結ぶと解く   作:ながずぼん

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第174話 焼肉と副官

 アズマさんに連絡をして、さっきの二人も一緒に焼肉行きたいみたいと言うと、スピーカーになっていたのか奥の方から「歓迎するわー」とアサガオさんの声がした。

 焼肉屋に5人になったけど大丈夫か尋ねると、19時からなら大丈夫だというので、目の前の二人にはそう告げ、アズマさんにはSNSメールで連絡しておいた。

 

 クスメギたちはそのまま店に残って3人で夜の店の話をしていた。

 予約の時間が近くなったので喫茶店を出て焼肉屋へ向かうことに。

 おれはホテルにアサガオさんたちを迎えに、クスメギたちは先に行ってもらって店の前で待っていてもらう。

 

 アサガオさんたちを連れて焼肉屋に着くと店の前で二人が大きくお辞儀をした。

 二人の様子を見て「うまくいったのは見たから知ってるわ。うふふ」とアサガオさんが声を掛けるとアヤママもクスメギも耳まで真っ赤にしてもじもじしていた。

 

 焼肉屋に入り、奥の座敷に座る。アサガオさんに食べられない肉はあるか尋ねると、「私、好き嫌いはなにもないの。美味しくなければそう言うだけよ」とのことだったので、いつもの豚のカシラと豚のモツ、牛のレバー、あとマトンあたりを注文。

 おばさんは覚えていてくれたみたいで「あら、また来てくれたんだね、ありがとう」とニコニコして言ってくれた。

 

「あなた、このお店はよく来るの?」とアサガオさんに訊かれ「こっちでは2度目です。向こうではまあまあ来てますね」と言うと「街の様子は同じなのかしら?」と訊かれ「おれが関わったものが無くなったりしてますけど、法則はそれだけじゃないみたい」と答えた。「ご家族の痕跡は戸籍の通りですか?」と今度はアズマさんに訊かれ「そうですね。両親の親までは存在してたみたいです」と答えた。

 

「私は時代が全く違ったし元の時代はまだ先だからいいけど、同じ時間軸で様子が違うのは混乱しそうね」

 

「きょう来てもらった店も部屋もあっちにはないですからね。あのビルに何が入っていたかいまいち記憶がないんですけど」

 

「記憶の空白の中に観測者の望むものが収束したのかもしれませんね。アメリカではそのままが再構築されましたけれど」

 

 難しいことはわからないが、受け入れるしかないと思ったら街が受け入れてくれたような気もする。それがあの喫茶店であり、ママの店なのかもしれない。

 そうこうしていると飲み物と肉が一気に運ばれてきて全員若くないのでゆっくりめに焼いてお喋りをしながら焼肉を食べた。

 

「そういえば、アヤママがアサガオさんに『近い』ってどういう意味なんですか?」

 

「ああ、それね。遺伝的に近いという意味よ。よく言うのは先祖返りね」

 

「はい。私もなんとなく感じています。『近い』ってことを」

 

 見た目にはわからないけれど中身というかDNAが似てるってことなのか。

 それってドイツ人と日本人でもあり得る話なのか?どこかで混ざったのかな。

 

「それが近いとどうなるんです?同じアレルギー体質とか持病とか?」

 

「それもあるだろうけど、アヤちゃんが一番感じているのは『もつれ』が強いってことじゃないかしら?お母さんのことも繋がりを感じたみたいだし」

 

「はい。なんとなくですけど、母以外の人の存在も感じます。遠い親戚のような」

 

 これもしかして軍団の副司令官の爆誕なんじゃねえの?凄いなアサガオ軍団。

 えらいこと聞いてしまったとクスメギを見ると、アズマさんと執事ズを結成して肉を焼くことに集中していて会話が聞こえていないようだった。

 アサガオさんは喋りながらも牛レバーが気に入ったようで何回かおかわりをした。

 あと軟骨とか子袋にもチャレンジしていた。全部おいしいって言っていた。

 

 お腹がいっぱいになったところで解散となった。

 クスメギとアヤママは二人に深々と頭を下げて帰って行った。

 ホテルまで二人を送り届けて、明日の昼間にどこか観光でも連れて行きましょうか?と尋ねると、勝手にするからいいと断られた。ていうか遠慮されたのかな?

 いつまで滞在するんですか?と尋ねると決めていないという。

 

「言ったじゃない。旅をして最後の街を見つけるんだって。ここになるかもしれないんだから、自分たちの足で街を歩いてみないと。ひとまず焼肉屋は合格よ。ふふふ」

 

「そうなんですか。候補に入るだけでもなんか嬉しいです。19時すぎぐらいまで動けるんで、車が必要なら呼んでください。タクシーが拾えないところもあるだろうし」

 

「気を遣ってくれてありがとうね。もしかしたら突然お昼を食べに行くかもしれないから、腕を磨いておいてね。タダヒトさん直伝なんだから、がんばって」

 

 とてつもないハードルを設定されてしまった。とりあえず蕎麦粉を注文しないと。

 それじゃ何かあればと言って別れ部屋に戻った。

 

―――――

 

 翌日、きょうは来ないよな?とドキドキしつつ11時に店を開ける。

 といっても誰も来ないのでひたすら生地を焼いて試食する。

 殻入りの蕎麦粉はネットで注文したけれど、仕入れた分があるのでそれで試作を繰り返す。料理の味も能力でどうにかなればいいのだけど、そうは問屋が卸さない。

 こればっかりは地道に研鑽を積むしかない。

 20枚ぐらい焼いてみたけどアズマさんの味には遠く及ばない。

 腹が膨れてもう齧ることすら嫌になったので、とりあえずきょうは止めた。

 

 飲食店の店主ってのはどのへんまで納得できたら店を開けてるんだろうな。

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