Amazonで注文が間に合いますた
意識がクリアになった。
そこは変わらず特設会場だったが、月人も観客もかぐやも彩葉もブラックオニキス達も居ない
ただ1人で特設会場に俺は居た。ボロボロだった筈の身体には欠損した箇所は無い、それどころか傷ひとつない
意識は取り戻したがどこか頭がふわふわする。まるで覚めかけの夢の様に
風の音も、松明が燃える音すらしない無音でもあった
本当に無音なのかはたまた、聴力が完全に失われたのか分からない
「あーあー」
試しに声を出してみる。問題なく聞こえる
……自分の声は聴力が失われても聴こえるんだっけ?
「…俺のことはどうでもいいんだよ…かぐやは…アイツらはどうなったんだ?ていうかここツクヨミだよな…ログアウト出来ないんだけど…え…死んだ?何ここ死後の世界だったりする?」
勝ったにしろ負けたにしろ今この状況は異常だ
「かぐやー!いろPー!ヤチヨー!帝ー!雷ー!乃ー在!」
あのライブ会場に居た人物や管理人の名を読んでみるが静まり返った空間にその声は消えていった
頭をガシガシと掻きながらどうしたもんかと考えていると何かの気配を感じて振り返ると黒いモヤの塊があった
それはいつの間にか人の形が形成されてであろう箇所には赤く光る二つの眼の様なものまで形成された
「汝、世界を滅ぼす覚悟あるや?」
「は?」
知ってる様な知らない様な声が聞こえてきた。アイツが喋ったのか?
と言うか世界を滅ぼす覚悟?何のことだ?
「汝、愛する者が為輪廻を砕き世界を滅ぼす覚悟あるや?」
再び声がした
だがトーンは変わらないのにその声を聞いた途端に周囲の重力が増したかの様に空間が重くなる
「何のことなん…!?」
人型のモヤがいきなり飛びかかってきた
そのモヤの腕にはいつの間にか一対の大剣の様な物が握られていた
驚いて後ろに飛び退いたお陰で袈裟斬りにされることは避けれたが肩口を浅く裂かれた
「ッイ!?」
裂かれた箇所はまるで熱した鉄を押し当てられた様な熱さで思わず手で押さえると、何かぬるりとした感触が走って、掌を見ると
「…は?」
赤黒くてヌルヌルしていた。そして鉄の様な臭いが鼻腔を突く…これは…血だ
ありえないここはツクヨミの筈だ嗅覚も痛覚存在しない筈だ
じゃあ夢?
肩に走る痛みがそれを否定する
なら現実?
それこそありえない現実であんな動きは俺には出来ない
じゃあ此処は?
「…此処は現実と空想、創造と破壊、輪廻と時間の狭間。仮想は現実へ、現実は仮想へ、未来は過去へ、過去は未来へと変わる。三度問う、汝、己が理想が為に世界を、輪廻を、過去を、未来を、今を滅ぼす覚悟あるや?」
モヤの後ろにそれは現れた
――空間が、裂ける
耳を塞いでも意味は無かった
それは音ではない
世界そのものが軋み、悲鳴を上げているのだ
目の前の景色が歪む
否、“歪んでいたものを、人間の脳が無理矢理まっすぐ認識していただけ”なのだと理解してしまう
空間の裂け目の奥
そこには無数の光があった
星にも見える。瞳にも見える
泡立つ細胞にも、銀河にも見える
それらは脈動し、膨張し、収縮しながら、過去と未来を同時に撒き散らしていた
一つの光球の中で文明が生まれ、滅びる
一つの光球の中で文明が生まれ、滅びる
自身の死すら、その内部では既に“終わった出来事”として漂っている
理解した瞬間、脳が焼け付く
それは生物ではない
神ですらない
時間
空間
因果
次元
あらゆる法則の外側に存在し、それら全てを繋ぐ原初の“門”
ヨグ=ソトース
その名を認識した瞬間、俺は悟った
これと対峙するという行為そのものが、蟻が宇宙の終焉に抗うに等しいのだと。
そして
無数の光の中心
そこにあった“何か”が、ゆっくりと俺へ向けられる
視線
ただそれだけで、魂が凍り付く
逃げ場など存在しない
世界のどこへ逃れようと、この存在は“そこ”に居る。
扉の向こうに
闇の奥に
過去に
未来に
「あ、あ、あ、あ、あ、あ…………」
それを見た…見てしまった瞬間それが何か完全に理解した理解してしまった
自分の中の絶対に削れてはいけない何かが削られる感覚
俺なんかじゃ…いや人間ごときがどうこう出来る存在では無い
月人たちが10倍居たところで毛ほどの戦力にすらならない
呼吸が出来ない
…呼吸ってなんだっけ?
