蛇足物語   作:ロバと子いぬ

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今回はマジのガチで全てが捏造設定でできています。本編に語られていないので仕方ありません。ご了承ください。そしてこの小説の外に持ち出さないようにしてください。


五章の三

ミーティングルームを後にして、アキラの招待に入る。黒を基調としたラウンジだ。ビリヤード台なんかも置いてある。洒落た部屋だ。多分ツクヨミでの雑談配信なんかはここでやってるんだろう。人に見られるための部屋って感じだ。俺も何度か来たことがあるが、洒落た感じがあんまり落ち着かない。

俺が入ると、黒鬼の三人が俺のことを待っていた。

 

「来たな」

 

高そうな椅子(ツクヨミ内のものだから高いとかあんまりないけど)に深く座っているアキラと、その両脇に立って控えている雷と乃依。なぜか三人ともラフな感じじゃなくてキメキメ状態だ。

 

「帝ちゃーん、本当にヘビノブにもやらせるの?」

「それはノブ次第だ」

 

俺次第? なんの話だろう。

 

「それで、なんの呼び出し? 話の流れからしてかぐやちゃん関連の話だと思うけど」

 

早速本題に入る。別に今は雑談しに来たわけじゃないし。

 

「……単刀直入に聞く。ノブ、お前、彩葉とかぐやちゃんのためにどこまで出来る?」

 

あまり予想をしていないタイプの質問が来た。かぐやちゃん関連の話ではあるみたいだけれども、答え方が難しいな。

 

「どこまでって……」

「聞き方が悪かったな。……二人のために、プロゲーマーとしてのキャリアを捨てるかもしれない覚悟はあるか?」

 

プロゲーマーとしてのキャリアを捨てるかもしれない。なんとなく、アキラが言おうとしていることが理解できた。

 

「……チート?」

「ま、こんな聞き方すりゃ察するか」

 

チートとは、いわばハッキングの一種だ。外部的に、あるいは端末からゲーム内のデータを書き換えて、通常では得られない有利な効果を得る。例えば、無敵にしたり、攻撃力無限にしたり、弾が全部当たるようにしたりだ。もちろんほとんどのゲームでルール的にダメな行為で、それどころか、一度チートを使えばゲームの界隈全体から干されるだろう。

ツクヨミでは、チートを使用していることが発覚すればその瞬間即アカウントBAN。しかも別アカウントを作ることも非常に難しいため、チートを使用した場合事実上ツクヨミからの永久追放となる。

 

「相手はヤチヨちゃんの解析でもアクセス元がわからない以上、どんなことをしてくるかわからない。それこそチートとかな。その辺のチーターなら俺らが負けることはないだろうが、念には念をってやつだ」

 

そういうことか。アキラは覚悟を問うているのだ。酒寄さんの希望を叶えるために、かぐやちゃんをなんとしても守るために、お前はそこまでやれる覚悟があるのか、と。

正直に言えば、少し迷う。俺にはゲームしかないからだ。転生前も今世もプロゲーマーをやっているくらいに俺にはゲームしかない。それ以外の生活は知らないし、考えられない。チートを使うということは、俺の大部分を構成する、『ゲーム』というものを失うことに等しい。そうでなくても、俺の中に流れるゲーマーの血がチートを忌避している。対人ゲーマーでチートが好きな奴はいない。そこまでするのか? という話だろう。

だが……まぁ、悩むのは少しだけだ。なんせ、俺はこの世界じゃ生まれながらにチーターだ。『無かったことにする」能力を持って生まれてきてるんだからな(最近は使ってないけど)。それに、せっかく得た第二の人生、後悔なんてしたくないし、好きな人に後悔なんてさせたくない。それなら、悩むことでもない。

 

俯いて黙り込んでいた俺は顔を上げる。答えが決まったのを察してか、アキラが再度問うてくる。

 

