結ぶと解く   作:ながずぼん

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第110話 心理と地獄

 今日は心理検査とストレスチェック。

 病院に着くと小さな教室のような部屋に案内される。そこでペーパーテストを行うようだ。最初は帰納的推論能力のテストらしい。いくつか並べられた図形に法則があり、次に来るのはどれか当てるクイズみたいな問題がいっぱいある。

 その法則が見えれば簡単だけど嵌ってしまうと一向に見つからないやつ。解けないのは悔しいが、点数が悪くても何をされるでもないので気楽にやる。

 

 次はパーソナリティ診断。質問があって、最もそう思うから全くそう思わないまでの5段階評価をつけていくやつ。全部で200問あるらしい。

 質問は日本語で書かれているのだけれど、問われている意味がわからないものがいくつかあった。それは「全く思わない」のところに印を付けておいた。

 あと、段階レベルで悩むような質問もあったが、それは真ん中にしておいた。

 

 その後はストレスチェック50問。今度は4段階で印を付けて行く。

 中立を許さない質問はいかがなものかと思いつつ、直感というか思った通りに印をつけていった。これ二律背反になるような印のつけ方をすると、どんな結果になるのかちょっと気になった。

 

 最後に採血をするという。血液検査で甲状腺機能や栄養状態からメンタルのことがわかるらしい。重めに病んでいれば、ということなんだろうけど。

 

 全部終わったときに「ペーパーテスト、同じものを来週もやるの?」とヨハンソンに訊ねると「問題は変わります。来週は計数理解テストで、翌週は言語理解テストです」と教えてくれた。算数と国語か。まあ0点でも怒られたりしないのだから、ただやればいいテストなんて怖くもなんともないな。

 

 昼食はフードコートへ3人で行き、ピザを食べることに。

 いろいろありすぎてわからなかったので、注文は2人に任せて大きいやつをシェアして食べることに。脂っこそうだったのでガーデンサラダも注文する。

 トッピングにオリーブをお願いしておいたので、まあまあ黒いピザがやってきた。

 ピザは日本のチェーン店でいうとシェーキーズのものに近い感じだった。

 

「ミシュラさんはインド系っていってたけど、どういう経緯でアメリカに?」

 

「1966年ニ、ソフガ、アメリカニ、イジュウ、シマシタ。カガクシャ、デシタ」

 

 ミシュラさんのお祖父さんはインドで科学者として細胞の研究をしていた。お祖母さんは早くに亡くなっていたので3人の息子は彼の妹が面倒を見て実家暮らしだったそうだ。そんな中、移民法が改正されて先にアメリカへ渡った研究者仲間から渡米のチャンスがあると誘われ子供を残して単身アメリカへ。36歳だったそうだ。

 で、お祖父さんがこちらで知り合ったアメリカ人女性と再婚した際に子供を呼び寄せ、長男がコミュニティの中の女性と結婚しミシュラさんが生まれたのだという。

 

「そうだったんですね。アメリカっていろんなルーツの人が多そうですもんね」

 

「ワタシノ、ファミリーハ、セマイ、コミュニティデ、イッショニ、イマス」

 

「ヨハンソンの家族も移民なの?北欧の人みたいな感じだけど」

 

「そうですね。ただ、その話をすると長くなるので、また後日にしましょう」

 

 「じゃあ、明日の検査が終わった後で」と言うと「明日は無理だと思いますよ」とヨハンソンはミシュラさんと顔を見合いながら笑っていた。

 明日なんだっけ?たしか身体検査だって言ってたけど。

 

 

―――――

 

 翌日の身体検査は、おれの知っている身体検査ではなかった。

 まず、病院ではない広いグラウンドへ連れていかれた。そして緑色の服に着替える。これどう見てもハートマン軍曹が出てくるやつじゃん。

 おれのモチベーションを保つためという理由でミシュラさんも同じメニューをこなすらしい。スーツを脱いだ彼女はサイボーグのような身体をしていた。

 

 最初は腕立て伏せだった。いやなんか間違っているだろう。

 しかもハンドリリース腕立て伏せという、いっぺん床まで身体をつけたら腕を離して両サイドに広げてから起き上がるトチ狂った仕様の腕立て伏せだった。

 2分間それをやった。最低ラインが10回だと言われて必死で12回やった。

 ミシュラさんは30回近くやっていたと思う。

 

 次に懸垂かプランクか選ぶよう言われ、どっちも嫌だったけれど懸垂にした。

 この懸垂もアレンジが効いていて膝を胸に付けろと言う。ふつうに無理だろ!と思ったがとにかく2分間やり過ごすしかないと思い挑戦した。4回しかできなかった。

 ミシュラさんは16回だと言っていた。

 

 もうすでに腕が千切れそうだったが、次はデッドリフトだった。

 いやこれぜんぜん身体検査じゃねえじゃん!そう思ってヨハンソンを睨むと、あの人懐っこい笑顔で「がんばってください」とトボケている。

 64kgのバーベルを腰の高さまで持ち上げろと言われる。持ち上がるかこんなの!クソが!どうにかこうにか1回だけ持ち上げて腰が死んだ。

 戦士ミシュラは3回持ち上げていた。襲撃されたら彼女の陰に隠れよう。

 

 次の修行メニューはメディシンボール投げ。4.5kgのボールを身体の前に持ち頭を超えて後ろに投げる。3mが合格ラインだと言われたが、なにに合格するの?おれ不合格でぜんぜん構わないんだけど。

 ミシュラさんが隣で10m近くまで投げ飛ばしているのを見て、もしかして5~6mぐらい投げられるのかなと思いチャレンジしてみたら上腕が上がらずボールを派手に額にぶつけて記録はゼロ。彼岸が見えた。

 

 最終試練はシャトルラン。学生時代はただの反復横跳びだったが、子供たちの世代はこれをやって地獄だと聞いている。50mのシャトルランを5回やると言われたが、まともに動けたのは1回だけで、3回目からはもう歩くだけだった。

 

 ミシュラ・ザ・グレートは5回目まできっちりダッシュしていた。

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