結ぶと解く   作:ながずぼん

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第244話 現場と作戦

 ホテルの部屋で目が覚める。エルリカは昨夜もアサガオ家に泊まった。師匠とアサガオさんがベッドで寝てエルリカはコタツで寝ると言っていた。100年生きてきてコタツで寝るのは初めてだそうで「楽しみだ」と夕食をごちそうになっているときに言っていた。そりゃ元貴族の外国人ならコタツで寝たことなんてないかもな。

 

 きょうは午後からアサガオさんたちの新しい家の片付けを手伝う。外から見る限りけっこうボロい家だけれどリフォーム的なものは検討中で、ひとまず住めるようにするのが目下の課題だった。

 昨日クスメギに頼まれていたので、朝のうちに産廃業者に連絡をして昼までに処分するものを入れるコンテナを家の裏に用意してもらうようお願いをした。

 

 とりあえず片付け作業に必要な細々したものをホームセンターへ買い出しに行き、掃除道具も一式買って喫茶店に行く。店ではエルリカとクスメギ夫妻が留守番をしていた。繋がりが強化されたからかアヤさんとエルリカが随分仲良さげだった。

 クスメギが豆を手で挽いて珈琲を淹れてくれて「もうすぐ帰って来る頃だ」と言われ、おれが淹れたものより美味しい珈琲を飲みながら悔しい思いをしていると、アサガオさんと師匠が帰って来た。

 二人ともにこにこしていたが、なんだか部屋を追い出すような感じがしてそれを伝えると「しっかり働いてもらうから」と笑顔で言われた。

 

 師匠とクスメギがささっとソース焼きそばを作ってくれて、みんなでそれを食べたらぞろぞろと歩いてアサガオさんたちの新居に向かう。

 建物に着くとアサガオさんが鍵を開けて中に入りそれに続いてぞろぞろ入る。

 埃とカビの匂いがすごい。家財道具も結構残っているし床もベコベコだ。

 これは片付けて掃除すれば住めるって代物じゃないと不安になりつつ、地下というか1階に下りてみると、物は放置されていなかった代わりに蜘蛛の巣だらけでカビだらけだった。まるっきり廃墟じゃねえか…どうすんだこれ…

 

「そんなに不安な顔しなくて大丈夫よ。私たちで1階の家財道具を処分したらあとはプロにお願いするつもりよ。少し時間はかかるけれどハナちゃんは忙しくなるわよ」

 

 アヤさんにそう言われ、リフォーム業者を入れるのはわかったけれど、どうしておれが忙しくなるのかわからなかった。それに全面改装となると3,4カ月或いは半年ぐらいかかるかもしれない。1週間程度で引っ越せると思っていたが甘かった。

 

 1階に戻ってどこから手を付けるか物色していると「お世話になります」と玄関の方から聞いたことのある声を耳にして、もしやと思って行ってみるとアオイさんの店を作ってくれた彼が立っていた。

 

「ご無沙汰しています。ここのリフォームを請けてくれたんですか?」

 

「ええ。超短納期だったんで無理だと思ったんですけど、ママさんから予算に糸目は付けないって言われちゃったんで。それに次のお店もやらせてくれるって言われちゃうともう断れないじゃないですか」

 

 彼は笑って強引な依頼だったことを明かしてくれた。

 「それで工期はどれくらいって言われているんです?」と尋ねると「図面が仕上がってから一ケ月って言われてます」と言う。一ケ月とか無理じゃね?と思ったが図面の仕上がり後という部分に引っ掛かって「もしかして図面描いている間に解体を?」と尋ねると「そう言われてます。だいたい一週間で床壁天井みんなバラすって」とのこと。

 このとき初めておれの仕事の納期が一週間であることを知った。

 鬼かよ… つか帰りたかったらさっさと仕事しろってことか…

 

 彼に一言告げてアサガオさんの元へ。「まず、どんな家にしたいんですか?」と尋ねると「あなたの好きにしていいわよ」と言われる。「じゃあ屋根がなくてもいいんですか?」と意地悪を言うと「あなたがそういう家に私たちを住まわせたいのならそうすればいいじゃない」と意地悪返しをされた。

 隣にいた師匠に「なにかリクエストありますか?」と尋ねると「彼女が花を育てられるといいですね。庭でなくても鉢植えでもいいですから」とのことだった。

 次にクスメギのところへ行って、片付けは免除してもらえるのか尋ねる。

 

「ダメって言いたいところだけど、あんたはあんたの仕事をすればいい。片付けはこっちでやっておくよ。あと、アヤさんも頼みたいことがあるらしいぞ」

 

 困惑するおれを見て嬉しそうにあいつが言う。どうしてこっちの世界の連中は逃げられない状況を作ってから種明かしするんだ。アサガオさんの手引きだからか?

 ぶつぶつ文句を言いながらアヤさんを探すと下の部屋で庭を眺めていた。

 

「あの、クスメギからなんか頼み事があるって聞いて来たんですけど」

 

「うん。ダブルワークになっちゃうんだけど、アオイちゃんのお店の送迎をお願いしたいの。ずっと前からシズカちゃんに頼り切りで申し訳なくて」

 

「あ…、はい。今夜からですか?もしかして黒服も足りてない感じですか?」

 

「うふふ。話が早くて助かるわ。制服は後でサトルさんに届けてもらうから」

 

 改装の依頼と短期バイトが同時に決まった瞬間だった。手持ちの軍資金も心元なくなってきていたし、こんな強引な依頼なんだから設計料はあのダイヤモンドを1粒ぐらい請求しても文句は言えないだろう。つかおれ寝る暇あるのかな。

 現場を離れるまえにエルリカに改装中にフラフラといなくなるなと釘を刺しておこうと思って彼女を探すとさっそく茶箪笥を運んでいた。どこにあんな力が…

 

「なあエルリカ。おまえ改装中はなにをして過ごすつもりなんだ?」

 

「解体が終わったらウルカと一緒に構造の補強をすることになっている」

 

「それが済んでもフラフラどっか行っちゃうなよ。おまえがいないとおれ帰れないんだからな。頼むから目の届くところにいてくれよ?な?」

 

「ふん。わかっている。私だってお前がいなければマルチバースを渡れないのだからな。余計な心配をしていないでさっさと自分の仕事をしろ。私はこうしてもう取り掛かっているぞ。貴重な時間を浪費しているのはお前の方だ。愚か者め」

 

 くそっ。言いたい放題言いやがって。

 おまえに放浪癖がなければ心配しねえっつうの。

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