蛇足物語 作:ロバと子いぬ
そういえば前話について、、正直彩葉のかぐやに対する『好き』って解釈が分かれると思うんですけど、この小説では都合上恋愛的なものも含ませていました。オリ主をフラせるためです。
決戦の日は、いつもと同じように、まるで何もない日かのように訪れた。
2030年9月12日、今夜は満月だ。
ツクヨミができてから俺は現実の月よりツクヨミの月の方が見る機会は多くなってきているが、今日だけは現実の月を睨みつけてからツクヨミへとログインした。
今宵、かぐやちゃんの卒業ライブが行われる。
今日は平日だったが、酒寄さんは学校を休んでいた。まぁそれもそうか。今日に限っては、学校よりも何よりも、かぐやちゃんと一緒にいる方が大切だろう。
何せ今日は、かぐやちゃんと居れる最後の日かも知れないから。
……まぁ、そんなことにはさせないけど。
ツクヨミにログインして、ライブの関係者控え室に移動する。かぐやちゃんにはまだ俺たちが月の奴らを追い返すために戦うことは伝えていないらしいので、控え室もだいぶ離れた場所にある。
ライブの会場は『KASSEN』場らしい。まぁ戦うんだからそれが最適か。かぐやちゃんの元気な印象もよく映えるだろうしな。……個人的にはちょっと辛い記憶がフラッシュバックする場所ではあるんだが、それはいいだろう。
俺の入った控え室には黒鬼の面々がいた。
「おうノブ。元気になったか?」
「おかげさまで」
アキラが俺たちにだけわかる挨拶をしてくれる。俺がフラれた後、本当にいろいろ話を聞いてもらった。感謝しかない。……流石に言いふらしたりとかはしてないと思うけど大丈夫だよな?
「なんかあったのー?」
乃依もこう言ってるし大丈夫そうか。
「なんでもない。あ、そうだ。乃依が作ったっていう例のやつは入れておいたから、使う時はこっちにもアキラが合図してくれ」
「把握した。その方が演出にみえるから良さそうだ」
例のやつ……チートは、まぁ使わずに済みそうなら使わないでいきたいけどな。どうなることやら。
俺自身のチート能力も出来れば使いたくはない。ヤチヨが何故か俺の能力で『無かったこと』にした出来事を把握していたし、いろいろ怖いんだよな。今使ったらぜったいヤチヨにバレるだろうし……。でもまぁ、必要があれば使うしかないけど。
「雷と乃依も俺が合図する」
「了解」
「りょー」
今更だが、決戦の直前だというのにアキラも雷も乃依もいつも通りだ。まぁ俺もなんだけど。プロゲーマーは肝が座ってて面白くないね。
というか、今思ったけど、なんで雷と乃依も参戦してくれるんだ?
「今更だけどさ、アキラはそりゃ兄バカだからわかるとして、なんで雷と乃依も手伝ってるんだ?」
「今更すぎ。てかそんなのアキラが手伝ってるからに決まってるじゃん」
「うん。アキラには恩があるし、妹さんの話も聞いてたから」
「そゆこと。てかアキラがチート使うならどうせ俺たち全員連帯責任なるしー。最初からいた方がいろいろいいでしょ。あと面白そうだし」
納得……か? まぁ理解できるな。雷の言ってる『恩』を知らないからなんとも言えないか。てか雷って表じゃないときこんな喋り方だったな。表がクール系だからわすれかけてたわ。それと乃依は面白そうが理由として大きそうな気がする。
「てか何? ヘビノブは俺たちが参加するのがそんな不思議?」
「そういうわけじゃないよ。ただ疑問だっただけ。納得したわありがとう。俺としてはいろPを手伝ってくれる人が多くて嬉しいよ」
「ふーん」
なんか乃依が理解って顔をしているけど、これまさかアキラはフラれたことは話してないとて俺が酒寄さんのことを好きなのは話してるのか? いやそうかも知れない。チートの話持ちかけられた時そんな話をした気がするし。うわ、一番気まずいかもしれない。すみません俺フラれてるんですよ。
そんな話をしていると、虚空からポンッという小気味いい音と共に煙が広がる。
「じゃっじゃーん! みんな調子はどうかな?」
ヤチヨが現れた。肩にはウミウシのFUSHIも乗っている。
FUSHIは何故かずっと俺を見ている。なんで?
