結ぶと解く   作:ながずぼん

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第62話 説明と猛省

 箱バンの中で倒れている男の様子を伺っていると、クスメギから呼びかけられた。

 

「もうそっちに向かっているみたいだから、安全な位置でもう待機してくれ」

 

「安全て言われてもな。見張ってないと逃げちゃうかもしれないだろ?」

 

「バカ野郎!それは警察の仕事だ!あんたの無事が最優先なんだよ!」

 

 ガチで怒られて少し冷静になった。私人逮捕してどうこうの話ではない。

 

「わかったよ、そんなに怒るなよ。サイレン聞こえてきたから大丈夫そうだ」

 

 すぐにパトカーが3台到着して制服の警官に事情を訊かれた。応対するために携帯を切っていいかクスメギに尋ねると責任者に代わってくれと言うので、責任者を呼んでもらって携帯を渡した。責任者はスーツだった。刑事なのだろうか。

 

 目の前の警官に、とにかく地下にいる女と車の男を捕まえてくれと頼んだ。

 どこから集まってきたのか野次馬が集まってきて辺りは騒然となっている。

 そんな中、男と女はそれぞれ別のパトカーに乗せられ連行されていった。

 

 一安心して警官に顛末を説明をするのだけれど、事実だけを述べると一ミリも襲われていないのにスタンガンを使用して女を昏倒させ、ただ車に乗っていただけの男に電撃を与えたという話にしかならない。目の前の警官の怪しむ顔ったらない。

 いやこれ勘違いだったら、ただの狂ってる奴じゃん…と寒気がしてくる。

 

 警官から「すみませんが署までご同行願えますか」と言われ観念したところで責任者の刑事?が横から入ってきて「きょうは帰って頂いて結構ですが、後日、外事室の方と一緒にお話を聞かせて頂くことになります」と携帯を返された。

 

 通話は切れていたので改めてクスメギに掛ける。

 

「おう、無事か?責任者に話通しておいたけど解放されたか?」

 

「ああ、うん、助かった。ありがとう」

 

「で、どんなふうに襲われたんだ?怪我はないんだな?鼻血は出てないか?」

 

 「それが…」と一連の流れを説明した後で「早とちりかもしれない」とどうにか声を絞り出した。怒ってキレ散らかしていた分、恥ずかしさで消えてしまいたかった。

 

「そいつらの聴取もこっちで手配したから、背後関係になにかあればお手柄だけど、まったくのシロだったらなにか対応を考えないとだな」

 

「迷惑かける。仕事が再開できるって喜んでいたら様子がおかしかったからつい…」

 

「それも考えた方がいいかもな。来週あたりにそっちに行くから、またそこで相談しよう。これから室長とあんたの安全確保について話し合うから、方針が決まったら連絡するよ」

 

「わかった。いろいろとすまんな、ほんと申し訳ない」

 

 店長に連絡して事件の当事者になってしまったので、しばらく休ませて欲しいとお願いした。詳しい話は事件の全容がわかったらママにも説明する、と約束したら了承してくれた。人が足りないのにご迷惑をおかけしますと何度も謝った。

 

 とぼとぼと歩いて部屋まで戻り、壁にもたれて反省した。

 いつだって逃げろと言われてきたことを思い出した。

 スタンガンを貰って気が大きくなっていたのかもしれない。ダサいなおれ。

 

 もしかしてリンダが本当に店を開こうとしていたのだとしたら、彼女には本当に悪いことをしたし、おれを頼ってくれたタハラさんにも申し訳ない。

 紹介してくれたママの顔に泥を塗ってしまったし。どう償えばいいのだろう。

 車の男なんか完全にとばっちりだ。ただあそこにいただけなのに。

 

 警官やクスメギにも八つ当たりしてしまった。

 なにをいい気になっていたのだろう。恥ずかしくて仕方がない。いい歳なのに。

 

 子供たちや奥さんに会えたときに、きょうのことをなんて説明すればいいんだ。

 子供たちにもう偉そうなこと言えないな。いや、こうなるなとは言えるか。

 前の世界なら、仕事相手にあんなふうにされてもびっくりするだけで、あんなふうにキレたりしなかったはずなのに。やっぱり脳みそがおかしいのかな。

 

 きょうのこと、誰かに叱って欲しい。冷静になれって。

 だけど歳を取ると叱ってくれる人はいなくなる。

 結果に対して自分で責任を負う、それが大人になるってことだと思う。

 みんな当たり前に大人をやっているけれど、間違わないわけじゃない。

 間違いに気づいたとき、どうやって次に繋げるか、どうやって穴を埋めるか。

 たとえ結果が正しかったのだとしても、きょうのことは叱って欲しい。

 やり方が間違っているのだから。

 

 間違いは犯す。いくつになっても間違うだろう。

 この世界にはおれを叱ってくれる存在はいない。

 自分で自分を律するしかない。

 できるのかなこんなおれに…

 

 

 夜中に目が覚める。

 いつの間にか床で寝てしまっていた。

 涙も流していたようで床が濡れていた。

 

 しょうもな、と思った。

 

 

第三章【地元編】了

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