蛇足物語   作:ロバと子いぬ

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途中だけどキリいいし時間ないからこれで投稿しちゃお〜

五章の七(かぐやとの会話)をちょっと加筆しました


五章の九

自宅に帰って少しして、酒寄さんから返事が来た。『少し遅くなるかもだけどいい?』とのこと。もちろん了承して、諸々の支度をして待つ体制に入る。夕食を早めに食べてしまったので小腹がすいたので、カップ麺なんかも食べた。

いつもならそのままツクヨミでゲームでもして待つが、今日は落ち着かないのでツクヨミの『KASSEN』場でソワソワしている。なんでこの場所にしたかというと、まぁあれだ。うまく喋れなかったら拳で語るためである。多分使うことになる。

 

そわそわ周辺を歩き回って待っていると、

 

「ごめん、遅くなった」

 

いろPがきた。

 

「いや大丈夫だよ。ごめん急に呼び出して」

「ううん。それで話って?」

 

やばい。アキラに唆されて酒寄さんに話そうってなったけど、結局何を話すかあんまり考えてない。どうしよう。というか酒寄さんと話せば俺の悩みが解決するってなんだ? 勢いに飲まれて参考にしちゃったけど、普通に考えてよくわからなくないか? それに俺の誘い方もどういうことだ? 『話がしたい』って、深刻そうな感じにしてるけど現状こんな感じだだぞ? 意味がわからないだろう。どうしよう、どうしよう、ああもう、

 

「一戦、『SETSUNA』してください」

 

 

 

 

俺と、よくわかっていない顔のいろPが向かい合って武器を構える。俺は素手だけど。

俺は馬鹿。結局話すことに欠いて戦いを申し込んでしまった。戦闘民族の仕草すぎるよ。

いろPも『話って聞いてたけど……?』って顔をしながらも受けてくれた。本当にありがとう。急に口下手でごめんなさい。

でも、全く意味もなく勝負を挑んだわけじゃない。拳で語り合うじゃないけど、剣を交えてこそわかることもあるし、戦いながらの方が俺が話しやすいってのもある。つまりこっちの都合です。酒寄さんごめんなさい。

 

「えっと、なんで勝負?」

 

ほら、酒寄さんも堪えられずに聞いてきちゃった。そうだよね。それはそうだ。

 

「かぐやちゃんと勝負したんだ。配信でだけどね」

「うん。配信見てたよ」

「そのあと色々話して……かぐやちゃんの『覚悟』を聞いた。それでさ、俺、迷っちゃってるんだ。かぐやちゃんを見送るべきなんじゃないかって」

「それは……」

「だからさ」

 

そこで言葉を切る。いろPの表情は複雑そうだ。恐らくだけど、俺の悩む気持ちもわかるんだろう。酒寄さんはかぐやちゃんの卒業ライブの曲を作っているって聞いた。それはつまり、かぐやちゃんを送るのも全力でやってるんだと思う。見送るのも、引き留めるのも全力でやっている。酒寄さんにも、どちらの気持ちもあるからやってることなんだろう。

 

「酒寄さんが勝ったら、俺はかぐやちゃんを全力で引き留める。それでやろう」

「っ! それ、本気で言ってる?」

「ああ。本気」

 

結局勢いに任せてそういうことにしてしまった。勝率は俺も素手だけど七、八割方勝つだろうと言ったところか。……そのままでもいいけど、せっかくまた対戦をするんだ。

 

「あの時と同じ。酒寄さんが一撃入れたら酒寄さんの勝ち」

 

今のいろPには少し舐めたルールかもしれないけど、俺がそうしたいからそうする。

 

「……わかった。やろう」

 

いろPから了承の言葉が出た。そうなれば、あとは戦うのみ。

 

観客はいない。かぐやちゃんと戦った時とは全く逆の静かさの中、無機質な試合開始のカウントダウンなアナウンスが響く。

三、二、一、

 

『レディ、ファイト!』

 

先手を取りに行ったのは俺だ。素手は武器に比べて小回りは効くがダメージに劣る。手数で攻めるしかない。対するいろPの武器は今は双剣。この武器はブーメランにも銃にもなる変幻自在、攻防バランスのいい武器だ。

