蛇足物語   作:ロバと子いぬ

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本当は雨降らせてかぐいろ相合傘でメルトだ〜ってやろうとしたけど、あまりにオリ主が可哀想な気がしたのでカット。


四章の三

かぐやちゃんによると、酒寄さんのバイトはあと一時間程度で終わるそうなので、とりあえずご飯を食べながら待つことにした。

俺とかぐやちゃんは二人して酒寄さんのことを見ながら、おしゃべりして時間を潰す。

 

「かぐやちゃんパンケーキだけでいいの?」

「うん。家帰ったら彩葉とご飯食べるし。下ごしらえだけはしてきたんだー」

「なるほどね。ご飯はかぐやちゃんが作ってるんだっけ」

「そそー。良妻かぐやちゃんなのです」

「配信でも結構料理の話してるもんね」

「そう! 料理ってマージで奥深いんだよね。最近は中華にハマってて〜。スパイスとかがめっちゃ創作意欲を掻き立ててくるんだよね。ノブは料理とかしないの?」

「俺は全然しないな〜。デリバリー頼むか外食するかが多い」

「ノブも料理しなよ。おもろいよ?」

「俺はその分ゲームするからね」

「は〜。彩葉も節約料理しかしないし、ゲーム上手い人はみんなそうなのかなー」

「酒寄さんは普通の料理作らないの?」

「作れそうだけどかぐやが作ってる。彩葉目を離すと直ぐ値段のこと考えるし」

「値段のこと?」

「彩葉ね〜めっちゃ節約するんだよね。お金に厳しいし」

「へー。酒寄さんにそんなところが」

「そうそう」

 

酒寄さん、バイトしてないと他に足ついてないとか言ってたけど、そういう思想も理由にあるのかな。お金に厳しいのは……まぁ、一人暮らし高校生なら、俺みたいな特例を除いてそりゃお金にも厳しくなるか。

 

「彩葉今はいいけど元々は色々厳しくてさー。最初なんて家出るのも遊ぶのも禁止されそうだったんだよ」

「まぁ宇宙人だし仕方ないんじゃない?」

「そうだけどそうじゃなくてー、彩葉の邪魔しないことを条件に家にいて良いって言われたの。もうバッドエンド確定みたいな条件でさー」

 

目立たない、許可なく外でない、酒寄さんの邪魔をしないという条件を提示されていたという話を受けた。それはなんというか……、

 

「かぐやちゃんには難しそうな条件だね」

「ほんとに! もうバッドエンド確定〜〜みたいな感じだったもん。今はライバー活動を彩葉とやってハッピーだけどね! 彩葉と一緒にハッピーエンドにするって約束したし!」

 

そういえば、前もかぐやちゃんはバッドエンドとかハッピーエンドとか言ってたな。

 

「ハッピーエンドが好きなんだね」

「そりゃもちろん! ハッピーなのが良いでしょ! もしかして、ノブもハッピーエンドいらないとかいう感じ?」

「そうだなぁ、物語とかだったらどっちも好きだけど、自分事だったらハッピーなのが良いかな」

「そうだよね! ハッピーエンド万歳!」

 

かぐやちゃんはハッピーエンドが大好きらしい。まぁ嫌いな人もそんないないか。

というか、『ノブも』って言い方はもしかして、酒寄さんは違ったのかな?

 

「さっきの言い方的に、酒寄さんはハッピーエンド好きじゃなかったの?」

「そーなの! 彩葉ね、こんなに可愛いかぐやちゃんが『一緒にハッピーエンドにする』って言ったのに、『ハッピーエンドいらない』とか『普通のエンドでいい』とか言ってたんだよ! 信じられなくない!?」

「そうなんだ。ちょっと意外かも。酒寄さんってなんでもできるイメージだったし、常に良いものを目指してそうだったから」

「んー、彩葉はねー、」

 

かぐやちゃんが言葉を発しようとしたところで、横から小さく声がかかった。

 

「ちょっと、あんたたち声が大きい! 周りのお客さんの迷惑にならない程度にして」

 

酒寄さんだった。注意されてしまった。

 

「ご、ごめん」

「えへへ、ごめんね彩葉」

「もう」

 

酒寄さんはまだ何か言いたそうだったが、他のお客さんに呼ばれてまた仕事に戻って行った。何やら他の店員さんが料理をこぼしてしまったらしい。その尻拭いに行っていた。お疲れ様です……。

 

「怒られちゃったね」

「うん。声のボリューム気をつけようか。お店の迷惑になったら追い出されちゃうかもだし」

「てかご飯冷めちゃうし食べちゃお」

 

さっきかぐやちゃんは何を言いかけてたんだろう。聞こうかな、と思ったけど、かぐやちゃんはもうパンケーキに夢中になっていた。

 

「お店で食べるのは家で作るのとやっぱ違うんだよな〜」

 

なんて言っている。まぁまた聞く機会はあるだろうしいいか。

 

 

ご飯を食べ終わって少しして、酒寄さんから声をかけられた。

 

「もうすぐ上がるから、ちょっと外で待ってて」

 

言われた通りお会計を済ませて外に出て待つ。お会計は話した結果俺持ちになった。かぐやちゃんは引っ越したりしていろいろ入り用だろうからね。

少し待てば、店の裏口から酒寄さんが出てきた。制服だ。

 

「お疲れ様酒寄さん。あれ、制服?」

「夏期講習帰りだったから。それより零落くんもかぐやに付き合ってもらってごめんね」

「俺は暇だったし大丈夫」

「うん。次からは零落くんにも釘刺しとくからね」

 

