどん増えていった

その比率は当然だが女性が高い9対1くらいの割合だ下手するともっと比率が上がるが

 

「彩葉、七夜、こっちこっち!」

 

何度も俺達の方を振り返りながらかぐやが土手の階段を上る

 

「ちゃんと前を見て歩かないと危ないぞー」

 

「平気♪平気♪……わぁ!?」

 

前を見ずに階段を上っていたので注意をした途端に段差に足を取られて、階段を前のめりに落ちそうになったので、片手で手摺をもって落ちてくるかぐやを受け止める

 

「びびったぁ……七夜ありがと」

 

「気をつけなさいよ……何時までくっついてんの…離れなさい」

 

「やだ!」

 

何でもいいけど邪魔になるから階段を上りきろうよ……

 

「んで……始まるまでまだ時間があるけどどうする?」

 

「屋台!全部回る!」

 

いや無理だ

でもまあ時間の許す限りは屋台を回ることにした

まずは射的

 

「見て見て、銃ある銃!銃撃とう!」

 

銃言うのやめなさいね

 

「よっしゃー!当たったー!」

 

「ぬう…当たらん…銃が悪いなこれ……七夜もやってみなよ当たらないから」

 

「かぐやちゃんは当たったもんね~」

 

煽るな煽るな

彩葉に場所を譲って貰って空気銃を構える

銃の威力、銃身の歪み、景品の位置を計算して……

 

「七夜スゲー!全弾命中!」

 

五発の球で五つの景品を獲得できた。流石に小型の景品だけど

 

次は蟹釣り

彩葉は少し怖いらしいので見てるだけで、俺はこの手の生き物の屋台で取れた事が無いので、遊ぶのはかぐやだけだ

 

「二匹釣れた!」

 

「「すごいじゃん」」

 

「にへへ~見て見て指食べようとしてる」

 

指挟まれてるけど痛くないのかそれ……

 

「やっぱ、現実さいこー!」

 

「かわいそうだし他の人にぶつかるから振り回さない!」

 

蟹に入った小さな袋を振り回すかぐやを彩葉が叱る様子は、親子か年の離れた姉妹の様だった

実年齢を考えれば、ギリギリ親子でも成立はしそうだが

違うわ何考えてんだ

 

「次!次!次は何する!」

 

「もうすぐ花火始まるから遊ぶのはここまでだな」

 

「ヤバッ、ご飯買わないと!たこ焼きと焼きそばとカキ氷と唐揚げとじゃがバターに焼き鳥に牛串とフルーツ串ときゅうり串と…あとあの電球ドリンクも!」

 

「「本当に全部回る気か!」」

 

花火始まっちゃうって…………

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギリ間に合ったかな?」

 

三人の両手にたっぷりの戦利品を抱えてレジャーシートに腰を下ろした

結局殆ど全種類の屋台を巡ることになるとは…………

花火が始まりそうでヒヤヒヤした

 

「ひょえ~、楽しすぎー!」

 

こんなバタバタですらかぐやは楽しそうだが

 

「楽しキングダム!」

 

なんだそれ

かぐやは両手を高く空に掲げながら謎の国を建国した

 

「うぇ~い、彩葉真似っこ~」

 

彩葉がかぐやを真似て両手を高く空に掲げた

え、これ俺もやらなきゃダメな奴?

やらなきゃダメな奴か。かぐやも彩葉がもこっちをチラチラ見てるし…えーいこうなったら自棄だ!

 

「き、キングダム!」

 

そ、想像以上に恥ずかしいなこれ

 

「七夜も真似っこ!じゃあ次は皆で!」

 

「噓でしょ……」

 

「マジ……」

 

「マジ!じゃあ行くよーせーのっ!」

 

「「「楽しキングダム!」」」

 

「「「…………」」」

 

「「「アハハハハハハ!!」」」

 

ライブ以来三人で笑っていなかったのでほんの少しだけ内心に秘めたものが軽くなった

これから聞かなきゃならない事を聞く覚悟が決まった……筈なのに言葉が喉の奥に張り付いて出てこない

不格好に開いた口を誤魔化すようにきゅうり串を口に含み嚙み砕く

 

「ねえ、かぐや…………」

 

俺が言葉を出す前に彩葉が先に声を出した

人の顔色を窺う悪癖はいつまで経っても治らない

いつだって最初の一歩も最後の一歩も自分じゃ踏み出せない。本当に嫌になる

 

「ん?」

 

「………いつもの着けてるよね、それ」

 

「あー、なんか落ち着くんだー。故郷って感じ?」

 

「故郷……か……」

 

「うん」

 

「「「…………」」」

 

どうしても言葉が出てこない

小さな言葉以外は何も出てこない

何か言わなきゃダメなのに

言う事は決めたはずなのに

口も身体もまるで石膏の様に固まって動かない

愛しかった筈の沈黙も今は酷く重い

その沈黙を埋めるように花火大会決行の号砲が上がる

辺りが見物客の期待の声でざわつく

 

「はー、楽しキングダム最高だよねー」

 

