結ぶと解く   作:ながずぼん

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第248話 終戦と待機

 扇状に広がった合戦メンバーが5,6m先から時間差で雪玉を投げつけてくる。

 霧に変えるのも飽きてきたので反抗作戦に移行する。

 トランス状態になって空間の膜を見る。そしてそれをつまんで捻じる。すると投げられた雪玉が捻じれたところに吸い寄せられ、全員の玉が集まったところで一気に逆向きに膜を捻じって手を離す。

 すると集まっていた雪玉は反発するように投擲者に向かって飛んでいく。うまくいったみたいなので通常視界で確認すると、不思議現象に棒立ちになっていた何人かには当てられたようだった。クスメギの頭が真っ白になっている。ざまあみろ!

 そしてアサガオさんは仰向きに倒れて空に向かって「あっぱれである」と言って死んだふりをした。アオイさんの頭にも当たったみたいで泣きそうになっていた。

 

 「い、いま何をしたんですか?」とハナザワさんに訊かれ「空間を捻じって反対に捻じりました」と言うと絶句していた。

 指揮官を倒したことで終戦になったと思っていたのだけど諦めの悪い奴が悪い顔でニヤニヤしながら人の頭ぐらいの大きさのやつを投げてきた。直感的に全部は解けないと思ったのでチョップしたら盛大に雪が顔にかかった。

 ぺっぺっと口に入った雪を吐きだしていると、せっせとでかい雪玉を作っているエルリカが見えたのでささっと雪玉を作って顔にぶつけてやった。完全な不意打ちになったみたいで顔面がびしょびしょになった。

 

 そしたらあのバカ作りかけの雪玉を投げ捨てて火の玉を投げてきやがった。杖なしだからかサイズも小さいし速度もゆっくりめだったので避けれて助かった。

 

「おい!あぶねえだろ!火の玉なし!無茶すんな!」

 

 エルリカはめちゃくちゃ悔しそうだったが、やっぱり杖がないと思ったようにファイヤーボールが投げられないのか二投目はなくて命拾いした。みんなを様子を見ると、アサガオさんと師匠以外は全員目ん玉が飛び出ていた。そりゃそうだろう。

 

―――――

 

 びしょびしょになった服は大人しくなったエルリカが乾かしてくれた。

 服にしみ込んだ水分同士をくっつけて水の塊にして袖の先から落としてくれた。

 すっかり服も乾いたし腹も減ったのでみんなで分乗して喫茶店に戻った。

 

 最後の晩餐は何を作ってくれるのかと師匠に尋ねたら「今夜は外食ですよ」と言われる。19時にいつもの焼肉屋を予約してあるそうだ。あと1時間ぐらいあったので珈琲を淹れてもらってお喋りをしながら時間になるまで過ごした。

 ハナザワさんにトランス状態のことを根掘り葉掘り聞かれ、アオイさんに「悲しかった」と言われた。あれは狙い撃ちじゃないと説明して納得してもらった。

 ウチヤマさんとエルリカはファイヤーボール談義に花が咲いていた。あいつ本当に魔法の話をしているときは楽しそうだ。

 

 予約の時間が近くなり全員で歩いて焼肉屋へ。雪はもう()()()()()ぐらいの降りになっていた。ガヤガヤと話ながら歩いていると自然とおれが1人になった。誰も意識していないだろうしなんとなく会話の相手を隣に置いた結果そういう格好になった。

 普段そうなれば居づらさを感じたり寂しくなったりすると思うのだけど、いまはこの構図がなんだか安心できるような感覚になっていた。

 

 焼肉屋に着けば送別会の主役としてアサガオさんとアヤさんに挟まれる格好で真ん中に座らされ対面はおっさんばかりという微妙な配置になった。

 目の前では執事ズが甲斐甲斐しく肉を焼いてくれて、あのときああだったとか、こうだったとか2年間の思い出話をしながら焼肉を食べた。

 ゲート化して行き来できるという想定が全く湿っぽさを感じない送別会になった。

 ハナザワさん、ウチヤマさん、アオイさんはそれを知らないけれど、おれがメソつかないのに合わせて明るく振舞ってくれているっぽかった。優しいなと思った。

 

 焼肉を堪能したらまた喫茶店に戻って2時ぐらいまで過ごすことに。

 クスメギとアヤさん、アオイさんは1時に戻るといって店に出勤していった。

 雪合戦で疲れたのもあってかみんな徐々に口数が減って行き、アサガオさんはベンチに座ったまま寝ている。日付が変わる頃にはハナザワさんも船を漕ぎ始めた。

 なんだかみんなで年越しをしているようだった。

 

「なあエルリカ。干渉縞の操作なんだけど、実験のときは波のいびつなところをずらしたら穴が二つ開いたじゃん?それって近距離で入口と出口を繋げたってことだろうけど、今度も同じことして出現した出口をおまえが移動させるわけ?」

 

「あれは繋げたのではい。入口を解いたのだ。そこに世界が再接続したから付近に出口が出現したのだ。これから行う操作も同じだ。お前の役割は入口の生成。それと同時に私が操作を行って向こうの世界に出口を生成させる。世界が勝手に出口を作ってしまう前に」

 

「そうなんだ。あとさ、今回も戻れなかったら引き戻してくれるよな?溶けすぎて本当に危ないんだよあれ」

 

「ふふっ、偏桃体に直に恐怖の信号を叩きこんでやる。安心して震えて臨め」

 

 安心して震えろとか意味がわからないことを言ってるれど、強制的に現実世界に引き戻す方法を把握しているようなので信じて溶けるしかない。

 

――――

 

 午前2時。雪が降ったせいか街も静かだ。

 どうせ戻って来るなら痕跡があった方が出口座標を設定する時に間違いなくていいとエルリカの進言で3階の部屋に入口を開けることにした。

 皆でぞろぞろと3階に上がる。「靴のままで悪いな」と新しい借主のクスメギに言うと「悪いと思うならとっとと戻ってきて掃除しろ」と笑って言われた。

 

 戻るつもりはあるけれど、いつになるかわからないし開いたときに巻き込まれないように立ち入り禁止にしておいてくれとお願いをしていよいよ帰還すべくワームホールの生成に取り掛かる。どこで入手したのかわからないが、でかい水晶が嵌った杖をアサガオさんからエルリカが受け取り「いいぞ」と声を掛けられる。

 

 いろいろ思い出しそうになるが今は目の前のミッションに集中する。

 エルリカと並んで立って手を結ぶ。

 自我を世界に溶かすと脈動する光の樹氷が目の前に広がった。いよいよだ。

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