蛇足物語   作:ロバと子いぬ

15 / 32
今回ばかりは間に合わないかと思った。

プロットに重大な不備が発見されたので、もしかしたら更新が滞るかもしれません。


三章の十一

「なんとぉ! 二戦目はかぐや・いろPチームが一矢報いたぁー! かぐやの奇策がハマったー!」

「雷との二対一も制していましたし、地力でも勝負になってきていそうですね」

「まさかの三戦目にもつれ込んだこの試合。一体どちらが勝利するのか!」

 

「三戦目、試合開始です!」

 

再びの法螺貝の音と共に、二チームがそれぞれの陣地を出発する。今回は黒鬼はトライデントでは無く、定石の1-0-2の構えだ。トップレーンでヤチヨとアキラが、ボトムでかぐやちゃん、いろPと雷、乃依が当たりそうだ。

 

「コメンテーターのヘビノブさん、先ほどの二戦目はかぐやの素晴らしい動きが目立ちましたけど、あれはヘビノブさんの教えでしょうか?」

「雷との戦いは俺の教えた操作技術が功を奏していましたね。それにしても目を見張る成長度合いです。発想もすごかったですね」

「レプトケファルスに乗るなんて見たことないですからね。ここまでの試合の流れは予想通りでしょうか」

「二戦目が上手くハマってくれましたから、予定していた中で一番いい状態ですね。三戦目まで残機が残らない可能性もありましたし。実際いろPは二戦目最後危なかった。ギリギリでしたね」

「間一髪、首の皮一枚といった状態でした」

「初期残機が三、一戦負けると残機が一減りますから、アキラは残機残り二、それ以外は残り一ですからね。余裕はない状態です。実際黒鬼も追い込まれていますからね。上手くハマらないことがわかったトライデントをやめて、定石通りの構成をしています」

 

残機が零になれば脱落、その試合中は観戦しかできない。雷の地雷などの設置オブジェクトは消えないが、ほとんど干渉することはできなくなる。

 

「黒鬼もここからは本気ということでしょうか」

「そうでしょうね。かぐやちゃんたちはここからが正念場です」

 

 

「さぁ、トップレーン、ボトムレーンそれぞれ交戦開始しました! ボトムは中遠距離で牽制をしあっているようですが、トップは早速近接戦闘に入ったようです!」

 

ヤチヨの傘とアキラの金棒が交差する。そして見た目からは意外にもヤチヨが打ち勝つ。おそらくお助けヤチヨのチームバランスによるバフの効果だろう。優勢と見たのか、そのままヤチヨは傘を打ち込んでアキラを後退させていく。

ちなみに、大会などに出るヤチヨ本体とアキラだと、一対一のタイマンではヤチヨが優勢だ。パワーやスピードはアキラの方が上だが、身体操作能力が高いヤチヨは回避能力や隙をつく能力が高い。俺がかぐやちゃんたちに教えたように、相手の予想を外して隙をつけばアキラレベルの強者でも動きが乱れるものだ。

実際今の戦いでもヤチヨが優勢なのはそういう部分が大きい。というかあのヤチヨ本体じゃないか? という動きをしている。まぁヤチヨ肝入りのヤチヨカップの最終イベントみたいなものだし、出張ってきていてもおかしくないか。

 

押し込んだヤチヨが回転傘でさらにアキラに追撃をかける。ヤチヨの指定した軌道を描く傘は、正直いって動きを読みにくい。反応で受けなければいけない場面が多いため、アキラといえども余裕はない。そのままジリジリと、しかし着実にアキラを追い詰めていく。

 

 

一方のボトムレーンは、膠着はしているものの、前衛の雷に後衛の乃依とわかりやすい陣形の黒鬼をかぐやちゃんたちは攻略できずにいた。わかりやすい陣形とは崩れにくく、強いということだ。それに雷と乃依の連携はプロでもトップクラスだ。いくらかぐやちゃんといろPといえども、そこまでの練度には至っていない。

かぐやちゃんのウナギ砲撃やいろPがワイヤーロープで横に陣形を広げようとするも、雷がゲージ制のウルトの地形操作で防ぎながら陣地を広げていき、乃依がいろPの動きの機先を制す。ゆっくりだが、少しずつ追い詰められていた。

実力に開きのある時の黒鬼は華麗に即試合を畳む傾向があるが、本来の雷と乃依のペアは、少しずつ相手を詰ませていく戦い方が得意だ。少しの有利をさらに大きな有利に広げていく、そうしていつのまにか覆せない有利を築く。今まさにその戦い方を披露していた。

