蛇足物語 作:ロバと子いぬ
愚痴りますね? あのね、黒鬼との『KASSEN』の残機情報がわからなすぎる。どこで黒鬼の残機減った? そもそも残機3って何? 描写的に復活回数3回なの? 様々な疑問が浮かびました。
この小説はかなり『KASSEN』描写を勝手に補完してるので、そこを拾わないわけにもいかず、本当に辛いです。助けてください。
一戦目は黒鬼が
「かぐや・いろPも悪くな〜い! でも、黒鬼強スンギwww」
「コメンテーターのヘビノブさん、かぐや・いろPのコーチとしてこの展開はどうお考えでしょうか?」
「そうですね。まみまみさんが倒れたので全部が全部なわけではないですが、
そう、強気にコメントしてみる。実際はもう少し戦えると思っていたが、いろPもティルってるし、ヤチヨも少々焦りが見えたし、まだ本調子じゃないところもあるのだろう。黒鬼のおかげで大舞台にもなってるしな。緊張もするだろう。
「おーっと! かぐや・いろPチームとしては想定通りと言うことですね! ここからの巻き返しに期待です!」
「それでは第二戦、開始です!」
法螺貝が再び鳴り響き、両陣営が自陣から飛び出していく。
「黒鬼、当たり前のようにトライデント継続です!」
マップ上の最初の陣形は両チーム一戦目と同様だ。黒鬼はトップにアキラ、ミドルに雷、ボトムに乃依。かぐや・いろPチームはトップにかぐやちゃんといろP、ボトムにヤチヨだ。一見して先ほどと同じ展開だが……。
最初に接敵したのはアキラといろPだ。奇襲気味にいろPがアキラへと攻撃を加える。かぐやちゃんの姿は側にはない。マップ上では同じ地点にいるにも関わらずだ。
少し遅れてボトムレーンも接敵、と言うよりヤチヨが乃依に一方的に撃たれ始めた形か。
トップでは先ほどよりかはいくらか動きがマシになったいろPとアキラが打ち合っている。マシにはなったが、まだまだアキラの方が優勢だ。だが、不意打ちを警戒してか攻めきれていない。
痺れを切らしたアキラがいろPに問いかける。
『かぐや姫は?』
『月に帰ったよ』
いろPも軽口で返す。マップが嘘をつくことはないので、アキラは戸惑っていることだろう。
『ハンマー職に隠密スキルはないはず……いや、上か!』
気づいたアキラが上を見る。上空にはレプトケファルスというアナゴやウナギの幼生を大きくした生物が浮かんでいる。『SENGOKU』のMAPの中立モブだ。その上に、かぐやちゃんは乗っていた。
アキラに気づかれた瞬間、かぐやちゃんがハンマーのジェットを利用してボトムレーンへ飛んでいく。豪快なガンクだ。
『一定より高い高度だと降りるのに時間がかかる代わりにミニオンから攻撃されない』と言うのを発見したのはかぐやちゃんだった。『SENGOKU』メインじゃないとはいえ俺も知らなかったが、中立モブのレプトケファルスが攻撃されていないことから当然でもあった。まぁそれがわかったとて、どうやってそこまで上がるかが問題ではあったのだが……。かぐやちゃんには簡単なことだったらしい。
ガンク──つまり、誰かが他のレーンを強襲する作戦は元から立てていたが、かぐやちゃんはぶっつけ本番で完璧な方法を作り上げてみせた。すばらしい。
『雷! トップレーンフォロー! 乃依がやられる!』
急いで指示を出すアキラだが、頬を弾丸が掠める。
『よそ見してちゃ、ダメじゃない?』
いろPも多少は立て直してきたようだ。よかったよかった。アキラも不敵な笑みを返して、二人はヤグラへと向かいながら再び打ち合う。
ボトムレーンへ向かったかぐやちゃんだが、乃依と少し離れたところは着地してしまう。遮蔽物も少ない。
乃依はすかさずウルトの構えを取るが──そこにヤチヨの回転傘が辿り着く方が早かった。乃依の体が上下に分かれ、構えられたウルトは明後日の方向へと飛んで行った。
『ぴぇ〜ん』
『反撃開始、なのです』
そのままガラ空きになったボトムのヤグラをかぐやちゃんが占拠した。
「かぐや、ヤグラを占拠しました!」
「2Dマップに上下情報が無いことを逆手に取った見事な撹乱ですね」
リプレイを見ると、まみまみから剥ぎ取ったメロンパンでレプトケファルスを懐柔していた。嘘だろ?
