薄いピンク色と水色のドレスを着たオンナのコたちが席に来た。
薄ピンクがおれの隣に座り、対面のクスメギの隣に水色が座る。
「おにいさん、焼肉屋行ってきたでしょー」
「え?そんなに臭うかな?」
「うん。めっちゃ臭う。おなか空いちゃうじゃーん」
薄ピンクのコはそう言って無邪気にけたけた笑っている。
クスメギの隣のコも臭う臭うと言っている。
程なくしてボーイが水割りのセットとチャームを運んできた。
「二人とも水割りでいい?」と薄ピンクに訊かれたので「おれファブリーズください」と告げると「あれ飲み物じゃないよー」とまた笑った。
「じゃあ炭酸水を」とボーイに頼むと「え、おにいさんお酒飲まないの?運転?」と驚かれ「飲めないの、宗教上の理由で」と答える。
薄ピンクが「そういう宗教があるんだ」と禁忌に触れるように言うので「いや、体質で」と白状した。「もー、信じちゃったじゃん!」と笑った。よく笑うコだ。
おれとクスメギの前にグラスが揃ったところで乾杯をした。
オンナのコとの他愛のないやり取りを眺めてクスメギは安心したような顔をしている。浜松からずっと心配かけていたんだなと申し訳ない気持ちになった。
「わたしたちも一緒に乾杯したいんですけど、いいですか?」
「あ、はい。すごく高いやつじゃなきゃいいよ」
オンナのコたちの前にもグラスが置かれ再び乾杯する。何に乾杯しているのか知らないけれど、とにかくグラスを合わせて4人で喜ばしい感じのつもりになる。
「おにいさんたちは会社の同僚ですか?」
「いや、おれいま無職なの。あっちは堅い職に就いているけど」
「えー、無職が飲みに来ちゃだめじゃん、働きなよー」
「事情があってね。無職だけど収入はあるよ。あの人がお金くれるの」
「あ、じゃあそっちのおにいさんはお金持ちなんだ」
「その話、間違ってねえけど合ってもねえからな。あれは俺が払った金じゃねえ」
クスメギは少しムキになりながら口を挟んできた。でも楽しそうだ。
「なんだかフクザツなんですね。おにいさんのことなんて呼べばいいですか?」
「おれハナダです。あなたは?」
「メイです。名刺終わっちゃっていまお店に作ってもらってるんですよ」
「ああ、大丈夫です。メイさん、覚えました」
クスメギの様子を見ると、水色のオンナのコにクスメギの漢字を説明している。
確かに珍しい苗字だからどんな字を書くのか想像できないだろう。
―――――
お喋りの途中でトイレに行くと、後からクスメギが入ってきた。
隣同士で小便をする。
「あのコたちは記憶にあるのか?」
「いや、ないな。ボーイも違う人だし、知らない人しかいない」
「そうか。お気に入りのコはいなかったのか?」
「特には。顔見知り程度だよ。ありがとうな」
そう言って洗面台で手を洗っていると後ろから「ばか、そんなんじゃねえよ」と小便器に向かいながらクスメギが言う。
「ツンデレかよ」と笑ってトイレを出ると、メイさんがおしぼりを持って待っている。
「いまちゃんと手を洗ってきたよ?」と言うと「当たり前じゃん」と笑いながらおしぼりを渡してきた。
席に戻るとすぐにクスメギと水色のコが戻って来た。
「ちゃんと手洗ってきたか?」と尋ねると「当たり前だろ」と笑っている。
―――――
セットの時間が来てボーイが延長するか聞きにきたので会計をお願いする。
伝票が届くまでの間、ぼんやりしているとメイさんが小さい紙切れに電話番号を書いて渡してきた。営業熱心なコだなと思いつつ受け取り、後で連絡するねと伝えた。
会計を済ませてオンナのコたちに見送られ、坂を上ってホテルに戻る。
夜風が気持ちよくてただ黙ってクスメギと歩いた。
途中のコンビニでお茶を買ってホテルに戻り、エレベーターで宿泊フロアに上がる。
部屋は隣同士でドアを開けるときに「じゃあ明日帰るときに連絡くれ」と告げると、真面目な顔で「がんばれよ」と言ってクスメギは部屋に入っていった。
ベッドに横になり、がんばるしかねえよなあ、とひとりごちた。