結ぶと解く   作:ながずぼん

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第236話 買物と集結

 朝食後にショッピングモールの営業時間を調べるともう開いてるようだったので、管理棟でタクシーを呼んでもらう。やってきたのは昨日のおじいさんだった。

 管理棟のおばさんとやけに親し気に話をしているところみると、この別荘の専属なのか?それともまさかの兄妹とか夫婦だったりして。ま、なんでもいいか。

 

 おじいさんに今日も買い物をするから待っていて欲しいと告げ、昨日行ったショッピングモールへ向かう。エルリカはワンピースが気に入ったようで今日も着ている。

 ユニクロへ買い物に行くのにユニクロを着ていくのはなんとなく恥ずかしい、みたいな感情は持ち合わせていないようだ。あの気持ちはなんなのだろう。

 

 ショッピングモールに着いたらエルリカは洋服屋へ。おれは靴屋でスニーカーを買って、その後土産屋みたいなところで家族の土産を買う。貝殻のブレスレットみたいなやつと、蛇革のチョーカーみたいなやつと、なんのつもりかわからないけれど、例の石仮面みたいなやつが売ってたのでその3点を。

 2年間行方不明でハワイの民芸品を持って陽気な感じに帰ってきたら…おれなら殴るな。のんきかてめえ!ってキレる。でも買った。手ぶらじゃ帰れない。

 

 買い物を済ませたらエルリカを探しに行くとすぐに見つかった。彼女は洋服屋で立ち尽くしていた。まだ何も買っていないっぽい。

 

「どうした?金持ってくるの忘れたのか?」

 

「どれをどう選んだらいいのかわからない。こういった機能性の伴わない服は買ったことがないからな。お前はどういう基準でこれを選んだ?」

 

「えっ…かわいいなーとか綺麗だなーとかそういう感覚ないの?」

 

「ばかにするな!審美眼ぐらい持っている。お前よりよっぽど芸術の素養があるぞ」

 

「なんだよそれ、全然役に立たねえじゃん。ほら、これとこれ、似合うと思うぞ」

 

 そう言って青地に薄紫の柄のついているものと、黄色地にオレンジのハイビスカスが入ってるものを手渡した。エルリカはちょっと不思議そうな顔をしたがそのままレジへ持って行ってワンピースを2着買っていた。結局なんでもいいんじゃねえか。

 もっと買うか尋ねると、日本は冬なのだからこれ以上は要らないと言う。最後に食料品売り場に寄っておじいさん用にペリエを買ってタクシーに戻り「アロハー」と言って冷えたペリエを渡すと「アリガトウ」とにっこにこだった。

 

―――――

 

 16時近くにチャイムが鳴る。

 エントランスのドアを開けるとヨハンソンとアドラさんが立っていた。

「二人で来たの?」と尋ねると「ホノルルで一緒になってしまって」とヨハンソンは悔しそうだった。「リフエ行きの便がそれほど多くないの」とアドラさんも悔しそうだった。アドラさんからスーツケースを受け取り2人を中に招く。

 

 リビングにいたエルリカに「もう魔法攻撃すんなよ」と釘を刺して荷物を部屋に入れて、昨日買ったお土産を持ってリビングに戻ると微妙な空気になっていた。

 アドラさんが嚙み付く勢いで睨んでいるのをエルリカが完全に無視している。ヨハンソンはおれを見て苦笑いしてる。三者の気持ちはわからんこともないけれど…

 

「これ昨日買ってみたんだけど」と言ってアドラさんに紫に黄色の花柄のワンピースを渡し、ヨハンソンには白地に青いハイビスカス柄の入ったTシャツを渡した。

 二人は大変大袈裟に喜んでくれた。アドラさんは着替えるといって洗面所へ行き、ヨハンソンはその場でシャツを脱いで着替えた。ラフな格好だと若く見える。

 洗面所から出てきたアドラさんの破壊力は凄まじく必要以上に胸を張ってエルリカにどうだー!とアピールしていた。まあそれも無視するのがエルリカなんだけど。

 

 二人に予定を訊くとホノルルで見送るまでこっちにいるということだったので、ひとまず今夜は4人で夕食を食べることになった。

 ヨハンソンがささっと店を予約してくれた。シーフードの店だそうだ。

 もう営業しているらしいがまだ早いので先に用事を済ませるようにヨハンソンに促すと、彼はテーブルの上にグリーンカードとパスポートを乗せて言う。

 

「エルリカさん。合衆国はあなたをアメリカ人として迎え入れることを了承しました。そのことについて我々からの条件は一つだけです。我々のルールを守ってください。ただそれだけです。お願いできますか?」

 

「ああ、約束する。私とて人の物を盗んだり誰かを傷つけるのは好まないから。アメリカ人となった父の名に恥じないよう努める」

 

「あなたの存在が明らかになることで起きるトラブルについては相談してください。こちらで対応できるものはこちらでやりますので。ハナダさんの実例もありますし」

 

「そういえばこの男、襲撃されていた記憶と襲撃を回避して逃亡した二重の記憶があったが、あれはどういうことだ?」

 

「この二人が殺されたときになんか時間が巻き戻ったんだよ。量子消しゴムなんだって。仕組みはよくわからないけれどなんかそういうことらしい」

 

 エルリカは目をひん剥いておれを見ている。ヨハンソンとアドラさんは笑っている。そしておれはこの話は説明のしようがないからやめて欲しいと思っている。

 

「あははは。お前は本当にイカサマ師だったのだな。ヨハンソンだけでなくアドラも全幅の信頼を置く理由がよくわかった。そうかそうか、量子消しゴムの再展開か。しかも理屈もわからずにそれを行使したのか。実に興味深いなハナダミツル」

 

「彼女はどうしてミツルの記憶のことを話しているの?覗けないはずじゃないの?」

 

「帰還のためにエルリカがおれの記憶から座標を特定する必要があったんだよ。それで自動防御を無効化して元の世界の記憶を見てもらったんだ。意外と簡単にセキュリティが解除できたよ」

 

 そう言うとアドラさんは恨めしそうな顔でエルリカのことを睨んでいた。

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