蛇足物語   作:ロバと子いぬ

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そろそろ、終わりが近づいていますね。うちの近所の映画館も超かぐや姫の上映終わってしまうそうです。悲しいよ;;


五章の十五

アキラの顔に禍々しい紋様が浮かぶ。

それに続けて、雷、乃依の顔にも同じような紋章が浮かんだ。

 

「さて、俺も……王剣、全解放」

 

特に意味もない解号を呟きながら、俺はチートを起動した。

金色の稲妻に赤色が混じり、王剣も侵蝕されるように赤混じりの金色に鈍く輝いている。

そして顔に浮かぶ禍々しい紋様。これがチートを使用している証拠だ。ツクヨミの仕様なのか、どんなに些細なものでもチートを使用すると顔に紋様が浮かぶようになっている。まぁ、今回はがっつりチートだけど。

 

『これはチートモード! たった今、ブラックオニキスの帝アキラ、雷、乃依。続いてヘビノブのチートモード使用が確認されました!!』

 

実況しているオタ公さんの実況が響く。さて、スポンサーには話は通してあるけど、これで一般のファンにどう思われるかは正直わからないな。まぁ、そのリスクとかも加味して話に乗ったわけだから後悔とかはないけど。

俺はともかく黒鬼は後が大変そうだ。話を持ちかけてきたのはアキラだから、その分頑張れって感じだけど。

まぁでも、アキラの備えは大正解だったわけだ。月の奴らはそれだけの相手だ。正攻法だけでは敵わないほどに。

 

だから、こっちのチートもこっからは解禁させてもらう。

 

 

復活した俺たち三人は散開してそれぞれ七福神に当たりに行く。乃依はリーダーっぽいやつに射撃戦……しかも近接を仕掛けに行った。雷は先ほど相手にしていた奴らに虎バイクに乗って応戦。

俺もそれに続いて、赤金の線を尾に引きながら七福神に突貫する。狙いはさっき俺を撃ってきた砲撃型だ。

 

チートを起動したので、俺のアバターのステータスは限界を超えて上昇している。当然敏捷性も上昇しているので、俺はさながら稲光のように見えることだろう。

だが相手を侮るなかれ。俺の突撃に気づいてか、アキラに向けていた砲身をこちらに向けた。そしてそのまま砲撃を放ってくる。

 

俺はそれを()()()()()()()()そのまま受ける。

チートを使用して耐久性も上がっているが、相手の七福神の攻撃は即死級の超高火力だ。もちろんそのまま倒される。

そして、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

あとは簡単。それを『無かったこと』にする。

 

視界が、否、世界が一瞬ぶれて、再び元に戻る。相手の攻撃は『無かったこと』になり、俺はそのまま突撃を続ける。時間が戻るわけじゃないから、俺の位置は攻撃を受けなかったら進めているところまで近づいている。

こちらに砲身を向けていた相手は今はアキラの方を向いている。俺への攻撃を『無かったこと』にした結果、アキラの方を向いていたことになったのだろう。出来事を俺が『無かったこと』にした時、こういう風に整合性を取られることが多い。

おそらく、こいつは俺に気づいていない()()()()()()んだろう。ならば幸いだ。気づかれる前に倒す!

 

そう思ったと瞬間、その砲撃手の七福神の顔がこちらに向く。

月人の表情など読み取れないが、どこか不思議なものを見るようにこちらを向いていた。そしてその表情のままこちらに再度砲身を向ける。

 

ちっ、また気づいたか。だが攻撃を受けても同じことの繰り返しだ。

 

砲身から再び高エネルギーが放たれる。距離も近い。今度はこちらが回避する間もなく攻撃を受ける。

再び、その攻撃を『無かったこと』にする。

同じように視界がブレて、再び攻撃を受けなかったら居たであろう位置にいる。

ここからなら、俺の攻撃もすぐに届く。そう思い相手の顔を見る。表情なんて読めないが、これは癖だ。

相手の表情は、何かを理解したかのように見えた。

 

 

再び相手は馬鹿の一つ覚えのように砲撃を放つ。

再び受けて、その攻撃を『無かったこと』にする。

そうすれば、また視界がブレて、何事もなく……

 

光が俺に向けて放たれる。

 

「な!?」

 

回避の仕様もない。受けるしかない。だが問題はない。また『無かったこと』にすればいい。

視界がブレる。ダメージはない。だが、目の前には光線が既に飛来してきている。

 

回避できない。受ける。『無かったこと』にする。視界がブレる。戻ればまた光線が来る。回避できない。受ける。『無かったこと』にする。視界がブレる。光線が来ている。回避できない。受ける。『無かったこと』にする。視界がブレる。光線が来ている。

 

おかしい。

 

とにかくこの状況を脱するべきだと判断した俺は、無理やり突撃している体を止めて、後ろに飛び上がって光線を回避する。距離は離されたが、とにかくループのような相手の攻撃からは逃れられた。今は考える時間が少しいる。

 

今のはどういうことだ? 俺は確かに相手の攻撃を『無かったこと』にしたはずだ。それなのに、俺は攻撃を受けていた。『無かったこと』にできていない? このタイミングでチート能力の異常か?

