結ぶと解く   作:ながずぼん

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第13話 保護と国益

 大使からここまでの説明を受けた後、これからの話になった。

 ひとまず超法規的措置で身柄を大使館に保護できたとしても、身元不明の怪しい中年にほいほい日本国籍を与えるわけにもいかないらしく、一応、特別在留許可を得るための手続きを行うそうだ。日本では法務省と外務省で協議しているらしい。

 

「私を知る人間を探すために、直接日本へ連絡を取ることはできますか」

 

「検討はしますがすぐには難しいですね。国益に関することなので守秘義務の範囲を決めてからでないと」

 

 国益?おれ自身若しくは、おれが体験して知り得たことが国益に繋がる?

 それが他国にとっても同じだとすれば身柄確保の動きも納得がいく。

 やっぱり大使館から外に出たら海軍に連れ去られたりするのだろうか。

 

「ところで海軍病院へ移送される話は今後もありえる話になりますか?」

 

「入管と協議して本国送還を約束したので裁判所命令は出ません。つまり海軍とは決着がついたと思って頂いて結構です」

 

 不法入国されて困るのは居座られること。出て行くとなれば解決なのか。

 ひとまず「いろいろされる」心配はなくなったということだ。

 

「侵入者は国家安全保障局?を名乗っていましたが、そちらからまた接触はありますか?さすがに大使館にまで乗り込んでは来ないと思いますが…」

 

「非公式ですがNSAに直接抗議しました。局員を派遣した事実はないと言われましたが到底信じられません。NSAが国外で活動することはないので筋は通ってますがね」

 

 なにか言い訳ができる状態だったようで、大使は呆れた様子でそう言った。

 だが、すぐに表情を変え、厳しい声色で注意するよう言われる。

 

「ただ、もう一人の方は見当がつきません。中国かロシアか、或いはモサドの可能性もある。ISのような組織や、もっと小さい組織かもしれない。未だに狙われていると考えられるため外出は厳禁です。外に出れば命の保証はないと思ってください」

 

 せっかく地球の裏側まで来ているのだからモンテビデオを散策しようと思っていたのに… のん気に観光気分でここから一歩でも外に出たら命取られるのかよ。

 他所にとられるくらいならいっそ、ってことなのか。

 

「は、はい。保護してもらっているわけですし異存はありません」

 

「明日の面談で今後の予定が決まるでしょう。部屋を用意したので今日はもうそちらで休んでください」

 

 こちらが何かを言う前に大使はそう言ってソファから立ち上がり退出を促した。

 応接室を出たらヨシオカさんに案内され、しばらく滞在すると思われる部屋へ案内された。一人用のゲストルームっぽかった。ちょっと古いけど品のある部屋だ。

 ここへ避難できたことで拉致の可能性はほぼなくなったが、万が一を考慮して窓辺には近づかないよう警告された。

 そしてヨシオカさんは少し待つよう告げてどこかへ行ってしまった。

 

 ベッドの上に座ってちんまりしていると、ヨシオカさんが戻ってきて着替えを渡してくれた。そういえば入院着のままだった。

 シャワーを浴びてさっぱりした後、入院着から用意してくれたポロシャツとチノパンに着替えた。チノパンは裾上げしてないので折って履いた。ちょっと恥ずかしい。

 

 浴室から出てくると簡単な夕食を用意してあるので、お腹が空いたら食堂へ行って食べるように言われた。

 とりあえず部屋に戻って入院着をゴミ箱に捨ててから食堂を覗いてみた。

 別に腹が減ってるように思ってなかったが、テーブルに炊飯器と鍋が置いてあり、鍋の蓋を開けて中を確認すると、牛丼の上があったので冷める前に食べた。

 久しぶりの牛丼は。こんなにうまかったっけ?と感動した。おかわりもした。

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