ライブを待たずに9月12日になった瞬間かぐやが消えてしまうのではと彩葉と不安になっていたが
いつも通りの朝が来た
「二人共、おっはよー」
かぐやは俺達の不安なんて知らぬ存ぜぬといった様子でいつも通り可愛らしい笑顔で起きてきた
「はい、二三番かぐや!ここ十五年で最高の出来栄え!」
「いや、生まれて一年も経ってないだろ」
いつもの美味しいご飯
いつものギャグ
「ふふ~ん♪ふんふんふ~~ん♪ラララ~♪」
配信部屋で鼻歌交じりにライブの準備を始める
機嫌がいいのか鼻歌では我慢出来ずしまいには歌い出した
これで最後にするつもりなんて、さらさらないが
かぐやが帰るつもりなのなら俺達がやっているのは…………
「……は?」
「…え?」
ほんの一瞬目を離しただけなのにかぐやが消えていた
強烈な寒気と吐き気が襲ってきた
おい、噓だろ…噓だと言ってくれよ
「「かぐや!」」
「何?」
机の下から、にょきっとかぐやが出てきた
居るのかよビックリさせんな
「なにやってんの?」
「んあ?これ落ちたから拾ってた」
かぐやはそう答えながらいつも付けているブレスレットを人差し指に引っ掛けながらくるくると回していた
「「脅かさないで」」
「二人共心配性~はい彩葉これあげる」
かぐやはそう言って拾ったばかりのブレスレットを彩葉に渡した
「ヤチヨが言ってたんだ。こういうのは大切な人にあげなさいってだから、彩葉に!」
「…………ありがと」
「七夜にもあげたいものあるんだー♡」
あ、すっごい嫌な予感。かぐやがこういう甘ったれた声を出す時は大概碌でもない
「七夜にあげるのはかぐやちゃんのふぁーすときっすでーす♡」
「てい」
「あ痛!?」
ニタニタとした顔にイラッとしたので強めにデコピンをくれてやる
雰囲気とかムードとかシリアスもあったかもだけどその顔で台無しだよ
「ったく…」
マセガキ悪童かぐやめ
「「「せーのっ」」」
三人で手を繋いでツクヨミに潜った
ライブ会場の控え室で彩葉と二人で本番が始まるのを待っていた
今頃かぐやは
ヤチヨに連れられて特設された「KASSEN」フィールドに驚いていることだろう
彩葉がヤチヨに頼んで作ってもらったらしいステージだ
黒鬼とのKASSENの時は俺はかぐやを守る戦いに参加できなかったが今回は違う
「ただいまー☆」
ぽんっとヤチヨが急に現れた
いい加減このいきなりの登場にも慣れたので驚きはしない
「お帰りかぐやはどうだった?」
「喜んでたよ。燃えるーってさ」
「かぐやらしいなあ。ありがとう、ヤチヨ」
「どういたしましての板挟み~☆」
ヤチヨがとびっきりの笑顔でウインクと共に空間に星を飛ばした
「「もし私(俺)がヤチヨだったら、かぐやは帰りたくないって言ってくれたのかな」」
思わずこぼれてしまった疑問が彩葉と重なる
「「ゴメン、(わけわかんないよね)意味わかんないよな。忘れてく(れ)」」
「え…………」
ヤチヨが目を見開き固まった。だがヤチヨの瞳だけが僅かに揺れ動いていた
今にわかった事じゃないがヤチヨは本当にAIなのだろうか
「ううん、そんなことないよ。ただ、びっくりしただけ……皆…両想い、だったんだね…」
ヤチヨの言ってる意味はさっぱりわからないがヤチヨなりの世界があるのだろう
『各所、準備OKです』
いつかのライブの様に開始メッセージが表示される。前は送る側だったな
「じゃあ、始めようか…………ごめんね、ヤッチョはここから先には行けないことになってるんだ」
「そっか…」
驚きは特にない元々はるか遠くの存在だったのだどのような事情でも不思議はない
強引に言語化するならばお迎えの奴らの無茶苦茶を止める為だろうか
あるいは
「そういう運命だから?」
ヤチヨが時々する言い回しを真似てみる
「………寒」
彩葉やめて自覚はあるから
「二人なら……大丈夫!」
ヤチヨはガッツポーズをしながらそんな言葉を言った
無責任だけど前向きなかぐやが好きそうなノリだな
でもまあ…空元気くらいにはなった
さあ出陣だ
『何という急展開!突如としてツクヨミに現れたフリーダム、超新星かぐやの卒業ライブ!泣いてる場合じゃないぞ、最後のファンサだ!目に焼き付けろ』
かぐや推しを公言しているオタ公が涙声混じりの怒鳴り声をマイクに叩きこんでいた
その怒鳴り声に負けないくらいの歓声がこの特設ステージに地鳴りの様に響き渡っていた
そして、ツクヨミの住人の興奮が最高潮に達したた時、ステージにスポットライトが灯された
「みんな、ありがとー!」
登場したのは今日の主役のかぐや姫だ
「今日でお別れみたいなんだけど、悲しくはしたくないんだ!みんなでお見送りしてハッピーに卒業させて!」
空に無数の花が咲きその花弁が弾けて異形の存在へと変わる
何も知らない観客たちはそれらを拍手と歓声で迎え入れた
演出だと思ってくれてるなら好都合
姫を攫い笑顔を奪おうとする月人どもよ覚悟しろ