苦しい
声ですら無い喉の奥から漏れ出した空気が出るだけで悲鳴もあげられない
悲鳴ってなんだ?
そもそも俺は何だ?
意識が薄れていく空間に溶け出す様に
もう目を閉じてしまおうか…きっと悪い夢だ
…夢ってなんだっけ?
意識だけじゃ無くて記憶も溶けていく
僅かな浮遊感、そして衝撃…どうやら足が崩れた様だった
「七夜~♡かぐやと遊んで~」
「もう…かぐやをあんまり甘やかさないでって言ってるでしょ…」
誰かの声がする。誰の声だろう。甘くて、暖かくて、愛しくて
「七夜」
「七夜」
「ッガッハ!?」
何を忘れそうになった
大切な人
大好きな人
愛しい人
忘れたく無い人
忘れちゃ駄目な人
正常に呼吸が出来るようになった
空になった肺に新鮮な空気が送り込まれ、溶けかけていた意識と記憶が急速に浮上する
「彩葉…かぐや…」
大切な人達の名を呼ぶ
「俺は七夜…西尾七夜…だ…」
そして、自分自身の名を口にする
崩れかけていた身体が再構築される
荒い呼吸
這いつくばる様な姿勢
格好なんてついたもんじゃ無いがどうにか自己だけは取り戻した
「…問おう…汝、己が愛が為に世界を滅ぼす覚悟あるや?」
何度目かの同じ問
相変わらず意味はさっぱり分からない…でも…はっきり言える
「…2人と…大切な人と…大切な時間を過ごせるのなら…!」
震えは止まらないアレを見るだけでまた心が折れそうだでも
此処で折れたらもう絶対に会えないそんな確信が何故かあった
2人に会いたい
2人の声が聞きたい
2人に触れたい
だから此処を奮い立たせろ
だから前を見ろ
だから立て
「…フ」
モヤが笑った気がした
それは嘲笑では無い。何処か安心した様な笑いだった気がする
「なればその資格を我に示せ」
モヤが武器を構える
「…!」
いつの間にか俺の手にはいつもの武器
スチームパンクデザインのチェーンソー型の大剣が2本
冷たい鋼の感触は初めて味わう筈なのにずっと昔から握ってきた様で
手に吸い付く様に馴染んだ
何度か振るう
ずっしりとした重みだが安心を覚える
これを持って戦えば誰が相手であっても負ける事はないと言う根拠の無い自信が湧いてくる
足の震えが止まった
モヤが空間に手を振ると見慣れたUIが現れた
NANAYA vs 七夜
デザインは大分禍々しくなってはいるが間違いなくSETSUNAのUI
向こうのキャラネームは文字化けしているせいで読めない
ヨグ何某じゃないのか?いやマジでどうでも良いが
試合開始前の長いカウントダウンが始まった
これはゲームの皮を被っちゃいるが遊びじゃ無い
本気の殺し合いだ
ゲーマーじゃ無くても軽く口にする様な「殺す」なんて言葉が今は本気の言葉だ
本気の殺し合いなんて現代社会に生きていればありえないことだが事実として此処にある
このモヤを俺は……殺す
カウントが進む
「ゼアァァ!!」
「……………」
「ハァ…ハァ…ハァ」
いったい何合打ち合ったろうか
打ち合うという表現があっているか怪しい
向こうからは一切攻め込んでこない
まるで俺の攻撃全てどの位置からどの角度でどの強さどんな速度で来るのか理解しているような未来予知なんて言葉じゃ生温い
弄ぶかのように避けられ、流され、弾かれる
それに、チョーカーを使おうにも、うんともすんとも言わない
「強…い…」
間違いなくこれまで戦って来た相手の誰よりも
「…今更だけどさ…負けたらどうなる訳?」
空元気代わりに軽口を叩いてみるまぁ答えてくれる訳…
「死ぬ」
でしょうね…………
そんでそこじゃ無い
「………お前のみが存在しない輪廻として再編される」
ずっと言ってる輪廻って何なんだ
再編される…ゲームオタク的に考えてみるなら俺が居ない並行世界が正しい世界として固定されるって事なのか?全然ピンとこないんだが…
空中に浮ぶ何かが蠢ききらめいて、謎の言語でモヤに指示のようなものを出した
「ッチ…」
モヤはイラついたように舌打ちをした
やべー…エタりそう…
ここだけコソコソ小話ロングの予定だよ見たいのを選んでね☆
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黙って両方書け!