「で、決まったか?」

「おう。……やる。酒寄さんのためなら」

「お前さ、こっちは兄なんだからもうちょい隠す気見せろよな。……ま、それを期待してこっち呼び寄せたわけだけど」

 

そうやや呆れた顔でアキラは言う。……まぁ、俺が酒寄さんのこと好きなのは隠す気もないし、てか、前にアキラがなんか理解してたのはこれか。そんなにバレバレだったかな、俺の好きな人。

 

「じゃあ、こっからは一蓮托生ってことで。乃依」

「はーいはい。ヘビノブの分もね」

 

アキラは乃依の方を向いてアイコンタクトをすると、乃依はわかっていたかのように仮想ディスプレイを弄り始める。話の流れからすると……え、チートは乃依が仕入れるのか? どういう? 確認はしておくか。変に足がついてもやだし。

 

「えっと、チートはどっかから仕入れてくるのか? その感じだと乃依に伝手がある?」

「あー、ノブはそりゃ知らないか。乃依が作るんだよ」

 

は? と声が漏れた。乃依がコンピュータに明るいとか、あるいはチート制作者とか、そういう話はもちろん聞いたことがない。ただ、別に俺は乃依とそんなに親しいわけじゃないし、基本的に、乃依とはアキラとのチームを解消してからの仲なので、隠されたそういう話があるのかもしれない。聞いていいもんなのか? まぁ聞かないと怖いか。

 

「作るって……乃依が? あんまそういうイメージないけど」

「そりゃあ表沙汰にする内容でもないしな。といっても別に隠してるわけではないけど。……乃依な、昔はチートキッズだったんだよ」

「言い方悪いなー。めっちゃMOD作ってただけでしょ。小学生の頃に」

 

仮想ディスプレイを叩きながら乃依が合いの手を入れる。俺は唖然とした。乃依が小学生っていうと、今高一のはずだから……ツクヨミがリリースされたくらいか? 結構最近の話ではあるな。いや、そんなのは良い。

MODっていうのは、Modificationの略で、簡単に言えばゲームなどに個人が追加する改造データだ。基本的にはソロのゲームだったり協力ゲームで使用して自分で要素を追加して遊んだらすることが多い。ただ、対戦ゲームなどで使用すれば、ほとんどチートと変わらないものもある……この話ぶりだとどちらかは判断つかないな。

なんとか復帰して、疑問を投げかける。

 

「それ、まさか対人で使ってたのか?」

「使わせる前に俺が止めた。ってのが正しいな」

「聞いたことないけど……」

「特段公表とかはしてないしな。ただ、隠してもいない。ちゃんと調べればわかるし、ツクヨミがリリースされてすぐの頃はいろんな箇所で言われてたな。未遂とはいえチーター疑惑が出るし。実際、そのせいで乃依はツクヨミ内のゲーム以外でのプロになるのを世間に許されてない」

 

初めて聞くことばかりだ。乃依がMOD作者で? チート未遂して? ツクヨミ以外だとおそらくプロになれない? ……まぁ、多才で器用なイメージがあり、クソガキ要素も持っている乃依ならありそうな話ではある。

 

「ツクヨミでプロを許されてるのはここのチート検知精度のおかげか?」

「そういうこと」

 

ツクヨミは異常にチート検知の精度が高い。古典的な弾が必ず当たるオートエイムはもちろん、視界の拡張であったり、動きの補助をするムーブアシストであったりも即座に検知する。使用するデバイスがスマコンというほぼ決まったものであるが故か、悪意のあるプログラムはどんなわずかなものでも検知するのだ。そしてすぐにBANする。一度や二度なら許されることもあるが、プロフィールに前科という欄が増えるので、過去に使用したかどうかはわかるようになっている。

 

「もちろん俺はツクヨミの前科とかないよ〜。MOD作ってたのも別ゲーだし」

 

乃依がそんな補足を入れる。自分のことだっていうのにあっさりした反応だ。別に気にしてないのかなんなのか。というか、

 

