結ぶと解く   作:ながずぼん

94 / 254
第93話 計画と相談

 世間的には早起きというわけでもないが9時前に目が覚めた。アラームなしで。

 アオイさんの店の件で気合が入っている証拠だと思う。

 ひとまず顔を洗って、濃いめのインスタントコーヒーに氷を入れた即席アイスコーヒーを作ってノートパソコンに向かう。

 ネットで店舗用家具の販売サイトをいくつか開いてカタログ請求をする。

 それから内装材のサイトからもカタログを取り寄せる。クロスの見本帳とか。

 

 『酔っぱらうぞ!と来店して、ちゃんと酔って帰る店』かつ『かわいい店』。

 入口付近は高揚感のある感じにして、中に入れば印象に残らない感じ。そんなイメージになるのだろうな。そのメリハリをどう付けようか。色か?照明か?

 なんとなくのイメージをノートに描いていくと、色鉛筆がないことに気付く。

 老舗の文房具屋までは歩くと少しあるが、車を取りに行ってというと面倒なので、着替えて歩いていくことにした。

 

 階段を降りて行くとき、2階の喫茶店にきょうも本日休業の札が下げられていた。

 店主の具合がよほど悪いのだろうか。せっかくのお気に入りなので回復して続いて欲しいものだ。

 

 8月の終わりでも外はまだまだ暑く、店に着く頃にはじっとり汗ばんでいた。

 店内はエアコンが効いていて涼しかったので、色鉛筆以外にもいろいろ物色した。

 A6サイズのスケッチブックと6色分の水性ペンも買った。

 歩いて部屋に戻ると、また汗でベトベトになったので一度シャワーを浴びてさっぱりする。そのままごろんと寝転がって涼んでいたら、知らない間に寝てしまっていた。

 

―――――

 

 夕方になり、シャワーを浴びて着替えて送迎に出る。きょうはアオイさんが同伴なのでユイさんを最後に拾うルート。4人拾って店に届ける。

 開店準備の掃除をして過ごしていると店長に呼ばれる。北方面のドライバーであるニシダに急用ができて送りができないらしい。北方面のオンナのコを30分早めに上げるから南北両方送ってくれとのこと。

 

 0時前に北方面の4人を乗せて送りに出る。一番遠いコで20分といったところか。

 最初のコ、モエカさんはユイさんの家よりもう少し先のアパートだった。

 次はそこから10分ぐらい北に行ったところがミズキさんの家。そこから東向きに走ってもうちょい北が3人目のリサさん。最後が一番北のセイラさんのアパート。ひとまず全員分地点登録しておいた。

 送っていく間4人は車内で全く会話がなく全員スマホを触っていた。そんなもんなのかねえと店に戻る。閉店後の店に残っている4人は笑いながら喋っていた。

 アオイさんはお客さんにタクシー代を出してもらったそうで、もう帰っていた。

 

 北方面の車内と打って変わって車内は賑やかだった。ほとんどメイさんのフリがあっての会話だったけれど、それぞれのコにそれぞれの個性があって、アオイさんの言う「女の子が楽しそう」っていうのはこんな感じなのかと思った。

 

―――――

 

 次の日、ママに連絡して現場の寸法を測りに行かせてもらった。

 鍵を開けて中に入ると「どのくらいかかる?」と訊かれたので「1時間から2時間ぐらい」と返事をすると、「終わったら鍵を閉めて、お店に来るときに持って来て」と言ってママは帰って行った。待ってもらっているのも悪いのでそう言われて助かった。

 

 店のあちこちをスケールで測って方眼ノートにメモをしていく。

 狭い店なので1時間ちょいで測り終えた。鍵を閉めてビルを後にする。

 部屋に戻ったら忘れないうちに図面化した。ひとまず平面プランを一つ作る。

 こっそりステージスペースを作るとなると、やっぱり置けるソファは限定された。

 

―――――

 

 次の日もその次の日もアオイさんの送迎は不要だった。思い返せばアオイさんて出勤日の半分ぐらいしか送迎してなかった気がする。それだけ同伴やアフターが多かったということだ。さすが稼ぎ頭だけある。

 その次の日は送迎アリだったので、アオイさんを拾ったときに「お店の話がしたいのでどこかで話をする時間作ってもらえますか」とお願いすると次の日の午後ならいいとのことだったので、14時から打合せの約束をした。

 「わたしもハナちゃんと同伴したい。お寿司がいい」とメイさんが言うので、そういうんじゃないとお断りをした。寿司が食べたいだけじゃん。

 

―――――

 

 14時にアオイさん指定のファミレスへ行くと彼女はもう来ていた。

 ていうか黒ニットの半袖を着ているので若干キョドった。おれはどうしてこうもニットセーターに惹かれてしまうのか。だめだと思ってもつい見てしまう。

 

「おつかれさまです。なんかすごく見られている気がするんですけど、これ、似合わないですか?それとも胸が気になるんですか?」

 

「いえ、そうじゃないんです。むしろ逆です。あの、すごく似合ってます」

 

 恥ずかしさで顔が見れないので視線を下げると胸を見てしまっている法則が発動してしまっている。別にエロい目で見ているわけじゃないんだけど視線は否定できない。

 

「ふふふ。もしかしてハナさん、喪服よりニットが好きなんですか?」

 

「はい。特に半袖とかノースリーブとかチューブトップとか秒で釘付けです」

 

「うふふ。かわいいですよねニットのノースリーブ。私は肩出せませんけど」

 

 ひとまず正直に白状したおかげで欲情しているとか思われずに済んでよかった。

 気を取り直して仕事の話をする。持参したソファのカタログとその配置を描いた図面を見せる。あと入口のところのスケッチを見てもらった。

 図面の説明をすると概ねいい感じの反応だった。しかもこっそりステージの件はすごく喜んでくれた。入口のところの色合いだけ注文が入ったが、初回でこれならすぐに決定稿が出せそうだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。