結ぶと解く   作:ながずぼん

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第17話 護衛と再会

 検査は帰国してからだとばかり思いこんでいたら、あの大学病院で検査をするからと昨日告げられ、指定の時刻にロビーへいく。

 アズマ教授とウチヤマさん、ヨシオカさんとサクラザワさん、そしてパツパツのゴリラと殺し屋みたいなおじさんの三組のペアがロビーに集結していた。

 ゴリラと殺し屋についてヨシオカさんから紹介される。

 

「こちら、外務省警備対策室から派遣された、オオクボさんとカワサキさんです。大使館から外に出る際に警護について頂きます」

 

 二人は短く名乗って目線を外すことなく小さく頭を下げた。

 

「お世話になります。よろしくお願いいたします」

 

 外務省にこんな武闘派みたいな職員がいるんだと驚きながらしっかり頭を下げた。

 ゴリラのオオクボさんは30代後半ぐらいか。防弾チョッキを着こんでいるのかスーツがパツンパツンな身体をしている。柔道か空手をやっていそうな感じ。

 一方の殺し屋のような冷たい眼をしたカワサキさんは50歳ぐらいか。強そうには見えないけれど戦闘になったら容赦なく命を奪いにいく怖ろしさがある。

 

「それでは検査に向かいますので、車まで移動をお願いします」

 

 ヨシオカさんに促されてぞろぞろと皆で移動し車に乗り込む。

 運転手はヨシオカさんで助手席がサクラザワさん。おれは護衛に挟まれる格好で後部座席の中央に座る。教授とウチヤマさんは別の車で移動するっぽい。

 

 保護されたときに通った道を反対向きに通って、再び大学病院へ戻る。

 パウラさんにまた会えるかと思うとちょっと嬉しかった。会えるとは限らないのだけれども。

 

 病院へ着くと入院着に着替え、以前に検査した行程をなぞるように体温と血圧を測るところから検査が始まった。

 今回は脳波測定がその次にあり、パウラさんとの再会はそこで果たした。

 

「ハナダサン、ゲンキデ、ヨカッタ。マタ、アエタ、マシタ」

 

「一昨日ぶりですけど、おれも会えて嬉しいです」

 

 再会の挨拶を済ませるとベッドに寝るよう促され、頭に電極が付けられる。

 前回と同様に目を開けたり閉じたりした後ライトが光るやつをやって、深呼吸のやつが終わると眠れと言われる。今回は眠れないだろうと思いきやすぐに眠ってしまう。パウラさんから癒しオーラでも出ているのだろうか。

 

 目を覚ますと教授とおじいちゃん先生が話し込んでいる様子が見えた。

 教授の英語はめちゃくちゃ流暢でおじいちゃん先生の英語はだいぶ訛っているように聞こえた。院長先生がおれの方に視線を向けながら教授になにかを言うと、教授もおれを見ながら首を横に振っていた。さてはじじいまた開頭手術しようとしてたな。

 

 脳波測定が終わったらMRIで改造人間気分を味わって午前の検査が終了。

 検査室から出てくると、パウラさんとサクラザワさんが談笑していた。

 二人はおれに気付くと一緒に昼食を摂るようカフェテリアへ案内してくれた。

 

「おれお金持ってないけど大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫ですよ、ここは公費で賄います。好きなものを食べてください」

 

 無一文のまま現金が必要な場所に来てしまって心配だったが、そんなことは百も承知で案内されたっぽい。好きなものと言われてもメニューはスペイン語なので何がなんだかわからなくて困る。

 

「パウラさん、ここでオススメはどれですか?」

 

「チビート、デス。ハナダサン、スキナ、ニク、デス」

 

 おすすめされるままチビートを注文すると、でかいハンバーガーのような牛肉サンドが現れた。食べてもないのにパウラさんにサムアップを送った。

 でかくてちょっと食べにくいけれど、夢中でもぐついて牛肉を堪能しているとサクラザワさんがクスクスと笑って言う。

 

「ウルグアイって世界で一番牛肉食べるんですよ。ハナダさんそんなにお肉好きならこっちに住んじゃえばいいのに」

 

「へえ。でも言葉は通じないし仕事もないから難しいかな。肉が好きってだけでは生きてゆけないです」

 

「スペイン語はパウラが教えてくれますよ。パウラも日本語の練習になるし」

 

「ワタシ、ニホンゴ、モット、ハナス、デキル、ナリタイ」

 

 サクラザワさんから世話焼きババア気質が溢れ出ているようだった。

 単なる世話焼きみたいな感じではなく、おれの家族に戸籍がないから日本に行っても無駄という前提でそういう振る舞いをしているようにこのときはっきり感じた。

 心配してくれるのはありがたいが、日本に戻って自分で家族の存在を確かめないことには納得も絶望もできない。

 

「教授たちの研究に協力するって約束したし、もしも日本に帰って本当に家族がいなかったらこっちに来ることも考えたりするかもしれないですね」

 

「その時にはパウラはもう相手してくれないかもしれませんよ?」

 

 家族を諦めろと遠回しに言ったことに気付かれたのを悟って、サクラザワさんは力なく笑いながら憎まれ口を叩いた。根っこからやさしいんだなあこの人。

 パウラさんはただニコニコとおれたちを交互に眺めている。

 

 そんな様子をすぐ近くの席からゴリラと殺し屋が見守っていた。

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