結ぶと解く   作:ながずぼん

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第242話 会合と三本

 朝食後にクスメギから、まだおれの車を売ってないと聞いた。

 アヤさんがエルリカに会いたいというので3人でBMWに乗りポンコツの停めてある駐車場まで行き、クスメギにポンコツの運転をしてもらって二台でレンタカー屋にBMWを返却しに行く。

 返却を済ませたらとクスメギと運転を代わって3人で喫茶店の最寄りの駐車場へ。

 車を停めて師匠に連絡をすると、そろそろお昼ご飯を食べるから喫茶店の方に来るように言われ歩いて店へ。CLOSEの札が掛けられていたが鍵は開いていた。

 

 店の中にはテーブル席にアサガオさんとエルリカが合い向かいに座っていて、入ってきたおれたちに同時に視線を向けてきた。師匠は厨房で昼飯の支度をしている。

 

 「あら、アヤちゃんも来てくれたの?」アサガオさんは嬉しそうにそう言うと「お姉さんに会いたくて」とアヤさんは返事をしてエルリカに向かって「はじめまして、アヤです」と言った。エルリカはいつもの感じで「エルリカ・フォン・ザクセンだ」と名乗った。初対面の人間には貴族の出であることを告知しないと気が済まないのだろうか。

 

 クスメギは決まり事であるかのように厨房に入り師匠の手伝いを始めてしまったのでアヤさんとテーブル席に行きエルリカの隣に座る。

「昨夜は喧嘩しないで寝れたのか?」とエルリカに尋ねると「だから恨んでいないと何度も言っているだろう」と面倒くさそうに言われた。

 

「突然連れて来るって言われてあたふたしちゃったけれど全然平気だったわよ。エルリカもすっかり大人になっていたし。またこうして会えるなんて思ってなかったわ。本当にありがとうね連れてきてくれて」

 

「無事ならよかったです。それで言いたいことは言えたんですか?」

 

「ええ。ごめんなさいってちゃんと謝ったわ。エルリカは気にしてないって言ってくれたし。繋がりが千切れたのは病気のせいだってこともわかったし」

 

「あ、それなんですけど、なんか絡まってるだけみたいですよ。たぶん」

 

 アサガオさんは「えっ?」と驚いた顔をしている。エルリカは表情が変わらない。

 ワイアレアレ山で繋ぎ直すか訊いたときはやらなくていいと言っていたけれど心情に変化はあるのだろうか。アサガオさんが繋いで欲しいと言ってエルリカが拒否したらいたたまれなくなることに気付いて余計なこと言ったかなとちょっと思った。

 

「ねえ、エルリカ。繋ぎ直してもらうことは嫌かしら?私は是非そうしたいと思うのだけど」

 

「………昔のように頻繁に干渉して来なければ構わないが約束してもらえるのか?」

 

「もちろんよ!あの頃はあなたが森に入ったきり出て来ないから心配だっただけ。いまは生きてくれていることがわかればそれで充分よ。あなたの人生の邪魔しないから。ね?お願い」

 

「そういうことであれば」とエルリカの了承が得られたところで二人の繋がりに絡まっている光の筋を解くことにする。

 

 トランス状態になって波チャンネルでエルリカを見るとすぐ近くから太い筋が繋がっているのが見える。これがアサガオさんからの筋と認識する。と、アヤさんの方からもそこそこの筋が出ている。この2本の筋に絡んでいる光の筋を解いていく。

 どの筋も千切らないようにぐちゃくちゃに絡まっているものを解いていくと、北マケドニアの国旗のように綺麗な形にすることができた。すると光の筋が脈動するように明暗を繰り返すようになった。まるで生きているみたいだ。

 ぎゅっと目を瞑る要領で通常視界に戻ると、アサガオさん、エルリカ、アヤさんの3人がお互いの顔を見合って唖然としていた。

 

「あの、上手くいったと思うんだけど… あの?みなさん?大丈夫ですか?」

 

「ええ。感じるわ。こんなに強く感じるものなのね。他の子たちとはまるで違うわ」

「私もママとお姉さんとすごく強く繋がった。こういうのを宿命って言うのかしら」

「………やりすぎではないのか。これほど他者を感じるのは少しわずらわしいな…」

 

 とりあえず繋ぎ直しは上手くいったところで師匠のナポリタンが運ばれてくる。

 京都で食べて以来のナポリタン。アサガオさん仕様の絶妙なやつ。

 師匠とクスメギもテーブルに付いて全員揃ったところで食べ始める。

 麺のモチモチ感に絡むソースの塩加減と甘酸っぱさが交互に来る感じがすごい。思わず「うまっ!」と声が出るほどだ。隣のエルリカを見ると一口目を食べたところで固まってる。だろうなと思った。母娘による師匠の奪い合いまであるかもしれない。

 

「な、食べることって大事だろう?肉と芋を咀嚼するだけの生活には戻れないだろ」

 

「あなたがよければ三人で暮らしてもいいのよ?私やタダヒトさんのことを両親だなんて思わなくてもいいから、好きなときに好きなだけ一緒にいればいいじゃない」

 

「確かにこれは豊かな食事だ。贅沢という意味ではなく豊かだ。おまえが餌付けされているのも理解できる。だが私はこの男に付いて行きあちらの世界を巡るつもりだ」

 

「あらら。ハナちゃん奥さんに説明しなきゃならないことが増えたわね。うふふ」

 

 2年間行方不明だった旦那が娘でもおかしくないほどの若い女を連れてひょっこり帰るとか自殺行為だろ。絶対に家族に受け入れられない。

 

「エルリカさん?向こうの世界に渡るのはいいとして、その後はどうするの?まさか我が家に住むのがご希望とか?」

 

「人の話を聞いていたのか?世界を巡ると言っただろう。一所に留まるつもりはないし、お前の家族にお前の情婦だと思われるのは甚だ心外だ。干渉するつもりはない」

 

 ただ向こうの世界に行きたいだけだとわかって安心した。アヤさんが煽るから…

 でも、あっちの世界で能力がバレたらこっちでバレるよりやばい感じがする。

 

「でも、こっちの世界で何があったのか、エルリカがあなたの家族に直接教えてあげた方が理解が早くないかしら?もう記憶は全部見ているわけだし」

 

 だからそれをやったらヤバくないかって心配してるのにこのおばさん容赦ねえな。

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