車屋さんから連絡があり、納車の準備ができたというので契約している駐車場まで持って来てもらうことにした。そんなわけで先にレンタカーを返却する。
駅前の銀行で手付を差し引いた残金を落ろして駐車場に向かう。
少し待っていると積載車に乗ったおれの車が到着する。自走でよかったのにと言うと、そんなわけにはまいりません!と頑なな返事があった。
現金で精算すると領収書と鍵を渡される。お互いに礼を言い合い積載車が去っていくのを見届けたら早速乗り込んでアテもなく車を走らせる。自分の慣らしのつもり。
なんとなく辿り着いた公園の駐車場に車を停め、クスメギに連絡をする。
「来週の検査だけど、納車になったから自走で行ったほうがいいか?」
「いや、おれが迎えに行くけど。あんた、いまなにしてるんだ?」
「え、公園に車停めておまえと電話してる」
「そうじゃねえよ、仕事とか家とか。もうちょっと連絡してくると思ってたけど、全然してこねえし」
親か。おまえはおれの親のつもりかと思った。引っ越ししたこと、夜の店で黒服してることを話した。アヤママのことは会ったときに話すことにした。
「あんたが黒服ねえ。想像できねえな。客に怒られてねえか?」
「うるせえよ、皆から愛されてるよ。そんで迎えにいつ来るんだ?」
「前日にそっちに行って泊って朝出発する。検査は午後からだから。で、翌日の朝にまた送っていく。休みもらっとけよ」
「わかった。じゃあ来週な」
なんだかクスメギが口うるさい小姑化してると思った。
通話を終えたらメイさんに「車来たよ」とメッセージを送ると、なんか賑やかなスタンプが5,6個連続で返ってきた。
公園を出たらカー用品店へ行き、ポータブルナビを買ってダッシュボードに取り付ける。送迎の際にオンナのコの家を地点登録するため。ぬかりはない。
ガソリンスタンドで満タンに給油してから駐車場に車を停めて部屋に戻った。
―――――
送迎というぐらいだから帰りに送るだけじゃなく出勤時に迎えに行くことになるのだが、誰の家も知らないのでこの日の帰りで場所を覚えて次から迎えに行くようになる。
オンナのコたちの住んでいるところはバラバラなので、おおまかに南北に2台で送迎する。そのうちの一人のドライバーが辞めてしまったので募集をしていたが、なかなか応募してくる人が現れず本当に困っていた、と店長から聞いた。
いつもより少し早めに出勤して店長から送り先のおおまかな説明を受ける。
今夜送るコは南方面の4人で全員ラストまで。一番遠いコで10kmぐらいか。
おれのワゴンは普通に5人乗りなので4人があてがわれた。
北方面のドライバーさんは多いときは10人以上受け持っていて、送りだけで二往復しているそうだ。黒服しないから東西と北が彼の担当になっている。
今日は直接説明を受けたが、当日の状況は業務連絡のグループで共有される。
そもそもオンナのコの出勤はめちゃくちゃとしか言いようがない。急に来たり来なかったりすることが日常茶飯事なので店長のパズルスキルは上がるばかりだ。
休みだったコが指名客の連絡を受けて急に出勤する場合は、ボーイの仕事を抜けて迎えに行くこともあるらしい。だいたいタクシーで来るみたいだけど。
急な送迎は北方面のドライバーの都合がつかない場合に限るとのこと。
あと、稀にアフター後に送りを頼まれることもあるらしいのだが、それもタイミング次第というか都合がつけばという感じだそうだ。
送迎なんて店の終わりにくるっと回っておしまいだとばかり思っていたが、なかなか複雑で臨機応変な対応が求められる仕事だった。
采配は店長なので難しく考える必要はなさそうだけど。
―――――
この日の営業もなかなか盛況で閉店時間になったら車を取りに駐車場へ向かう。
車を店の裏へ回してハザードを点けてオンナのコが出てくるのを待っていると、ぞろぞろとドレスを着たまま通用口から出てきた。
メイさんは「わたしが一番遠いから」と助手席に乗り、残りの3人は後部座席へ。
最初に降りるコ自身に誘導してもらい彼女のアパートまで行く。途中ちょっと狭いところがあったけれど真っすぐな道だったので助かった。狭い道を曲がることにこの車は向いていない。おれの運転技術も怪しいし。
1人目を降ろしたらナビに地点登録をする。名前はあとで入力しておく。
2人目のアパートは割と近くにあり、そこで降ろして地点登録。
3人目を送る途中でコンビニに寄って欲しいというので寄る。車を降りて煙草を吸っていると彼女が店から出てきたので再出発し、指示通りに進むと森の中のでかい屋敷に着く。実家なのか?まあいいけど。そこでも地点登録を済ませる。
最後に向かうのはメイさんの家だ。
この先どう進むのか尋ねると「わたしもコンビニ行きたかった」と言われる。
「行けばよかったじゃん」と返すと「だってメッセージ来てたから返してて、そしたら出発しちゃって」と口を尖らせて言い訳をしてくる。
別に寄るのが面倒なわけでもないので国道の三叉路まで戻り、あっち?こっち?と尋ねると、あっち!と街から離れる方面を指さした。
少し南に走って彼女が指示したコンビニに着く。