結ぶと解く   作:ながずぼん

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第235話 買物と衣裳

 心配しているだろうからアドラさんにも連絡をしてみる。作戦行動中だとすると繋がらないと思っていたが、すぐに繋がった。

 

「ミツル!無事ですか?いまどこに?あの女は倒しましたか?」

 

「ああ、うん。無事だから落ち着いて。さっき下山してきていまワイルアビーチの近くの貸別荘に入ったところ。アドラさんは大丈夫だった?無事に帰れた?」

 

「はい、わかりました。なんという貸別荘ですか?」

 

「いや、え?まだハワイにいるの?」

 

「いえ、いまジャカルタですがすぐに向かいます。ミツルの荷物は私が預かっているので。ちょっとお待ちください… … … あしたの午後には着けそうですね」

 

 来なくていいとは言えず貸別荘の名前を告げると「再会が楽しみです」と言われて通話は切れた。エルリカと再会したらいきなり喧嘩になったりしないよな…

 

 段取りが済んだらどっと疲れが舞い戻って来た。足がぱんぱんだ。

 それでも晩飯を確保しないとなので寝てしまう前に買い物に行くことにした。

 洗って乾いたヨレヨレの服を着て、せめて下着だけでも欲しいなと思った。

 エルリカを誘ったが別に食べなくていいと言うので一人で行くことに。でもどうやって?もう歩きたくない。ネットでカウアイ島のタクシー事情を検索すると流しのタクシーなどは走っていないみたいだったので、さっきのおばさんに配車手続きをしてもらう。

 

 管理棟で待っているとすぐにタクシーはやってきた。運転手はハワイのおじいさんだった。スーパーマーケットへ行ってもらうようお願いして、すぐに買い物を済ませるから待ってて貰えないか尋ねると、構わないよというような返事があった。

 おじいさんが連れて行ってくれたのはアウトレットモールみたいなショッピングセンターだった。「ごゆっくり」みたいなことを言って送り出してくれた。

 

 まさか洋服まで買えるとは思わず、大急ぎでTシャツや短パン、下着なんかを買い込む。アドラさんが持ってきてくれる荷物の中に着替えは入っているけれどすぐに着替えたいから嬉しかった。アドラさんとエルリカにはハワイっぽいワンピースをそれぞれ買う。たぶんヨハンソンは本人が届けに来るだろうから彼にもTシャツを。

 

 食料品売り場に移動して、惣菜をいくつか明日の分も含めて買う。あとは飲み物とかパンとか目が欲したものは全て買う。12本あるペリエの瓶が重い。

 大荷物を両手に下げてタクシーに戻ると、おじいさんは後頭部に西日を浴びつつエンジンを切って窓を開けて待機していた。

 車内はもあんとした熱気が籠っていて、暑い中待たせて悪かったなと思い冷えたペリエをどうぞと渡すと「Aloha!」と嬉しそうだった。

 

 貸別荘に戻り食材を冷蔵庫に入れたあとエルリカを探すも見当たらず、たぶん部屋で寝てるんだろうなと思い、洋服とかの荷物は自分の部屋へ持ち込んだ。

 下着を履き替え買ってきたTシャツと短パンに着替えてベッドに横になる。

 ようやく現代人らしい暮らしが戻って来たと安心したらすぐに眠りに落ちた。

 

―――――

 

 昼寝から目が覚めるとすっかり暗くなっていた。隣の別荘だろうか外でバーベキューかなにかをしている音が聞こえてくる。ちょうど晩飯の時間らしい。

 リビングに行くとエルリカがぼんやりとソファに座っていた。

 

「腹減ってないか?飲み物も冷蔵庫にあるから勝手に飲んでいいぞ」

 

「お前は一言目が食事で二言目がトイレだ。まるで糞尿製造機だな」

 

「ひでえな。でもな、生きるってことは食うことだからな」

 

「ふん、くだらない観念だな。知ってるか、人の争いの始まりは食物の奪い合いだ」

 

「そのぐらい食うことが大事ってことだろ?争うのは足りないからだ。食いきれないほどの食糧があって独占する奴がいなくなれば世界は平和だよ。腹が満たされてたら怒る気にもならないならな」

 

 そんなことを言いながら、お土産を買ってきたことを思い出して部屋に戻る。

 2枚あるうちの黒地に赤い花柄のワンピースを取ってリビングへ行きエルリカに手渡すと「な、なんだこれは」と尋ねられたので「似合うと思って」と返事をした。

 

「これに着替えろというのか…それで私になにをするつもりだ。前にも言ったが私はあの女ほどセックスに興味はないぞ」

 

「どうして着替えたらセックスすることになるんだよ。そんなモサモサした格好じゃリラックスできないだろ。日本に行くまではのんびりできるようにと思ったんだよ」

 

「お、おお、そうか。じゃあ着替えてくる」

 

 そう言ってエルリカはワンピースを持って部屋に入って行った。

 冷蔵庫の惣菜を眺めてどれを食べようか悩んでいると後ろから「ど、どうだ?」と声を掛けられ振り向くと、少し照れたワンピースのエルリカがもじもじしていた。

 

「おお、似合うじゃん。思ってたより上品に見えるな。さすが元貴族」

 

「こ、こういうものは着慣れなくてな。すごくスースーするな」

 

 照れ隠しなのか困った顔で笑うエルリカはけっこうかわいい。見た目が小娘なので変な気を起こさずに済んでいるのはありがたい。

 冷蔵庫から惣菜を3つテーブルに並べて、パンとペリエをそれぞれの前に置いてささやかな夕食を摂る。それでも岩の上で肉と芋だけだった生活が一気に華やかになったし、ワンピース効果なのか彼女がずいぶん柔らかく見えてリラックスできた。

 

 どうやらワンピースが気に入ったようで、明日の午前中のうちに何枚か買い足しに行くことになった。明日もあのおじいちゃんが来てくれると嬉しい。

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