結ぶと解く   作:ながずぼん

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第154話 宇宙と疲労

 ヒューストン宇宙センターの駐車場のゲートを通過するとNASAのロゴのついたジャンボ機の上にスペースシャトルが乗ってるやつが鎮座している。すごいでかい。

 

 アドラさんは以前に来たことがあったらしく「トラムツアーに行かなければ意味がありません」と言い、予約のカウンターで申し込みしてくれる。30分後に出発。

 時間までシュミレーターのようなものを触りたかったが子供が群がっていてさすがに割って入るのは無理だった。諦めてアポロのカプセルとかを見て回る。

 

 そうこうしているうちにトラムツアーの時間になり移動する。この宇宙センターの奥にジョンソン宇宙センターという現役の施設があり、このツアー以外に入る手段はないらしい。敷地はでたらめに広くどこまでが施設なのかわからない。

 トラムが最初の目的地に到着する。そこは宇宙飛行士の訓練施設だそうだ。

 ガラス張りの向こうはガチの訓練施設らしく、宇宙兄弟で見た閉鎖空間に滞在するコンテナのようなものが並んでいる。

 

「アドラさんは宇宙飛行士や宇宙開発の道に進もうとは思わなかったの?」

 

「興味がなかったわけではないですが、本気で考えたことはなかったですね」

 

 そもそも宇宙飛行士って職業ではない感じがする。大抵の職業はガッツさえあればどうにかなりそうだけど、宇宙飛行士だけはガッツでは届かない領域な感じ。

 

 再びトラムに乗ってロケットパークへ。クソでかいロケットが聳え立っている。

 アドラさんによると、細い方のロケットはソ連に有人ロケットで先を越されたアメリカがミサイルに人が乗れるように改造したものだそうだ。めちゃくちゃだ。

 

 その後は屋内の展示、倉庫の中にめちゃくちゃでかいロケットが横倒しで展示してある。入ってすぐが一段目なのでロケット噴射口がある。「このバルブが」と言いたくなるアレ。これだけのものを宇宙まで飛ばすのだから推進力も破格なんだろう。

 先端に向かって歩いて行くと二段目があって噴射口はもう宇宙に出ちゃってるからなのか割と小さく見える。三段目なんかは小さいのが一つしか付いてない。

 で、一番先端は着陸船のカバーになってるのか円錐状の蓋にしか見えなかった。

 

 トラムに乗って入口のところへ戻ると、さっきみたシャトルを背負ったジャンボ機に入れるらしい。これは実際にシャトルをジャンボ機で運んでいた姿そのものなのだとアドラさんが教えてくれる。新幹線を運ぶトレーラーみたいなものだ。

 エレベーターで一番上まで行きシャトルの中へ。コクピットはコクピットなんだなあという感じ。下の層は倉庫みたいな感じで、基本ここに滞在していたそうだ。

 

 再び宇宙センターに戻る頃、アドラさんの具合が悪そうだったので大丈夫か尋ねると「少し疲れました」と正直に教えてくれた。額に手を当ててみたがよくわからなかった。ということは熱はなさそう。ひとまず館内のカフェで休むことにする。

 適当にサンドイッチと飲み物を買ってアドラさんの様子を見る。おれが運転できるのならここで帰っても構わないのだけど免許ないし。回復してもらうしかない。

 

 ふと思いついてアドラさんの携帯でヨハンソンに連絡を取ってもらう。

 

「おや、ハナダさん、気が変わりましたか?夕方の便ならすぐ予約しますよ」

 

「ごめん、ヨハンソン。アドラさんの体調が悪いみたいなんだけど、これどうしたらいい?おれが覗き込めば原因わかるかな?」

 

「はあ?そんな連絡だったんですか…いまどちらに?」

 

「ヒューストン宇宙センターにいる。トラムツアーが終わったあたりで様子がおかしくなったんだよね。いまはカフェで休んでるけど辛そうで」

 

「そんなの寝不足で冷えて調子悪いだけじゃないですか?どこかで寝かせておけば復活しますよ。私は彼女ほど頑丈な女性を知りません。身体もメンタルも」

 

「そうなんだ。車の中で寝るように言ってみるよ。いつもありがとうヨハンソン」

 

 「その感謝のきも…」ごめんと思いつつ赤い丸のアイコンをタップした。

 

 アドラさんに車まで歩けるか尋ねると「はい。歩けます。ごめんなさい」と謝られてしまった。こんなの仕事でもないのだから付き合わせているおれが悪いのに。

 ひとまず立ち上がらせて肘を掴んで車まで戻る。肘を押すと脚が前に出るからだ。

 

 助手席を目いっぱい後ろに下げて彼女を座らせてリクライニングを倒す。陽の向きが悪く顔に思い切り陽がさしている。駐車場なら道路じゃないしちょっとだけだしとズルい考えでエンジンを掛け、そろりそろりと車の向きを変えエンジンを切る。

 すごいドキドキしたけど顔がニヤついているのが自分でもわかる。

 座っているだけなのも暇なのでおれもシートを倒して寝ることにする。

 

―――――

 

 なんか騒がしいなと思って目を開けると、辺りはすっかり暗くなっていて駐車場から続々と車が出て行っている。閉館時間になってしまったようだ。

 アドラさんを見るとスースーとまだ寝ている。さすがに道路を運転するわけにはいかないので起こそうと思って肩に触れると、ガバっと物凄い速さで起き上がった。

 

 驚きながら「具合どうですか?」と尋ねると「はい。すっきりしました」といつもの感じになっていて安心した。「もう車出さなきゃいけないみたいだけど」と言うと「はい。運転できます」と元気よく返事がきた。空港方面へ戻るよう出発する。

 

 「きょうでアドラさんの運転する車にもう乗らないのが不思議なくらい、この感じに馴染んじゃったよ」と言うと「そうですね。隣にハナダさんがいないと寂しく感じるかもしれません」と言われる。そこはおれの名前でなくても成立する言葉なのだと自分に言い聞かせる。ドギマギする言い方しないで欲しい。

 

 空港近くまで戻ったら夕食を食べることにする。リクエストはあるか聞かれ、特にないと答えるとすぐ近くのメキシコ料理の店に入る。メニューを眺めてもよくわからないのでブリトーを注文する。やっぱりこっちのブリトーは旨いなと思いながら食べていると「好きですね、それ」と笑いながら言われた。

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