結ぶと解く   作:ながずぼん

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第53話 近況と誘導

 開店前のミーティングが終わったときアヤママと店長に、用事で東京へ行かなければならないので月曜から3日間の休みをお願いすると二人とも快く了承してくれた。

 その後、ママだけ残ってもらって彼女の能力について外事室に相談するかどうか意向を聞いてみることにした。

 

「来週、迎えに来るのがママのような能力持ちの人のことを調査している部署の人間なんです。おれは信用できる人間だと思ってますが、ママはいろんなことの相談相手として彼等を必要だと思いますか?そうなら紹介するし煩わしいようなら黙っておきます」

 

「そうね。どうせハナちゃんにはバレているのだから、お会いしてみるのもいいかもしれないわね。ハナちゃんが信用しているのだから悪い人じゃないでしょうね」

 

「わかりました。じゃあ月曜の23時ぐらいに来店するので、アフターって形で会ってもらってもいいですか?」

 

「あら、お店に来てくれるの?じゃあセット終わりにお呼ばれしようかしら」

 

「はい。事前に伝えると向こうも身構えると思うので店を出てから説明します」

 

「でも送りしないで私とアフターだって聞いたらメイちゃん妬いちゃうわね。うふふ」

 

「そんなことないでしょう」

 

 もう一人のドライバーとメイさんの話をママが聞いているのかわからなかったので、そのことについては黙っておいた。

 

―――――

 

 月曜日、14時頃にクスメギからホテルの駐車場に到着したという連絡があった。

 歩いてそこに行くと、国産のセダンの中でちんまりとクスメギが佇んでいた。

 

「よう、久しぶり。元気だったか。つか、ポンコツはご臨終か?」

 

「元気かって、それはこっちの台詞だ。あと公務だからこの車なの。あれは健在だ」

 

「公務だから?ってことは、こっちまでの送りはプライベートだったのか?」

 

「まあな、そんなことはいいんだよ。で、あんたはどうなんだ」

 

「まあ、いまできることをやって、帰る方法も探し続ける、結局そうするしかないって腹括ってそれなりにやってるよ」

 

「なんだよ、あんた本当に俺が思うより強かったんだな」

 

 がんばれって言ったのおまえじゃねえか。親目線やめろ。

 

「あ、そうだ、引っ越ししたんだけど、おれの部屋来るか?」

 

「そうだな、一応確認しておくか。これ乗っていくか?」

 

「いや、歩いて行ける」

 

 クスメギを部屋に案内すると「なんにもねえな」と鼻で笑われた。

 本当になんにもないのでやることもない。なので下の喫茶店に連れて行く。

 

「雰囲気あるな、ここ」

 

「だろ?おれもう常連さんだよ。週の半分の昼飯ここで食べてる」

 

 アイスコーヒーを二つ注文した。煙草吸っていいか尋ねると、断っても吸うんだろと言われたのでそうだと答え、煙草に火を点ける。

 

「すっかり馴染んだ感じだな。仕事はどうだ、客に説教されてないか?」

 

「店の人はみんないい人だよ。客は仙人からゴミまで幅広いけどな」

 

「ゴミって。それで、スタンガン使うような場面には出遭ってないか?」

 

 小声で襲撃があったか尋ねてきた。

 

「ないよ、東京は物騒だったけど、こっちは平和そのものだ」

 

「ならよかった。あんたがここにいるってキャッチできてないと思うけど一応な」

 

 そろそろ今夜の話を通しておくことにした。

 

「今夜、この前行った赤い店に行こうと思うんだけど付き合ってくれるか?」

 

「は?あのスナックみたいな店?あんた酒飲めないじゃん。まさか店のコを?」

 

「違うよ、いまの職場だよ。おれがどれほど愛されているか見せたいの」

 

「なんだそりゃ。別に構わないけど明日は8時には出るから早めに切り上げるぞ」

 

 え、それはまずい。作戦が台無しになってしまう。

 

「いやー、ママとアフターの約束しちゃってるんだよ。店を3日間休むからさ、その説明をおまえにしてもらおうと思って」

 

「あんたさあ… いいよ、じゃあ。あんまり飲まなきゃ大丈夫だろ」

 

 ひとまず早上がりは回避できた。この前の二日酔いの感じからすると、こいつそんなに酒強くなさそうだから、あんまり飲まないように見張ってないといけないかも。

 

「悪いな。同伴にしてそこで話してもらえばよかったな」

 

「まあいいよ。ところで体調に変化はないか?」

 

「ああ。1時過ぎとかに夜食食ってるから浮き輪肉が育ち始めている以外は」

 

「うわ、だせえ。例の鼻血は大丈夫なんだな」

 

「は?ああ、鼻血な。ぜんぜんだな。平和だからだろうな」

 

 鼻血が出て死ぬかもと怯えていた日々が懐かしく感じる程度に忘れていた。

 モンテビデオから随分と図々しくなった。

 そもそもこっちへ来て能力云々な出来事といえばアヤママにバチっとやられたぐらいで、襲撃も気配すらないから脳がどうこうという話すら忘れていた。

 

 喫茶店を出たら車を見せろと言われたので駐車場に向かう。

 

「荷室でかすぎないかこれ?営業車なのか?」

 

「当時の欧州ワゴン車の中で最大積載容量なのがこれ。足伸ばして寝れるぞ」

 

「で、どこが壊れるんだ。オイル漏れか?電気系統か?」

 

「窓が落ちて二度と上がらなくなる。あとはバルブ交換で手首が折れる」

 

 クスメギを助手席に乗せてくるっとその辺を一周して駐車場に戻ると、ホテルのロビーに20時集合の約束をしてそれまで休憩することにした。

 

 ふと思いつき店長に連絡して迎えだけやれそうだと告げると助かると頼まれた。

 

 19時に駐車場を出て南方面の四人を迎えに行く。

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