とりあえず、自分の疲労感を『無かったこと』にする。……できた。おそらく能力の不調じゃない。

では今のはなんなのか。『無かったこと』にできなかったわけじゃないなら、攻撃を『無かったこと』にして、その上で攻撃をされている。そんなことが可能なのか? ……いや、不可能ではないか。

 

俺の能力は、出来事を『無かったこと』にするだけだ。起こっていないことは『無かったこと』にできないし、『無かったこと』にしたことは『無かったこと』にできない。そして何より、『無かったこと』にしたことが()()()()()()()()()()()()()。相手からの攻撃を『無かったこと』にしても、その相手が二度と攻撃できないわけじゃない。

 

つまり、この月人は、俺が攻撃を『無かったこと』にしてから再度攻撃をしている。……それはつまり、俺が『無かったこと』にするのを()()()()()()ということだ。

疑問のような表情、納得のような表情をしていた何も説明がつく。俺の能力をあの数回で理解したのだ。

 

……今までありえなかったことだから考えたくは無かったが、そういうことなのだろう。この相手は俺の能力を認識できる。

いや、こいつだけと考えるのは不自然だ。月人たち皆が俺の能力を認識できると考えていいだろう。そうなると、相手にもよるが攻撃を『無かったこと』にして耐えるのは難しいかもしれない。

 

……加えて頭に浮かぶのはヤチヨのことだ。ヤチヨも俺の能力を認識していた可能性が高い。そして俺のことを月人だと疑っていた。月人にあまりにも詳しすぎる。……もしかして、ヤチヨは、月の住人?

 

いや、今考えることではない。こいつらを倒してから聞き出せばいいことだ。今はこの状況を打破する方法を考える。

と言っても別にやれることは簡単だ。チート能力に頼り過ぎずに倒す。それしかない。

 

周りを見回す。

近くではアキラが自分の数倍の身長の七福神と戦っている。アキラはウルトをずっと使用しているのか、姿は赤い光となって目で追えないほどだ。加勢をするのもしてもらうのも難しいか。

っと、さらに近くで酒寄さんが倒れている。ダメージはあるようだがまだ落ちてはないな。

 

「酒寄さん!」

「いてて……、って、零落くん!? その顔の紋様は……」

「これは気にしないでいいよ。それより大丈夫?」

「いや気にするよ! だってそれ、チートの……」

「気にしないでいいの。言ったでしょ? 酒寄さんの力になるって。やれることはするって」

「零落くん……」

「さ、立ち上がって。あいつを倒そう。アキラの方は大丈夫そうだし」

 

酒寄さんを立ち上がらせて、先ほどまで俺が向き合っていた砲撃型の七福神へと向き直る。

 

「攻撃は俺がなんとかする。酒寄さんは牽制を頼んだ」

「わかった」

 

こちらに気づいた砲手は砲身をこちらに向ける。そして砲撃を放つ。

酒寄さんの前に躍り出る。そして確認のためにそのまま攻撃を喰らう。で、今の攻撃を『無かったこと』にする。

視界がブレて、元に戻れば、再び光線が飛んできている。やはりダメか。前に出て光線をパリィする。仕方ない。自力で防ぐしかないか。

 

「いくよ。酒寄さん」

 

そう声をかけるも、酒寄さんから返事はない。何かあったのかと酒寄さんの方を見れば、こちらを見て固まっている。なんで?

 

「えっと、どうしたの? 酒寄さん」

 

固まられても困ってしまう。相手の攻撃が止まるわけではないから。止まられている間にも相手は砲撃をチャージしているし、さっきまで止んでいたミニオンたちも波のように押し寄せてきた。

今はチートでウルト無限なので、斬撃を放ってミニオンは黙らせる。

その間に固まっていた酒寄さんも復帰したようだ。

 

「い、いやいや。どうしたもこうしたも、今の何? 見間違い? 零落くん、光線でやられてなかった?」

 

え?

想定外の発言に、今度はこちらが固まった。

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