まあまあ酔っているクスメギに相談するのもどうかと思うが、例のうんこドライバーの対応について一応聞いてみる。
スタンガンをチラつかせるだけで暴行未遂になるのか尋ねると、害意のない相手を威嚇すれば軽犯罪法違反だと言われる。
え、作戦が台無しじゃん。おれ喧嘩弱いし。
「おれが、こいつは襲撃者かもしれないって思ったときは?威嚇するだけなら?」
「そりゃまあ、グレーだな、黒に近いけど。あんたの場合は特殊すぎるからな」
よし、これだ。
悪い噂を流されたから孤立させて拉致するつもりなのだと思った。だからスタンガンで威嚇して噂を流すのを止めさせた。どうよこれ、完璧だ。
クスメギはまあまあ酒が入っているようだったので、口パクでユイさんに向かって酒じゃなくて水を飲ませるようお願いした。彼女は理解してくれたみたいで水の水割りを作ってクスメギに渡してくれた。
奴はなんの疑いもなく酒だと思って水を飲んでいる。だいぶ酔ってるなこれ。
少ししたらメイさんが戻って来た。彼女が戻ってくる前に聞きたいことが聞けてよかった。ユイさんには聞かれていたけれど、中身まではわからないだろう。
そろそろ時間だなと思い、アヤママを呼んでもらう。
「いらっしゃいませ。ハナちゃんのお友達でいらっしゃるんですね、ママのアヤです」
流れるように自己紹介をして魚肉ソーセージなんか真っ二つに切れる感じの名刺をクスメギに差し出す。名刺を受け取りながらクスメギはママの顔に見惚れている。
そりゃまあメーテルだからな。見惚れちゃうよな。
そんな態度を見せられたらユイさんは面白くないんじゃないかと心配したが、全く関係ないという感じでメイさんと喋っている。どうでもいいのかクスメギなんて。
クスメギの甲子園一歩手前自慢話を聞いているうちに閉店時間になった。
ママに向かいのカラオケで待っていると伝えてお会計をしてもらった。
「このあとママとアフター行くの?」さっきまでバカな噂話に悩んでいたくせに、こんな時ばかり鋭い勘を働かせるメイさんに訊かれ一瞬返答に困る。
「うん、クスメギを紹介したくて」からの「わたしも行っちゃダメ?」
「えーと、ダメ、じゃない、かな?」からの「やった!どこ?お寿司?」
「ううん、向かいのカラオケ。個室で話ができるところがいいから」
「え、じゃあいいや… あ、感じ悪いからやっぱり行く」
とりあえず4人でカラオケの部屋に入って、話が始まるときにメイさんを寿司屋に連れて行くことにした。ママにその旨を説明して了承してもらう。
「メイちゃんには私から言ったほうが角が立たないから、その時になったら私から言っておいでって言うわね」
「すみません詰めが甘くて。あと、あいつの酔いが覚めているといいんですけど」
「そう?大丈夫そうだけど。でも、もうこれ以上飲ませないようにするわね」
女性たちより先に店を出てクスメギとカラオケの部屋に入る。
「酔い具合はどうだ?これから真面目な話をするけど大丈夫か?」
「ああ、メーテルを見て酔いが覚めた。東京でも見ないぐらい美人だよなあ」
「うん、美人だ。しかも能力者なんだ」
「えっ」
一瞬でクスメギの顔色が変わった。こいつすごいな。完全に仕事モードだ。
「どうしてわかった?」と訊かれ「彼女がおれの頭の中を覗こうとしておれが弾いた。で、母親も同じことできないか尋ねたらそうだって言ってた」と答えた。
「弾いた?なにを?」と訊かれ「さあ?弾かれたって言ったのは彼女だ。おれは目の中に火花が散った」と答えた。
「おいおい、これを話すためにあの店に連れて行ったのかよ。もうちょっと普通にセッティングしてくれよ」
「いや、ガチの仕事モードだとおまえも彼女も警戒しちゃうだろ?」
「そりゃまあそうだけど。でもこんな状態で聴取したなんて室長に言えねえよ」
「きょうは面通しで、検査の後で送ってきたときに改めて話聞けばいいじゃん」
「お?おう。なんだ、きょうはえらい冴えてるじゃねえか」
アヤママとメイさんが入室してきた。とりあえず飲み物を注文して乾杯をする。
ふんわりした世間話を少しした後で、ママからおれと一緒に寿司を食べて帰りにお土産を持ってくるようにメイさんに指令が下った。メイさんは喜んでいる。
「じゃあクスメギまた後でな。あんまりデレデレすんなよ、みっともないから」
「うるせえ、とっとと寿司屋行ってこい」
「じゃあママ、こいつのこと、よろしくお願いします」
「あら、お願いされるのは私のほうよ。よろしくお願いしますねクスメギさん」
カラオケ屋を出て、すぐ近くの寿司屋にメイさんと向かった。