「さあ、盛り上げていこうぜ!」
「………勝つだけだ」
「けっこう面白そうじゃん」
帝率いるブラックオニキスと
「「…………」」
何時か否定した翁コンビのいろPこと酒寄彩葉と
NANAYAこと西尾七夜
枚数には不安は残るが此方が出せる最強戦力だ
『鬼あちー!かつて鎬を削った黒鬼が!かぐやを守ったNANAYAがかぐやのライブに駆けつけたぞ!』
スペシャルゲストの登場に会場のボルテージはさらに上がる
「ライブの余興だと思ってよ私たちはわたしたちで精一杯やるから。万が一かっ…にゅ!なにすんのよ!」
彩葉の頬をついて言葉を止める
「万が一じゃない。絶対勝つさ」
「………うん」
ほんの少しだけ現実に戻りかぐやの手を握る
「彩葉…七夜…」
俺と彩葉はかぐやの手を握り指を絡めて笑いかける
「そっか……みんな自由だ!」
向日葵のような笑顔でかぐやはそう言った
ツクヨミに戻ると
「妹借りるぜ」
「あ、はい」
なんか有無を言わせない声のトーンだった
彩葉が連れていかれてポツンと立ち尽くしてしまった
かぐやのこと以上に俺が入り込めない絆が二人にはあるんだろう
ちょっぴりジェラシー別にいいけど
彩葉が戻ってこないまま奴らの侵略は始まった
出来る限り恐怖するように無駄にチェーンソーをふかして攻撃したり
首を撥ね飛ばす
飛び散るのは花弁、奴らは一応ツクヨミのシステムで動いているようだ
「■■■■!」
「うるさい」
まとわりついてくるミニオンを引き潰すがルーチンが変化した様子は無い
雑魚を何匹潰したところではやっぱり変化は無いか…………なら
「■■■■■■!!?」
血の代わりの大量の花弁が散る
僅かにミニオンの動きが鈍った
出来る限りデカブツ達をいたぶってから
また大会出禁が加速しそうだ
でもそんなものどうでもいい
「もっと衝動的な音でーーもっと感情的な歌で」
ステージからかぐやの歌声が届く
あんまりこっち見ないでくれよかかぐや
かぐやの見てた楽しそうな人間とは違うかも知れないからさ
頭のどこかではあんな連中に勝てるわけないそんな考えがある
それでもかぐやの歌を聴きながら戦っていると不思議と力が湧いてくる
踊り子にしては幾分か過激ではあるが
「バットエンドなんてお断りだ!」
いったい何匹
現状は雷と乃依が一つづつ残機を使ってやや押され気味
「■■■■■■!?」
花弁が飛び散ってリスポーンした時僅かばかりミニオン達の動きが鈍る
が、キリがないミニオンは無数に湧き続ける
KASSENプレイヤーの中でもトップの落とされなさを誇っている雷が最初にやられた
無数のミニオン達に埋もれるように、軍隊蟻に群がられるように、削り切られた
「………すまん」
だが、最後の残機を使い果たす直前に三体の月人達の残機を一つづつ道連れに自爆した
おかげで
本当あの人はただでは落とされないな前に戦った時も完勝から六対四にまであの人一人で持って行かれた
総合値なら圧倒的に帝が上だが得意分野なら雷も乃依も帝を封殺できる
我ながらよく三対一で勝ったな
「………ゴメン」
乃依が超遠距離狙撃で打ち抜かれて残機を使い果たした
それに段々奴らの反応速度が上がってきた
「■■■■■■!!!」
「マジか…とっておき出す前に二人が落とされんのか…」
クッソ…わかっちゃいたがキッツイ相手やな…
相手も落とせちゃいるが落とすたびに反応が早くなってる
俺も彩葉も
一ゲーマーとしてもライバーとしても
これまで積み上げてきたものも全部壊しかねないものだ
ブラックオニキスは夢を見せなきゃなんないのにな
本当何やってんだかなあ…
俺の我儘に乃依も雷も巻き込んでさ
でもな…
母さんみたいになろうとしたあいつが
心の奥底から誰かに助けを求めたんだ
だったら
「頼むぜ…乃依、雷」
「…心得た」
「……ハイハイ」
空間が大きく歪む。目の前に赤い無数の警告文が現れる
【cheat detection!!】
「チートモードだあ!たった今、ブラックオニキスの帝アキラ、乃依、雷、続いてチートモードの使用が確認されました!」
「マジ…か…………」
オタ公の怒鳴り声が聞こえてきた
プロとしての信頼全部を賭けてくれたのか
勝っても負けてもブラックオニキスは強いバッシングを受けることだろう
それでもかぐやの為に戦ってくれている
絶対に勝たなきゃな……
「■■■■■■!?」
訳の分からない言語の悲鳴もいい加減聞き飽きてきた
「さっさとくたばれ!」
反応速度が上がるってことはその分本体にに近づくということだ
目的を果たすのに都合がいい
まだ対応出来る速度だ
まだ戦える
ブラックオニキスが不正コードで何時アカウントがBANになるかもわからない
あとどれぐらい戦えるのだろうか…………
ここだけコソコソ小話ロングの予定だよ見たいのを選んでね☆
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黙って両方書け!