何も言えない俺達の代わりかぐやが軽口を引き受けてくれた

話したくなるまで待つよ、そんな風に言ってくれるように

 

「月ってさあ、味も温度もなくてつまんないの。決められた役割をずーっと、繰り返すだけなんだよね」

 

「……NPCみたいだな」

 

「正しくそんな感じなんだー真似っこすら誰もしてくんなかったんだよね~。終わればまた始まり、始まればまた終わる。そのループを繰り返して、新しいお話なんて、いつになっても始まらない」

 

想像が全然できない

 

「そもそもそんなこと考えることがもう異常っていうかさ………かぐやだけ浮いてたんだー」

 

なんで……なんでそんな悲しいことを……そんな綺麗な顔で言うんだよ…

そんな時、周囲から歓声が湧いた

空気を切り裂く高音、光弾が筋を引いて空へ上る。そして、花火が弾けた

夜空に大きな花を煌めかせ、鼓膜をどんっと震わせる

 

「綺麗……」

 

そんな素直な感想がかぐやから漏れた

そして次々に花火が上り、夜空に花を咲かせる

 

「寂しいし、退屈。毎日繰り返し、退屈、死にそう。もうやだ。どっか行きたーい、って思ってたら、違う世界が見れる窓を見つけたの」

 

窓……SFでいう次元空間みたいなものなのだろうか

 

「窓から二人の世界を見たら、皆好き勝手に動いてて、複雑で、一回きりで自由に見えたの」

 

「「俺(私)達が?」」

 

「うん。こっちに来てわかった。皆抑えてもいるんだよね、自分の気持ち。多分、もっと大切な物のために」

 

なんだそりゃ、ついこの間までパンケーキとかカレーをねだって、ぴぃぴぃ泣いてたのに

あれはどのくらい前だっけ。一か月だっけ?三週間だっけ?もっと最近だっけ

かぐやの成長が嬉しい筈なのにどこか怖くて、どこか悲しくて

 

「「なに(なんだよ)、大人じゃーん?」」

 

彩葉と茶化すように出た言葉が重なる

 

「にへへ、二人の真似~」

 

気を悪くした様子もなく微笑むと

 

「ねえ、二人に一個聞いていい?」

 

「「何?」」

 

「彩葉はお母さん、七夜は家族のこと好き?」

 

かぐやは笑顔を崩さないままにそう尋ねた

多分これはかぐやの中で重要な確認なのだろうと直感した

 

「「好き……好き、か?」」

 

ずっと家族(あの人達)の事を考えてきたがシンプルに言葉には出来ない

 

「「…………どうだろう、わかんないな」」

 

また言葉が重なってつくづく思う俺と彩葉は似ていると思う

 

父さんも母さんも沢山の人の命を救う凄い人達だし

天夜兄さんも大勢の人に夢を叶える人だ

白夜兄さんだっていろんな人を魅了することが出来るし

夜花も周囲を自分を魅せる花にする事も、誰かを魅せる花になることも出来る

皆尊敬してるし、大好きだった

家族(みんな)みたいな特別が欲しくて

夜花(あの子)が生まれた時この子を守りたいって思って

でもどんなに頑張っても特別にはなれなくて

夜花(あの子)は俺よりも特別を持ってて

先生は俺じゃなくて天夜兄さん(あの人)を見てて

友達だと思ってた人は俺じゃなくて夜花(あの子)を見てて

好きだった人は七夜()なんか見てなくて

それでも特別が欲しくて、誰かの特別になりたくて

あれもこれも詰め込んで認められなくて、誰も俺を見てくれなくて

俺を見る目が気持ち悪くなりだして

現実から逃げ出してゲームにのめり込んで、今まで出来た事も出来なくなって

それを責められて、癇癪を起して

そして自分が守られていたことにも気づかずに、また逃げ出して

自分が特別どころか、何者でもないと思い知って

複雑なドロドロが自分の深い所にこびりついてて

 

「そう…だな、家族の事で嫌な事もあったし、嫌な思いも沢山した。嫌いになれたら、憎めたらもっと楽だったと思うよ」

 

「……私も同じかな嫌いになれたらって何度も思ったよ」

 

「「…………」」

 

俺達の沈黙をかき消すように花火の音が響く

光の花束の様に連続で無数の小玉が弾ける

家族(あの人達)なんて知らない、貶めてやるなんて考えられたどれ程楽だったろう

 

「そんなん、二人共余計に可哀そうじゃん~」

 

かぐやの目に涙の膜が張って、花火の光を僅かに反射してキラキラと光る

可哀そうか、今まで考えたこともなかったし

事情を知らない人から言われた腹を立てたかもしれないが

そのかぐやの言葉が、染みる

可哀そうだったのかもしれないな…………

 

「「「…………」」」

 

「彩葉も七夜もごめんね、あの時」

 

あの時?何の事だろう

 

「お母さんのこと、家族の事おかしいって言っちゃって」

 

あぁ、その事か……

 

「てか、二人共怒ってよかったのに。かぐやにはわかんないって言いたかたっしょ」

 

