結ぶと解く   作:ながずぼん

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第67話 訪日と浅草

 9時前に無事成田に到着したとサクラさんから連絡があった。

 すぐにクスメギに連絡をして泊っている神田のホテルのロビーで合流する。

 彼女たちは京成線で都内に向かってくるそうなので京成上野駅で待ち合わせすることにした。

 

 

 彼女たちが乗っているはずのスカイライナーが到着する時刻になったので、出迎えのために改札へ向かう。少し待っているとスーツケースを持っている一団の中に彼女たちを見つけた。というか人混みの中でパウラさんだけが目に飛び込んで来た。

 

Bienvenido a Japón(ようこそ日本へ)

 

「ハナダサン、オヒサシブリデス。ヤット、日本ニ来ルコトガ、デキマシタ」

 

 自然とハグをしていた。いやほんと自然に。

 

「サクラさんも長旅お疲れさま」

 

 そう言って近寄ったのだが、彼女が一瞬身構えたので会釈に止めた。

 

「その後、体調はどうですか?メンタルの方はすっかり大丈夫そうですけど」

 

「気持ちの整理はつきました。身体は大丈夫、あれ以来鼻血出していませんよ」

 

 サクラさんと話をしていると、パウラさんが後ろで照れくさそうにしている女の子を紹介してくれた。パウラさんは女の子にほら、言ってごらん?と促す。

 

「コンニチワ、ワタシ、ハ、マリア」

 

「Hola María, soy Hanada(こんにちはマリア。私はハナダです)

 

 彼女はにこっと笑ってペコリと頭を下げた。見た目は大人っぽいけれど仕草が子供っぽい。「いくつなんですか?」と尋ねるとパウラさんに促され「Quince(キンセ)」と言った。

 あ、わかんないと思ったら「15」とサクラさんが教えてくれた。

 そうなんだ、高校生ぐらいかと思った、とかなんとか言っていると背中に視線を感じ、振り向くと所在なさげにクスメギが佇んでいた。

 

「あ、サクラさんは会ってますよね。いまのおれの世話係のクスメギです」

 

 パウラさんにクスメギを紹介する。サクラさんは「お久しぶりです。その節はお世話になりました」と頭を下げている。クスメギは「いえいえ、あいつのせいでとんだ災難でしたね」とおれを見て言う。そうだけどさ、まあそうなんだけどさ。

 

 いつまでも立ち話していてもアレなんで、と言ってサクラさんに予定を聞くと、花やしきに行くと言うので女性陣の大荷物はコインロッカーに預けて移動を始める。

 京成上野駅から銀座線の上野駅まで歩き、地下鉄で浅草駅へ。

 サクラさんに雷門に寄るか尋ねると喜ぶと思うとのことだったので、構内を進んで一番出口から地上へ。

 雷門の前は観光客がごった返していたが、パウラさんが写真を撮るというので人混みはお構いなしで提灯の下で写真を何枚か撮った。

 クスメギに携帯を預けてウルグアイ組3人と一緒に撮ってもらった写真には黒い帽子を目深に被った不審者が一名センターに写っている。

 そう、おれには学習能力がある。もう浅草では襲われない。

 

 

 仲見世を通ってまっすぐ浅草寺に向かう。

 パウラさんとマリアちゃんは土産物を見て目を輝かせている。

 それにしてもすごい人で、はぐれたら見つけられるかなと不安になっていると、シャツの裾が引っ張られる。後ろを振り向くとマリアちゃんが裾を掴んでいたので「はい」と言ってその手を握る。もう片方の手はパウラさんが握っている。

 横並びではないが3人で手を繋いで歩く。

 マリアちゃん越しにパウラさんの様子を見ると、キョロキョロと店を見ていたがおれの視線に気付いてこちらに笑顔を向けてくる。

 それは真夏の太陽に向かって力強く咲くひまわりのような、パーッとした笑顔だった。

 おれの手柄でもなんでもないけれど、喜んでくれているのが嬉しかった。

 そう、女が喜ぶと嬉しいになるのだ。昔の人わかってんなー。

 

 

 伝法院通りまで出たところで後ろの様子が気になり振り返ると、クスメギとサクラさんが修学旅行の副担任のような感じでのろのろと追いついてきた。

 するとマリアちゃんが「アッ」と声を挙げたので彼女の視線の先を見ると、東の方角にスカイツリーが聳えているのが見えた。

 二人で並ぶように促し何枚か写真を撮った。

 おれもモンテビデオの街で、こんな感じに観光したかったな。

 

 副担任たちが追い付いたのを確認すると、浅草寺の境内を突っ切って五重塔の裏手に回る。そこでも何枚か写真を撮ったとき「コレハ、京都ノハズ」とパウラさんが言うのできっと東寺の五重塔のことを言っているのだろう。

 法隆寺にもあるし、一体いくつあるのかと思いスマホで調べて「全国に20個ぐらいあるみたい」と教えた。

 

 マリアちゃんは人混みが緩くなった途端にフラフラとあっちこっちへと歩いていたので、親子っぽい3人手つなぎは一瞬だった。

 そう、子供はいつでもそうやって繋いだ手を離してしまう。寂しい。

 

 そうこうしているうちに花やしきに到着した。

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