少し休憩したもののマリアちゃんは疲れも出ているしひとまず満足したようで、まだ休むという。切り上げてもよかったのだけれど、サクラさんに言われてパウラさんとbeeタワーに乗ることに。
お菓子の家みたいなのが高いところで吊るされる観覧車だ。
家の形をしたゴンドラにパウラさんと会い向かいに座る。
気にしないようにあくまで自然体でここまで来たけれど、だめだった。
いやあ、パウラさんてこんなに美人だったっけ?直視できないのだけれど…
パウラさんが髪を切っていないことを今一度確認していると、ゴンドラがゆっくりと回転しながら上昇し始めた。
「サクラ、髪ヲ切ッタノ、言ッテアゲマシタカ?セッカク、カワイイ、ナッタノニ」
不機嫌というか呆れているというか、ダメ男を見る目でそう言われた。
「さっき気が付いて、褒めました。遅すぎて怒られたけど」
「自分デ、言エタナラ、許シマス。女性ハ、モット見テ、褒メテクダサイ」
「うん。気を付けます。パウラさんは相変わらず綺麗ですよ」
「ココハ、遊園地、セックス、ダメ」
それ覚えてたんだ。あははと笑う彼女は本当に綺麗で顔が熱い。
「ところでパウラさん、嘘が見抜けるおまじないを使ったの覚えてる?」
「Si 覚エテイマス」
彼女はとても穏やかな表情でそう答えた。
おれが次に何を言うのか知っているような目で言葉を待っている。
「あれって、パウラさんのお母さんも使えたの?」
「オ母サン? オ母サンハ、使エマセン。ワタシダケ」
想定していたのと違う質問をされた感じで戸惑いながら彼女はそう答える。
当然おれもそのリアクションは想像していなくて、困惑してしまった。
こうなれば直球を投げ込むしかない、そう思って尋ねる。
「あれは、人の考えていることがわかるおまじないじゃないの?」
「ハイ。ソウデス。デモ、アナタハ、キャンセルシマシタ。誰モデキナイコト」
「やっぱりそうなんだ。でもお母さんの遺伝じゃないとすると…?」
「ソノ話ハ、今デキナイデス。トテモ、長イ話ニナル。長イ長イ時間、カカル」
パウラさんは残念そうにそう言った。アヤママのように誰にも言えず抱えてきた、聞いて欲しい話があるのだろう、長い長い、彼女の秘密の話が。
そういえばおれは彼女の悲しい顔を見たことがない。その程度の接点しかないのかもしれないけれど、不自然なくらいいつもニコニコしている。いまも残念そうにしていたけれど笑顔は絶やさない。思ったより秘密はでかいのかもしれない。
「うん、わかった。いつか聞かせて。その能力のことはクスメギに言ってもいいかな?彼はそういう能力者の相談相手になる仕事をしているんだ」
「ンー、言ッテモイイデス。デモ、ワタシノ相手ハ、ハナダサン、アナタダケ」
「わかった。でも、セックスは、ダメ?」
二人でプッと噴き出して笑った。
このねちょねちょに甘い時間がずっと続けばいいと思ったけれど、ちょうどゴンドラが地上に降りたところだったので、話を終えて部屋を出た。
3人が休憩しているところに戻ったが姿がなかった。
マリアちゃんが元気になってアトラクションのどれかに乗っているのではないかと、パウラさんと一緒に探した。
花やしきが狭くて助かった。すぐに見つけられたから。
3人はリトルスターという搭乗する箱が前方へ不規則に回転しつつ、全体はメリーコーランドのような乗り物に乗っているところだった。箱の回転はけっこう早い。
3人の表情をよく見ると真顔だった。平衡感覚を失うやつなんだなきっと。
乗り物から降りてきた3人を待っているとクスメギが「見た目に騙された」と気持ち悪そうな顔でつぶやいた。
お昼を過ぎているのでここを出てどこかで昼食を、と思ったのだがマリアちゃんは今の乗り物でトドメを刺されたらしく完全にグロッキーになっていた。
サクラさんも「今日こそ天麩羅をと思ってたけど無理」と言っていた。
さりとてホテルのチェックインまで時間あるだろうしと思っていたら、長時間フライトで疲れすぎる可能性を考慮してアーリーチェックインのできるホテルを予約しているという。さすがサクラさん、最強添乗員だなと感心した。
ホテルは上野だというので駅で荷物を回収して歩いてホテルへ向かうという。
夕食の約束をして彼女たちを乗せたタクシーを見送った。