 

乃依の射撃を回避していけば雷の地雷トラップがある。地雷トラップはダメージこそ低いが受ければ大きな隙になってしまう。かぐやちゃんといろPはそれぞれがそれぞれのカバーをすることで大きなダメージは受けていないが、ヤグラからはどんどんと距離を取らされてしまっている。

 

『うぐぐ〜、かぐやちゃん絶体絶命?』

『バカ言ってないで動く!』

 

地形操作でヤグラから距離を離されている間に、ボトムレーンのヤグラで鐘の音が鳴る。

 

「ボトムレーンのヤグラを乃依が占領しました!」

 

琴さんの実況でいろPたちも状況が把握できたのだろう。なんとか動こうとするが、雷の妨害でうまく動けずにいた。

 

 

と、ここでトップレーン側の鐘の音も鳴った。

 

「ヤチヨがトップレーンのヤグラを占領しました!」

 

ヤチヨがアキラを押し込んでそのままヤグラを取得したようだ。マップを見ると、アキラは一度体制を立て直すために自分の陣地にリコールしている。

そして……ヤチヨもリコールした? なぜ……? いや、周りを見るが俺以外は気にしていないようだし、いいか。

 

 

ボトムレーンの戦いはかぐや・いろPチームの天守閣やや近くまで戦場を移動させていた。いや、移動させられていたというのが正しい。かぐやちゃんたちもかなり耐えているが、どんどん動ける範囲が狭くなっている。後ろに引く以外の選択が難しい状況だ。

 

その均衡は、雷の側面からの襲撃によって破れた。

ヤチヨだ。リコールしていたヤチヨが介入してきたのだ。

 

『彩葉! かっこいいけど〜、ヤッチョとかぐやもついてるからさ! 頼って〜♪』

 

その姿に呆気に取られていたいろPだったが、やがて決意を固めた顔をする。……というかヤチヨ、普通に彩葉って呼ぶんだな。ゲーム内ネームiroじゃなかったっけいろP。まぁいいか。

いろPはヤチヨの方を向いて頷くと、かぐやの腕を引いて踵を返す。

 

『ここは、ヤチヨに任せる!』

『うぇ、え〜』

 

なぜかかぐやちゃんがすこし嫌そうというか、不機嫌な顔をしているが、否はないのかそれに従って自陣に戻っていく。

 

『うけたまかしこまつかまつり〜!』

 

ヤチヨはいろPからの言葉を受け取って、雷へと襲いかかっていった。

 

 

ヤチヨはかぐやちゃんといろPが戻ったことを確認してから、雷へと回転傘で攻撃を放った。

ヤチヨの基本スタイルは中距離戦闘だ。回転傘を利用した遊撃を得意としている。超遠距離の場合の乃依とは相性が悪いが、現在は追い込みをして互いにカバーをできるようにするために雷も乃依もヤチヨの射程圏内にいる。雷はヤチヨの傘を弾き返すと、錫杖でウルトの構えを取る。

どちらもヤチヨの射程内にいるが、陣形を作れているのは雷と乃依だ。ヤチヨの行動範囲はすでに絞られている。それを見越した乃依がウルトの構えをする。雷も援護するようにウルトでヤチヨの周囲を囲っていく。

 

「ヤチヨ、絶体絶命か!?」

 

だが、ここでヤチヨが取った手は己のウルトを返すことだった。

ヤチヨのウルトは傘の先についた吹きガラスを使用するものだ。適度に膨らませて攻撃に使用することもできるし、射撃代わりに使うこともできる。オブジェクトやキャラクターに触れれば爆発もする。

その吹きガラスを、思い切り大きく膨らませた。

発動したウルトは止めることができない。乃依のウルトはヤチヨに向かって放たれてしまった。乃依の結晶矢が膨らんで超巨大になった吹きガラスへと命中し──ヤチヨ、雷、乃依を巻き込んで結晶を伴った大爆発を起こした。

もちろん全員耐えられるわけもなく。

 

「ヤチヨ、雷、乃依、相打ちで残機を使い果たしました!」

「残るはかぐや・いろPと帝のみ!」

 

 

『SENGOKU』では、自陣から占領したヤグラに即座に移動するジャンプ台がある。そこへ向かうのだろう。

そして、マップを見ればなぜかアキラもトップレーンのヤグラへと向かっている。

 

「かぐや・いろPらジャンプ台からヤグラへ向かう!」

「待ち受けるのは帝との一騎打ちだ!」

 

ヤチヨカップ、最後の戦いが始まる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。