「メロンパンあげると乗せてくれるとかwww。初耳ンゴwww」
琴さんもしらなかったらしい。と言うかメロンパンとはいえアバターのチャームで乗せてくれるのは誰も試そうとしないだろう。破天荒なかぐやちゃんだからこそ成せた技か。
「ヘビノブさんがこの作戦も考えたんですか?」
「いやいや、こんなの普通気付きませんよ。かぐやちゃんの発想です」
案はあったが成したのはかぐやちゃんだ。正直、今回のコーチングで一番伸びたのはかぐやちゃんで間違いないだろうし。
「コーチングをしましたが、いろいろな点でかぐやちゃんは
「それは見逃せませんね! おっと、ここでフォローに入った雷とも当たりそうです!」
「雷は時間稼ぎを得意としてますからね。乃依のリスポーンまで耐えるつもりでしょう」
ヤグラを占拠し、黒鬼の天守閣へ向かうかぐやちゃんとヤチヨの前に雷が立ちはだかる。位置やかけた時間からして罠が張り巡らされているだろう。だが、その対策はかぐやちゃんに渡してある。
『うりゃあ〜〜!!』
接敵直後、かぐやちゃんが
ウルトとスキルの交換になってしまうが、搦手の少ないかぐやちゃんが雷相手に取れる最善の手として教えておいた。かぐやちゃんのウルトは正直火力過剰だからな。通常のハンマー攻撃でも相手を撃破できるから悪く無い交換だ。
雷も少し驚いたそぶりを見せたが、そもそも雷はサポートタンク。時間稼ぎが十八番だ。巨大な扇を分裂させ、錫杖を携えて防御の構えだ。
そこにかぐやちゃんがハンマーをおおきく振りかぶって突撃。当然雷も迎撃の構えを取る。
勢いのままに二人は衝突──
タンク職と言えども相手は攻撃メインのハンマー。そしてクリーンヒットともなれば、HPの高く無い『SENGOKU』では一撃死だ。
一瞬の攻防で雷は二人に倒された。
『やた〜!』
『いえーい!』
かぐやちゃんとヤチヨはハイタッチをしていた。
「なんと、かぐやとヤチヨ、雷を瞬殺ー!? というか今のかぐやの動きは一体!?」
「かぐやちゃんは、一言で言えば
そう。かぐやちゃんの成長は凄まじいものだった。やはり月から来ただけあるのか、他人からラーニングする能力が異常に高かったのだ。俺の動きをしばらく見ていたと思ったら、かなり高い精度で真似できるようになっていた。いろPもそうだが、かぐやちゃんも鍛えればプロになれる素質がある。今回は期間が足らなかったが、一か月前から決まっていれば黒鬼と正面から戦えるくらいになっていてもおかしくなかったな。
「かぐやは『SETSUNA』のプロから天才と呼ばれるほどの実力を隠していたようだー! ヤチヨとの連携も素晴らしい! これは勝負はまだまだわからないぞ!」
というか、かぐやちゃんとヤチヨの連携、双子みたいに息があってたな。ヤチヨが合わせたんだろうが、ぶっつけでやるには精度があまりに良かった。二人の相性もいいのかもしれないな。
一方のトップレーンは、まだ戦いが続いている。終始アキラが優勢だが、守りに入っているいろPを攻めきれていないようだ。いろPはこの状況だとアキラの行動を阻害するだけでいいので、やられないようにだけしているようだ。しかし、アキラの攻めは苛烈だ。少しずつ、ヤグラへと押し込んでいる。
アキラは自陣に戻らなければ天守閣が落とされるし、かといってヤグラを放置すればゴールド負けしてしまうため、ヤグラを早々に取得して自陣を守る必要がある。難しい状況だ。
『はっ! やるじゃん彩葉』
『うるさい。お兄ちゃんもさっさと倒れてよ、ねっ!』
いろPのウルトの斬撃がアキラに迫るが、軽く飛んで回避する。時間稼ぎの一手だ。というか酒寄さんはお兄ちゃんって呼んでるんだな。いやそんなことは今どうでもいいか。
『だけど、まだまだだな』
アキラもウルトを起動する。攻撃先はいろP……ではなく、その後ろの中ボスの牛鬼だ。いろPの横を抜けて、そのままの勢いで牛鬼を倒し、ヤグラ方向へと駆けていく。
『あ、こら! まて!』
いろPも追いかけるが、ウルトで加速したアキラには追いつけない。そのままアキラがヤグラを占拠する。
「帝、トップレーンのヤグラを占拠です!」
ヤグラ取得のアナウンスが入る。
アキラを追ったいろPが遅れてヤグラにたどり着く。
だが、そこを待っていたと言わんばかりにアキラの刃が迫る。
いろPに刃が届く瞬間、
「ヤチヨが黒鬼の天守閣を破壊しました!」
そうアナウンスが入った。
アキラの刃は、いろPに届く寸前で止められていた。
『命拾いしたな。彩葉』
『っ……』
どこか余裕そうなアキラと、勝ったのに歯噛みしているいろPの姿が、試合のインターバルの強制リスポーンまで残されていた。