「おぉヤチヨちゃん。こっちはいつも通り」
「帝様におかれましてはご機嫌麗しゅう〜。みんなも元気かな?」
雷と乃依と俺も手を挙げて答える。ヤチヨもうんうんと機嫌良さそうだ。
「ヤチヨは挨拶まわり?」
「うん。かぐや含めて今回参加するみんなに挨拶してるよー」
律儀なことだ。いや、あるいは説明も含めてるのかもな。
「ヤチヨちゃんはこの後の戦いには参加しないんだっけ?」
「よよよ〜。申し訳ありません〜。ヤッチョはこの先の戦いには参加できないことになってるんです〜」
以前言っていたことだ。これの説明に来てるんだろう。……ただやはり言い方に引っ掛かりを覚える。『参加
それに、前話した時は流してしまったが、前にヤチヨは俺のことを『本来この運命にいないはずの存在』と言った。その発言は、運命を知っているということに他ならないのではないか?
疑問は多いが、今はアキラ達もいる。アキラ達に俺が転生者であることを明かすつもりは今のところないし、ヤチヨを刺激もしたくない。下手なことは聞けないか。
じゃあ聞けることはこれくらいか。
「
「……そうだね。ヘビノブには前も言ったけど」
一瞬表情が固まってたけど、すぐに元のヤチヨに戻っていた。何か変なこと言ったか?
わからないな。もう少しだけ踏み込むか。
「一つ聞かせてほしい。ヤチヨはこの
「難しいことを聞くね、ヘビノブは。それはある意味ではイエスだよ。……ヤチヨは運命に従っている」
運命に従っている、か。知っているとは少し違うのかもしれない。
「何故ヤチヨは運命に従ってるの?」
「ヤチヨにはそれしか出来ないし、ヤチヨがそうするべきだと思うから」
だったら、その運命に存在しないという俺の存在は邪魔なはずだ。排除したかったはずだ。何故そうしないのか。それに、運命にいない俺がここにいる時点で運命は変わってるんじゃないか? 聞きたいが、アキラの手前聞けないか。そうだな……
「じゃあ、俺はなんでここにいる?」
「それは……」
「運命は変わるんだろう。なら、ヤチヨのやりたいようにしてもいいんじゃないか」
「残念だけど、それは違うの」
違う? どういうことだ?
「運命は変わらない。変わったように見えても、それは
「運命を変えたくない……」
それは、どういう意味なんだ。
「……おしゃべりが過ぎちゃったみたい。そろそろ次の人にも挨拶しないと」
「悪い、引き止めちゃったか」
「問題ナッシングなのです」
「みんななら全部大丈夫! ヤッチョが保証しちゃうからね!」
さらばーいと言ってヤチヨは部屋の扉から出ていった。普通に出ていくんだ。俺たちは手を振って見送った。
ちなみにFUSHIはずっと俺のことを見ていた。本当になんで?
「ノブ、今の話って」
「あー、まぁ前にヤチヨと話してな。詳しいことは個人情報ってことで」
「……おっけー。話したくなったら話してくれればいいさ」
やけに察しがいいなこいつは。助かるけどさ。
きっといつか話すよ。
『各所、準備OKです』
ヤチヨが帰ってからすぐにライブ準備完了の合図が来た。
やっと出番ってわけだ。
「さーて、せいぜい歯応えのある相手だといいんだが」
「アキラ、前みたいに舐めて足元掬われそー」
「気を引き締めていこう」
黒鬼の三人はいつも通りに控え室を出る。俺もいくか。
「みんなでハッピーエンドをつくろう」
「おう」
いざ、決戦だ。
この日、俺の全てが変わることになる。