やべ、結果的にかぐやちゃんにバイト先教えることになったのは悪かったらしい。ごめんなさい。

 

「彩葉おつかれー。お腹すいたっしょ? 帰ろ」

「あんた本当に見にくるためだけに零落くん誘ったのかい」

「うん。芦花も真実も教えてくれなかったしー」

「そりゃ私が止めてたからね」

「なんで!?」

「あんた来たらうるさくすると思ったから。今日もうるさかったんだから。零落くんも一緒になっちゃって」

 

かぐやちゃんからこっちに矛先が向いた。

 

「う、ごめんなさい」

「ちゃんとかぐやのストッパーになってよね。まったく」

 

俺も呆れられてしまった。いや仕方ないし反論のしようもないんですけれども。

 

「で? 零落くんはなんて言われて来たの? なぜかかぐやはもう帰る気みたいだけど」

「『彩葉のバイト先知らない?』『いこ』って言われて来たよ」

「嘘でしょ。なんというか、フットワークというか、色々軽すぎない?」

「暇だったし、夕食前だからちょうど良かったし……」

「はぁ、今度から零落くんにも注意しないとか」

 

酒寄さんは顔を覆ってため息をついている。そんな悪いことしたかな俺。

 

「というかかぐや。私にもだけど他人(ひと)にも迷惑かけないようにしてよ。バイト先にも迷惑かけちゃうんだから。あんた声も割れてるし」

「ごめんなさーい」

「全くこの子は……さて、じゃあ帰ろっか。零落くんもありがとうね。付き合ってもらって」

「いえいえ。それじゃあ暗いし家まで送ってこうか。あ、二人は引っ越したんだっけか」

 

新居じゃ俺が場所知るのは良くないか? でももう陽が落ちて暗い中送らないのも悪いしな。

 

「んー、まぁ零落くんなら良いか。新居はこっち」

 

送ると言っておいて酒寄さんに先導されながら帰路に着く。

夜の住宅街はどこか心細さを感じるが、三人で話していればそんなものはどこかに行ってしまっていた。

 

「酒寄さんもかぐやちゃんも忙しいでしょ。休めてる?」

「まぁぼちぼち?」

「彩葉の嘘つきー。全然休んでないじゃん。帰ったら勉強もするんでしょ」

「うっ、で、でも前より全然休むようにしてるし。体調管理は基本中の基本だから。というか、かぐやが寝かせてくれないじゃん」

「え?」

 

え? この人は何を言っているんだ?

 

「いや、ちが、えっと、かぐやがうるさくしてて眠れなかったってことだよ!? こいつ深夜までゲームしたり動画見たりしてうるさかったんだから! 引っ越した今も寝室分けてるのに夜に私の部屋来るし!」

「あぁ、びっくりした」

 

高校生男子には刺激の強い話をし始めるのかと思った。中身が転生者で良かったな。いや精神性が体年齢相応になってるので良くなかった。全然良くないよ。びっくりしたよ。てか夜に酒寄さんの部屋に来るなら別に刺激の強い話なのでは? いや、考えるのをやめよう。

 

「はぁ、はぁ……まぁでも、かぐやが来る前より休んでるのは本当。だってかぐやが休めってうるさいし。それに夏休みだし多少は余裕もあるから」

「全然足りてないと思うけどなー」

「いつも私より後に寝るのによく言うよ」

「かぐやはほら、宇宙人だし〜?」

「都合のいい宇宙人だこと」

 

二人の掛け合いは前よりも息があっているように見えた。それに、コラボの時も思ったけど二人の距離が近い。特に疑問にも思ってなさそうなので、いつもこうなのだろう。

指摘するか? いや、それは野暮か。

 

「休めてるならいいけど、やっぱり酒寄さん、バイトやめてライバー一本にしたら? それでも稼げるでしょ?」

 

一旦話題を逸らして様子を見ることにした。

 

「確かに着ぐるみを脱いでからはふじゅ〜もかなりもらえるようになったけど……、やっぱりそういうのは水物だし、私はライバーじゃないし……それに、自分で稼がないと良くないかなって思うし」

「酒寄さんならゲームの腕もあるし、ライバーでも稼いでいけそうだけどな」

「そんな。私はほら、普通の女子高生だから」

 

普通とは……? 結構超人だと思うけど。

 

「酒寄さん"と"だから、かぐやちゃんもヤチヨカップ勝てたんじゃないかなと俺は思うけどね」

「そう……なのかな。未だにヤチヨとライブするのも信じられてないけど」

「そうだよ彩葉!」

 

俺とかぐやちゃんで酒寄さんを元気付ける図になった。

 

「……それでも、ちゃんとしなくちゃいけないから。まぁそれに、このバ先私がいないと回らなさそうだし」

「あぁ、今日もお皿ひっくり返してた店員さんいたね」

「あの子も頑張ってはいるんだけどね。なかなか成果が出ないみたいで」

 

なんとなくはぐらかされてしまった気もするけど、酒寄さんがそうしたいなら俺が止めることでもない。

 

 

話しながら歩いていれば、高層タワマンの前で二人が立ち止まった。え?

 

「え? ここ?」

「そうだよ。ここの最上階。送ってくれてありがとうね、零落くん」

「あんがとなー。じゃね〜ノブ」

 

手を振って二人はタワマンの中に入って行った。

 

 

……酒寄さんの金銭感覚がよくわからなくなった。

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