「そんな不安定な状況でチートなんて使ったら……」

「ま、良くてツクヨミ出禁、悪くてゲーム業界出禁だろうな。あぁ、もちろん乃依だけじゃなくて、ブラックオニキス全体でなるだろうよ」

 

軽い調子でアキラが言う。

 

「そんな軽い話じゃないと思うけど」

「それもそうだ。まぁでも、こっから数日俺らはスポンサーにその辺りを説明しに行く予定。何組かはスポンサー降りちまうかもしれないけど、まぁそれはそれ。管理人のヤチヨちゃんからはもう許可をとってあるから」

 

相変わらず動きの速い……というか、さっきの今でもうヤチヨから許可をとってあるのか。ヤチヨとしても協力する気があるってことなんだろうな。俺もチートを使うならスポンサーに説明しないといけない。今から気が重い、が、話を聞いて承諾した以上は今更降りるのも違うだろう。

 

「はぁ……まぁ、だいたいわかった。一応今日聞いた話は口外しないようにしておくから」

「助かる。データ自体は今度直接受け渡すからそれで頼んだ」

「了解。というか、ツクヨミのチートプログラムってそんな簡単に作れるもんなのか? かぐやちゃんの卒業ライブまで二週間くらいだけど」

 

俺は頭に浮かんでいた疑問を投げた。プログラムを作るのにどれくらい時間や手間がかかるのかはわからないが、乃依がMODを使っていたのは別ゲーらしいし、そんなに簡単にできるものなのだろうか。

 

「んー、余裕かな」

 

乃依は片手間にそう答える。

 

「というか、ツクヨミって"チートを作る"の自体はめっちゃ簡単なんだよね。不自然なくらいに。なんならAIヤチヨとかに聞けば簡単な作り方すら教えてくれるくらいだし。ただ、検知を抜けるのが死ぬほど難しい。というか無理」

「AIヤチヨが教えてくれる!? それってヤバいんじゃ」

「ヤバいけど、今は誰もやってない。検知抜けれないし。昔は捨て身でチート使ってる人も多かったらしいけど、ふじゅ〜がお金に換金できるようになってからはめっきりなくなったらしいよー」

 

カタカタと仮想キーボードを叩いて乃依はそう言う。確かに、今ではツクヨミのアカウントをBANされると生活に支障が出る人も多い。安易にアカウントの作り直しもできないし、リスクとリターンが見合ってないんだろう。ただ、チートを作るの自体が簡単なのは驚きだ。ヤチヨからの挑戦状なのか、あるいは、()()()()()()()使()()()()()()なのか。

……ヤチヨはよく『運命』という言葉を使う。今の状況の都合の良さが、なんだか全てをヤチヨに見透かされているように思えて、少しだけ寒気がした気がした。

 

「とりあえず、細かいこととかはプログラムが完成してから直接伝えるから、また連絡する」

「オッケー」

「まぁ、使わないで済むならその方がいいし、俺らが手を組むならどうとでもなるだろうよ。非常時にその覚悟があるか聞きたかっただけだ」

「わかってるわかってる。なんか余計な荷物まで背負わされた気がするけど、今回はまけといてやるよ」

「余計な荷物呼ばわりやめてねヘビノブ」

「悪い悪い」

 

 

そんな話をしていると、今度はヤチヨからの招待が来た。会話はヤチヨに聞かれている……じゃないが、タイミングを見計らってくれたんだろう。

 

「じゃ、次ヤチヨに呼ばれてるからそっちいくわ」

「おう。またな」

「じゃねー」

「またね」

 

黒鬼の三人に見送られながら、俺はヤチヨの招待を受けた。




最初は乃依を元チーターにしようとしたんですけど、流石にそれでプロやってるのは無理だろうということで、外から見たらグレーという形に落ち着きました。
何度も言いますがこの小説は捏造設定多数です。原作を確認して、捏造部分を原作と思わないようにしてください。
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