違うよ言いたくなかったんだよ

そう言いたいのにやっぱり俺の口も舌も動いてくれなくて

 

「違うよ、言いたかったんじゃない…………言いたくなかったの………七夜もそうでしょ…………」

 

彩葉(きみ)は強いね

俺が強いのはやっぱり【ツクヨミ】(むこう)だけだ

彩葉の言葉に答えを返すことは出来ず僅かに頷くことしか出来ないのが我ながら忌々しい

 

「そっか……」

 

かぐやが俺と彩葉の手にそれぞれ手を重ねてくれた

俺はかぐやの指に自分の指を絡めるように握る

離れないように、離さないように

ほんの少し前まではこの手全部が俺の手の中に納まるくらい小さかったのに

初めて会った時は小さくてフワフワだったのに、いつの間にこんなに大きく、強くなったんだろう

 

「なあ…かぐや」

 

「うん?」

 

「か、ぐや…」

 

「うん……」

 

もうちょっとだけ、あともう少しだけ頑張れ

 

「帰っちゃうの、か」

 

「うん」

 

あっさりと頷いたかぐや

確信はしてた、でも信じたくなくて、聞きたくて(聞きたくなくて)

なんでも無いように、明日の夕飯でも答えるようにあっさりと答えたかぐや

 

「いやー、月の仕事放り出して来ちゃってさ。強制送還的な?あはは…」

 

空にか様々な花火が上がる

ハート、土星、笑顔の絵文字

ユニークで自由で、消えていく残滓がどこか寂しくて

 

「…………かぐやはかぐや姫だったみたい」

 

絞り出すような笑顔

眼の淵に涙が溜る、その涙を打ち上がった花火の光が輝かせる

綺麗で、愛おしくて、寂しそうで、悲しそうな顔だった

 

「次の満月にお迎えが来る」

 

2030年9月12日

次の満月の日

分かっていた筈なのに

そのタイムリミットが確認できていた筈なのに

それを聞いて心臓が嫌な心音を奏でる

 

「お迎えって、うちに来るの?」

 

「ううん、多分ツクヨミに来る。仮想の世界って月ととても強いから。あそこなら船を飛ばさなくても簡単に干渉出来るみたい……」

 

彩葉の問いかけにかぐやが少しだけ声を震わせながら答えた

やっぱりあいつらは月から来た存在だった

様々なハッカー集団が、国がツクヨミを掌握しようと何度も攻撃をしてもなお破ることの出来なかった強固な防壁を簡単に破るような連中だ

納得と言えば納得だ

かぐやは気付いていたのかな

いや、思い出したが正しいだろう

あの灯篭頭に腕を掴まれたあの時に

絡めた手に力がこもる

 

「逃げればいいじゃん……何度だって……」

 

「え?」

 

「お前はかぐや姫じゃない。もっと無茶苦茶で…!ハチャメチャで!おとぎ話とは違う!」

 

あの程度の奴ら何度だって切り刻んでやる、何度だって追い払ってやる

なんで……なんで……

助けてって、守ってって言ってくれないんだよ……!

子供みたいに泣いて、喚いて、暴れて………

それが、それがかぐやじゃん

かぐやの手を握って無い方の手を皮が裂け血が滲むほど強く握る

手よりもずっと、ずっと胸が痛い

 

「そんな無茶苦茶かぐや姫にもお迎えが来ましたが、最後の日までめちゃくちゃ楽しく過ごしましたとさ♪って、そーゆーのがいいもん☆」

 

いつの間にそんなに大人になったんだよ……

 

「それにいっぱい楽しんだんだもん。いっぱい遊んだんだもん……だから……だから、これが私のエンディング!チョー楽しく運命に向かって走ってくの!」

 

いつか俺達が言った

 

『受け入れて覚悟するしか、ない』

 

『物事はぜーんぶ決まってるんだよ』

 

そんなセリフをそんな顔(綺麗な顔)で言われたら何も言えないじゃないか

目に涙が溜まって、視界が霞む

 

「そんな顔しないでよ……そりゃあ、本当はさもっともっと彩葉と歌いたいし、七夜にも色んな所連れって欲しいよ…………ライブ……お迎え来る日ライブしたいな派手に!」

 

連続で花火が上る

 

「うおおお、腹に響く!煙の匂い!いいなー」

 

かぐやは花火に負けないくらいはじけるような笑顔を咲かせる

 

 

それから俺達は花火が終わるまで

周りに誰もいなくなるまで

三人だけになるまで

聞こえる音が川のせせらぎと少し早い虫の声だけになるまで

 

「もう、おうちに帰らなきゃ……帰れなくなっちゃう」

 

そうかぐやが静かに言うまで

互いの手を握っていた

 

それがかぐやの願いなら送り出してやらなきゃならない

そう思えば思うほどに胸が強く締め付けられた

行かないで、帰らないでそう言いたかった筈なのに何も言えなくて

ここだけコソコソ小話ロングの予定だよ見たいのを選んでね☆

  • 七夜のツクヨミ初ログイン
  • 彩葉と七夜が友達になった話
  • 黙って両方書け!
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