俺の拳の仕掛けをいろPは身を捻って躱す。そこにすかさず次の一撃を入れようとするが、剣の刃の部分で受けられそうになる。

『KASSEN』では、拳で刃を殴るとダメージを受けない。だが、刃を拳で受けるとダメージを受ける。これは判定が難しく、振るった拳と振るった刃がぶつかるとダメージを受ける場合と受けない場合がある。それを見分けるのは困難だ。俺にも見分けはつかない。

刃で受けられるとこちらがダメージを受けるかも知れないので、腕を捻って無理やり軌道を変える。空振りにはなるが、剣との触れ合いは避けた。

 

その隙を見逃してくれるほどいろPは優しくないし、俺はそんなぬるいことを教えてない。拳を空振りにさせたのを見るや攻勢にでてくる。

まずは半歩引いて剣を横薙ぎにしてくる。間合いが素手のものだから、剣の間合いまで下がったのだ。横薙ぎの剣を、左方向に身を屈めて躱す。

そのまま反対の剣を縦に振るってくる。俺は屈めた体制のまま、いろPの後方に転がるように躱した。

起き上がりながら言葉を交わす。

 

「最初に戦った時より強くなってるね。いろP」

「おかげさまで、ね!」

 

いろPは振り返りざまに再び剣を振るってくる。

 

いろPに、酒寄さんにツクヨミで最初にアプローチをかけた時も俺たちは戦っていた。あの時はまだまだ負ける気はしなかったが、今だとこんな特別ルールを敷かなくても全然負けれるだろう。それだけいろPの腕は成長したし、それだけ仲も良くなった。

 

振るわれた剣の腹を殴って軌道を変える。ここまでは昔対戦した時と同じ。だが、今はその先が違う。いろPは変えられた軌道そのままに一回転して剣を振るってくる。相手の動きに対応しつつ、相手の意表を突く攻撃。俺が教えたやり方だ。

もちろん俺が教えたので、俺は予想して捌ける。一歩体を引いて剣の軌道から外れる。だがこれは最善手ではない。そのままいろPの攻勢になるからだ。

いろPは剣を振るってくる。彼女の性格通り、真面目な剣だ。お手本のような綺麗な太刀筋で、俺が崩れそうになればすかさず詰めてくる。理想的な動きだ。だからこそ読めて、避けれる。

 

「そんなもん? かぐやちゃんを守るんでしょ」

「っ! 零落くんに、言われなくても、かぐやは守る!」

 

いろPの太刀筋がやや荒くなる。感情に任せた振り方だ。多くの場合それは読みやすくなるが、丁寧な酒寄さんの太刀筋の場合、その"乱れ"は読みにくさに変わる。

大きく振られた刃をこちらも大きい動作で躱す。大きい動作にさせられたって形だ。

 

「なぜそんなにかぐやちゃんを守りたい?」

「それは……」

 

大きく避けて隙だらけの俺を攻撃しようと、剣を振りかぶっていた酒寄さんの動きが止まる。

振りかぶっていた武器を下ろし、戦っている途中だというのに、逡巡するように、思い出を振り返るように目を瞑った。

そして、目を開きこちらをまっすぐ見据えてくる。

 

「それは、かぐやが私の『大切』だから」

 

それは、告白のような響きだった。透き通った視線が俺を貫いていた。

……わかりきった質問だったかな。だが、俺には必要な確認だった。

 

「……そっか」

「それに……私はもう、大切な人を失いたくないから」

 

ふと、アキラに聞いた話を思い出した。酒寄さんの父親の話。アキラ曰く、酒寄さんはまだ飲み込めていないだろうとのことだったけど……それは間違いではないのかも知れない。

でも、それでも、前を向こうとしているのはわかる。

そして、俺はそんな酒寄さんを、応援したいと、手伝いたいと思っていたのだ。

 

「次で決める。絶対に、零落くんにもかぐやを守るの手伝ってもらうから」

 

いろPはそう言うと、再び武器を構えた。

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